滋賀県栗東市:成長と課題を抱える魅力的な街

リード文

滋賀県の南部に位置する栗東市は、名神高速道路栗東インターチェンジの開通を機に、企業誘致と宅地開発が急速に進み、2001年に市制施行を果たした街です。JRA栗東トレーニングセンターの立地により全国的に知られていますが、近年は人口増加と経済活性化、さらには公共施設の充実など、さまざまな課題を抱えています。本記事では、栗東市の歴史、地理、人口、経済、教育、交通、観光スポットなどを詳しく解説し、魅力と課題に迫ります。

地理

栗東市は、滋賀県の南部に位置し、東は野洲市、南は湖南市と甲賀市、西は大津市と草津市、北は守山市に隣接しています。面積は52.69平方キロメートルで、そのうち半分近くを山が占めています。市内には野洲川が流れ、安養寺山や金勝山などの山々がそびえ立っています。

主要な地形

  • 野洲川: 栗東市の北西部を流れる、滋賀県を代表する河川の一つ。
  • 安養寺山: 市街地の南側に位置する標高300メートルの山。
  • 金勝山: 市の南東部に位置する標高432メートルの山。新名神高速道路の金勝山トンネルが通っています。

トンネルの少なさ

栗東市は、新名神高速道路の金勝山トンネルが供用開始されるまで、市内にはトンネルが1つも存在しませんでした。これは、山が多く、かつ平地部が狭いため、トンネル建設が難しい地形であったためです。

歴史

昭和の大合併

1953年に施行された町村合併促進法を受けて、栗太郡治田村、葉山村、金勝村、大宝村の4ヶ村が合併し、1954年10月1日に栗東町が誕生しました。町名は、栗太郡の東部を意味し、既に中学校名として用いていた「栗東」が採用されました。

草津市との合併問題

合併当初、治田村の大字渋川と大字中沢は草津町との合併を希望し、栗東町との合併は条件付きでした。その後も、渋川と中沢では草津市への合併を求める動きが続き、1956年9月1日に渋川は草津市に編入されました。

市制施行

2001年10月1日、栗東町は市制施行し、栗東市となりました。

人口

2020年国勢調査によると、栗東市の人口は68,820人、人口密度は1,306.1人/km2です。人口増減率は、2015年の前回調査から3.10%増と、滋賀県下19市町中3位となっています。

年齢別人口分布

年齢層 人口 比率
15歳未満 11,630人 16.9%
15歳から64歳まで 45,470人 66.1%
65歳以上 11,720人 17.0%

合計特殊出生率

栗東市の合計特殊出生率は、2015年から2019年までの5年間平均で2.02と、滋賀県内の市町村の中で最も高い数値となっています。これは、子育て支援政策の充実や、若い世代の流入など、さまざまな要因が考えられます。

行政

財政状況

栗東市は、かつてはたばこ税収入が豊富でしたが、法令の改正などにより、2005年ごろから大幅に減少しました。さらに、2008年の世界同時不況の影響で、法人市民税や個人市民税が減少し、2010年には28年ぶりに地方交付税が交付される事態となりました。また、新幹線新駅の中止や、たばこ小売業者への貸付金返済の滞りなども重なり、市の財政状況は厳しい状況となっています。

企業誘致

栗東市は、積極的な企業誘致を進めるため、市内に工場や倉庫を新設、移転、増設した企業に対し、固定資産税の2分の1相当額の奨励金を、企業に最大で10年間交付するという条例を設けており、全国最高レベルの企業優遇を行なっています。

歴代市長

歴代 氏名 就任年月日 備考
初代 猪飼峯隆 1982年10月31日 栗東町長から継続
2代 國松正一 2002年11月18日
3代 野村昌弘 2010年11月18日 前職:市議会議員
4代 竹村健 2022年11月18日 前職:県議会議員

土地開発公社

栗東市土地開発公社は、市の財政を圧迫する問題を抱えています。公社は、大型公共施設の用地買収や新幹線新駅計画地の用地買収などで活躍しましたが、地価下落や新駅の中止により、保有地の含み損が大きくなりました。

公社の課題

  • 鑑定評価額を上回る額で取得している案件があった
  • 県事業への関与によるリスク
  • 事業計画の中断による土地の塩漬け

2014年に公社は解散しましたが、負債の返還費が市の公債費になるため、市の財政負担は依然として大きい状況です。

経済

工業

栗東市は、名神高速道路栗東インターチェンジや国道1号・8号の結節点という交通の便の良さから、多くの工場が立地しています。

主要な企業

  • 積水化学工業 滋賀栗東工場
  • 日清食品滋賀工場
  • ダイトロン 電装工場
  • イシダ 滋賀事業所
  • 三菱重工工作機械 本社
  • パナソニック電工 栗東工場
  • スターライト工業 栗東事業所
  • 山科精器
  • 東洋化成工業 栗東工場

近年では、手原北部や蜂屋を中心に、工場や運送会社の進出が目立っています。

商業

工業誘致に力を入れてきたため、商業施設は、草津市などに依存する傾向があります。国道から離れるとコンビニも少なく、車社会となっています。

教育

栗東市には、小学校9校、中学校3校、高等学校2校、特別支援学校1校があります。

教育機関

  • 栗東市立金勝小学校
  • 栗東市立大宝小学校
  • 栗東市立大宝西小学校
  • 栗東市立大宝東小学校
  • 栗東市立葉山小学校
  • 栗東市立葉山東小学校
  • 栗東市立治田小学校
  • 栗東市立治田西小学校
  • 栗東市立治田東小学校
  • 栗東市立栗東中学校
  • 栗東市立栗東西中学校
  • 栗東市立葉山中学校
  • 滋賀県立国際情報高等学校
  • 滋賀県立栗東高等学校
  • 滋賀県立聾話学校

交通

鉄道

栗東市には、JR西日本の東海道本線(琵琶湖線)と草津線が乗り入れています。

バス

栗東市には、帝産湖南交通、滋賀バス、栗東市のコミュニティバス「くりちゃんバス」、草津市のコミュニティバス「まめバス」が運行しています。

道路

栗東市は、名神高速道路栗東インターチェンジ、新名神高速道路、国道1号、国道8号などの交通網が整備されており、輸送に非常に有利な立地条件となっています。

名所・旧跡・観光スポット

栗東市には、歴史的な史跡や自然豊かな観光スポットがあります。

歴史的な史跡

  • 小槻大社
  • 大野神社
  • 高野神社
  • 三輪神社
  • 出庭神社
  • 日吉神社
  • 宇和宮神社
  • 十二将神社
  • 天満宮
  • 中天満宮
  • 菌神社
  • 大宝神社
  • 鈎陣所跡
  • 金勝寺
  • 馬頭観音
  • 狛坂磨崖仏

自然豊かな観光スポット

  • 九品の滝
  • 金勝山県民の森
  • 栗東自然観察の森

栗東八景

  • 大宝神社 〜青麦の薫風〜
  • 新善光寺 〜彼岸の繁華〜
  • 東方山安養寺 〜泉面の雪花〜
  • 旧和中散本舗(江戸時代の薬屋) 〜積日の海道と城跡〜
  • JRA栗東トレーニングセンター 〜払暁の駒音〜
  • 栗東自然観察の森 〜飛翔の羽音〜
  • 金勝寺 〜夏清の幽玄〜
  • 金勝山県民の森 〜陽春の風光〜

出身有名人

栗東市は、JRA栗東トレーニングセンターの所在地であることから、競馬騎手などの競馬関係者が多く輩出しています。

著名な出身者

  • 武豊(JRA騎手)
  • 武幸四郎(元JRA騎手、現JRA調教師)
  • 福永祐一(元JRA騎手、現JRA調教師)
  • 池添謙一(JRA騎手)
  • 飯田祐史(元JRA騎手、現JRA調教師)
  • 柴田博之(元プロ野球選手、西武ライオンズ)
  • GACKT(歌手)
  • 吉本峰之(お笑いコンビ、ストリーク)
  • 中川巧(お笑いコンビ、ラインバック)
  • 森田まさのり(漫画家)
  • 田村忠義(元プロサッカー選手、元ガンバ大阪)
  • 田中大輔(元プロサッカー選手、元清水エスパルス)
  • 橋内優也(プロサッカー選手、松本山雅FC)
  • 橋内竜真(元プロサッカー選手、元FC岐阜)
  • 竹岡和宏(プロ野球選手、福岡ダイエーホークス・福岡ソフトバンクホークス)
  • 川畑愛希(バレーボール選手、岡山シーガルズ)
  • 川畑夏希(バレーボール選手、岡山シーガルズ)
  • 小林豊(俳優、元BOYS AND MEN)
  • 木村敬一(競泳選手)
  • 尾道幸治(映像作家、撮影監督)
  • 古川克樹(プロボクサー)
  • 矢作麗(フリーアナウンサー、競馬ライター)

まとめ

栗東市は、歴史、自然、文化、経済が調和した魅力的な街です。しかし、人口増加や経済活性化、財政状況、公共施設の充実など、さまざまな課題を抱えています。今後、これらの課題を克服し、より住みよい街として発展していくことが期待されます。

栗東市についてのクイズ

栗東市が市制施行した年はいつですか?

栗東市は2001年10月1日に市制施行を行い、栗東町から栗東市へと名称が変更されました。この市制施行は、名神高速道路栗東インターチェンジの開通による企業誘致や宅地開発の進展を背景に実現し、地域のさらなる発展を目指す重要なステップとなりました。市制施行以前の栗東町は、地域の歴史的な変遷を経て、様々な合併を経て誕生したもので、2001年時点での人口や経済的発展も大きな影響を受けていました。栗東市の成立により、より一層地域の行政サービスや住民生活の向上が期待されるようになり、さまざまな課題に取り組む体制が整うこととなりました。

栗東市の2020年国勢調査による人口密度はどのくらいですか?

2020年の国勢調査によると、栗東市の人口密度は1,306.1人/km2です。この数値は、滋賀県内の他の市町と比較しても高い水準であり、市の人口は68,820人とされており、ここ数年で3.10%の増加がみられます。特に、15歳から64歳までの人口が66.1%を占めることから、若い世代が多く、経済活性化にも寄与していることが伺えます。しかし、この人口増加は、行政面での課題や公共施設の充実などを求める声が増加する要因ともなり得るため、栗東市にとっては持続可能な発展が求められています。

栗東市の合計特殊出生率はどのような特徴を持っていますか?

栗東市の合計特殊出生率は、2015年から2019年までの5年間の平均で2.02という数値が示しており、滋賀県内の市町村の中で最も高い数値となっています。この高い出生率は、地元の子育て支援政策の充実や、若い世代が栗東市に移住してくることによるものと考えられています。栗東市は、若い家庭が住みやすい環境を提供し、育児支援や教育環境の整備が進んでいることが、出生率の向上に寄与しているとされています。しかし、このディスカッションの中で、後の世代の育成や地方創生の観点から、出生率の維持やさらなる向上が求められる重要な課題でもあります。

栗東市ではどのような企業誘致政策が行われていますか?

栗東市は、積極的な企業誘致を行うために、固定資産税の2分の1相当額の奨励金を新設、移転、増設した企業に最大で10年間交付するという政策を採用しています。この方針は、地域経済の活性化を図るための重要な施策であり、企業の立地を促進し、雇用の創出につながることが期待されています。また、この政策は全国最高レベルの企業優遇策とされており、栗東市がその魅力を全国に発信し、さまざまな業種の企業が進出する環境を整えることを目指しています。しかしながら、企業誘致の進展とともに、地域資源の調整や住民ニーズとの調和も必要です。

栗東市の交通網に含まれていないものはどれですか?

栗東市の交通網には、名神高速道路、国道1号、国道8号が整備されており、輸送に非常に有利な立地条件を享受しています。また、JR西日本の東海道本線(琵琶湖線)と草津線も市内に乗り入れています。しかし、新幹線は具体的に栗東市内に駅が設置されていないため、交通網に含まれないと言えます。この点において、栗東市は新幹線新駅の計画が中止されたことから、今後の交通インフラの充実が求められる要素となっています。さらに、地域住民のための公共交通機関の充実も重要な課題として認識されています。

栗東市の観光スポットとして『栗東八景』に含まれない場所はどれですか?

栗東八景は、地域の名所や美しい風景、歴史的な建物などを称えるもので、栗東市の観光名所に特化したリストです。この中には金勝山県民の森や九品の滝などの自然豊かなスポットが含まれていますが、草津温泉は栗東市外に位置するため、『栗東八景』には含まれていません。栗東市は自然美や歴史的な遺産が多く、これらを活かした観光振興が積極的に行われています。このように、地域の特色を活かした観光地の整備が重要であり、訪れる人々にとって魅力的な場所を提供することが求められています。