静岡県函南町:箱根の南に広がる豊かな自然と歴史が息づく街

静岡県東部、田方郡に位置する函南町(かんなみちょう)。箱根山の南西麓と丹那山地の山稜西側の丘陵地、そして田方平野の一角を町域とし、豊かな自然と歴史に彩られた魅力的な街です。

箱根の南に広がる豊かな自然

函南町は、箱根山、鞍掛山、玄岳に囲まれた、山間地に標高1000メートルクラスの山々がそびえ立つ雄大な自然環境に恵まれています。町の中間部には、なだらかな台地が続く畑作地帯が広がり、標高7メートルほどの平坦地には水田地帯が広がり、人口の約60%が集中する市街地が形成されています。

多様な地形と地質

函南町は、山間地、丘陵地、平坦地と、多様な地形を有しています。山間地と丘陵地は、第四紀の火山砕屑物で形成され、安山岩、火山岩、ローム層、軽石層などが存在します。平坦地は、狩野川とその支流である来光川、柿沢川によって運ばれた土砂が堆積した沖積土からなり、肥沃な土地となっています。

内陸性気候と豊かな水資源

函南町は、海岸に近い地域でありながら、盆地型の内陸性気候の影響を受け、日中の気温と夜間の気温差が大きくなっています。特に冬の夜間は冷え込みが厳しく、年間降水量は約1700mmから2000mm程度と、年間を通して安定した降水量を誇ります。豊富な水資源は、農業や温泉などの発展に大きく貢献しています。

隣接する自治体

函南町は、静岡県沼津市、三島市、熱海市、伊豆の国市、そして神奈川県箱根町、湯河原町と隣接しています。これらの自治体との連携は、経済活動や文化交流において重要な役割を果たしています。

悠久の歴史と文化を刻む

函南町の歴史は古く、先史時代から人々が暮らしていたことが遺跡から証明されています。特に、静岡県最大規模の柏谷横穴群は、7世紀前半から8世紀初頭のものが多く、律令時代に活躍した占部氏との関連が指摘されています。

鎌倉時代:仁田氏の活躍

鎌倉時代には、函南町域の土豪である仁田氏が歴史に名を刻んでいます。仁田四郎忠常は、1193年の富士の巻狩りでの猪退治や、建久4年の曾我兄弟の仇討ちの際に兄の曾我祐成を討ち取ったことなど、多くの逸話で知られています。仁田忠常の墓は、函南町仁田にあり、町の史跡として大切に守られています。

江戸時代:駿河沼津藩の支配

江戸時代には、函南町域は主に旗本領となり、一部が駿河沼津藩の支配下に置かれました。1707年には、最初の八ケ橋(蛇ヶ橋)が完成し、交通の要衝としての役割を果たしました。

明治時代:函南村の誕生

1889年、町村制の施行により、函南村が誕生しました。丹那トンネルの開通と函南駅の開業(1934年)を契機に、函南町は急速に発展しました。

昭和時代:函南町の誕生と発展

1963年、函南町は町制を施行しました。1971年には函南町役場庁舎が竣工し、1973年には町の木であるヒメシャラと町の花であるハコネザクラが制定されました。また、1985年にはアメリカ合衆国カリフォルニア州カーマン市と姉妹都市提携を結び、国際交流を積極的に推進しています。

平成時代:新たな発展と災害

平成時代には、伊豆中央道の開通(1985年)、町営温泉施設「湯〜トピアかんなみ」の開館(2002年)、函南町図書館等複合施設「かんなみ知恵の和館」の開館(2013年)など、町は更なる発展を遂げました。一方、1998年の平成10年8月末豪雨や2011年の東日本大震災など、自然災害にも見舞われました。

人口と社会

函南町の人口は、長年増加傾向にありましたが、2010年には初めて減少に転じました。それでも、周辺市町と比較すると減少率は小さく、依然として魅力的な街として、多くの人々が暮らしています。

活力ある産業と特産品

函南町の産業は、小売業とサービス業が中心です。熱函道路や国道136号沿いに商業施設が集中し、周辺地域のベッドタウンとしての役割を担っています。丹那地区では、100年以上続く酪農が盛んで、丹那牛乳や乳製品が特産品です。

充実した教育と文化施設

函南町には、小学校5校、中学校2校、高等学校1校、そして幼稚園、保育園などが整備され、子どもたちの教育環境は充実しています。文化施設としては、函南町文化センター、かんなみ仏の里美術館、かんなみスポーツ公園、かんなみ知恵の和館などがあり、住民の文化活動や余暇活動の場を提供しています。

訪れる人々を魅了する観光スポット

函南町は、豊かな自然と歴史、文化に触れることができる観光スポットが数多く存在します。

自然との触れ合いを楽しむ

  • 月光天文台:プラネタリウムや天文展示室を備え、天体観測会も開催されています。
  • 函南原生林:豊かな自然に包まれた原生林。希少な植物が生息しています。
  • 丹那断層:北伊豆地震を起こした丹那断層帯。国の天然記念物に指定されています。

歴史と文化を学ぶ

  • 柏谷横穴群:6世紀から8世紀頃の古墳時代後期の横穴墓の遺跡群。
  • かんなみ仏の里美術館:鎌倉時代の阿弥陀三尊像など、貴重な仏像群を展示しています。
  • 火雷神社:歴史と自然を感じることができる神社。国の天然記念物に指定された社叢があります。

遊びと癒しを楽しむ

  • 酪農王国オラッチェ:酪農をテーマとした観光施設。乳製品や地ビールなどが楽しめます。
  • 道の駅伊豆ゲートウェイ函南:伊豆の玄関口となる道の駅。サイクリストに人気のスポットです。
  • 畑毛温泉:国民保養温泉地に指定されている温泉。日帰り温泉施設も充実しています。

その他

  • 十国峠:関東・東海の十国を一望できる展望スポット。
  • 函南町役場8階展望ロビー:北伊豆地域全体を一望できる展望スポット。
  • 南箱根ダイヤランド:自然豊かな高級別荘地。

函南町を訪れる人に

函南町は、豊かな自然と歴史、文化に触れることができる、魅力的な街です。自然の中に佇む温泉や、歴史を感じさせる神社仏閣、そして美味しい特産品など、見所満載です。ぜひ、函南町を訪れて、その魅力を体感してみてください。

函南町についてのクイズ

函南町が位置する静岡県の郡はどれですか?

函南町は静岡県の田方郡に位置しています。この地域は特に豊かな自然と歴史に恵まれており、観光資源が豊富です。田方郡は箱根山の南西麓にあたるため、山々に囲まれた美しい景観が特徴で、気候も内陸性で安定した降水量があるため農業にも適しています。また、周辺には多様な自治体が隣接しており、地域全体での経済活動や文化交流が盛んです。旅行者が訪れる際には、この地域の自然や温泉、また歴史文化に触れる素晴らしい機会があるため、田方郡全体が注目されています。

函南町の特産品として有名なのは何ですか?

函南町の特産品として有名なのは丹那牛乳です。この地域では100年以上にわたり酪農が盛んで、丹那牛乳や各種乳製品が生産されています。特に丹那牛乳はその品質の高さから評価が高く、地元のブランドとして多くの支持を集めています。他にも、函南町周辺で生産される農産物や工芸品も多く、観光客にはそれらの特産品を味わってもらうことができ、地域の産業振興にも寄与しています。観光施設「酪農王国オラッチェ」では、訪れる人々が実際に酪農体験をしたり、乳製品を味わったりすることもできるため、観光と産業が結びついている地域の特性が感じられるでしょう。

函南町の鎌倉時代に名を刻んでいた土豪は誰ですか?

函南町の鎌倉時代に名を刻んでいた土豪は仁田氏です。仁田氏はこの地域の土豪として知られ、特に仁田四郎忠常は1193年の富士の巻狩りでの猪退治や、曾我兄弟の仇討ちの際の活躍で多くの逸話があります。仁田忠常の墓は函南町の仁田にあり、地域の史跡として尊重されています。このような歴史的背景は、函南町の文化と伝統を形成する重要な要素となっており、町を訪れる人々に歴史を感じさせる貴重な一部となっています。歴史的な場所とともに、地元の文化や伝説を知ることができる機会を提供しているため、訪問者にとって興味深い体験となるでしょう。

平成時代にオープンした町営温泉施設の名称は何ですか?

平成時代にオープンした町営の温泉施設は「湯〜トピアかんなみ」です。この施設は2002年に開館し、地域住民や観光客にとって重要な癒しの場となっています。温泉は体を温め、リラックスするだけでなく、健康にも良いとされています。函南町の温泉はその自然環境から湧き出る良質な水に恵まれており、日帰り温泉としても多くの人々に利用されています。また、観光とともに地域経済への貢献もあり、温泉を楽しむことを通じて函南町の魅力を再発見する機会ともなっています。