日本三大秘境「椎葉村」~九州山地の秘境に息づく伝統と自然~

宮崎県東臼杵郡椎葉村は、九州山地のほぼ中央に位置する、日本三大秘境の一つに数えられる村です。険しい山々に囲まれた自然豊かな土地には、古来から受け継がれてきた伝統文化や、現代でも受け継がれる焼畑農業など、独特の文化が息づいています。

椎葉村の地理と歴史

椎葉村は、宮崎県の北部、九州山地中央部に位置し、村としては全国第5位の面積を有する、標高1,000mから1,700m級の山々に囲まれた、非常に険しい地形です。村域の大部分は耳川源流域ですが、村の南部は一ツ瀬川や小丸川の源流域にまたがっています。可住地面積は村域のわずか4%に過ぎず、川沿いや山の主に中腹域の緩斜面に点々と集落が存在しています。

椎葉村の歴史

椎葉村の歴史は古く、伝承では壇ノ浦の戦いで滅亡した平氏の残党が、この地に落ち延びたとされています。戦国時代には那須氏が支配しており、1577年(天正5年)に島津氏からの侵略により日向を一時的に退去した伊東義祐が星原城に立ち寄り、城主奈須右近将監祐貞に伊東氏累代の系図と旗を預けたという逸話が残っています。

1601年(慶長6年)、椎葉山三人衆(小崎城主那須左近将監、向山城主那須弾正忠、大河内城主那須紀伊)は徳川家康より鷹巣山管理を認める朱印状を与えられました。その後、1616年(元和2年)に椎葉山三人衆と他の那須氏(十二人衆)との間で対立が激化し、1619年(元和5年)に幕府が阿倍正之、大久保忠成を派遣して事態の収拾を図らせた事件「椎葉山騒動」が起きました。事件後、椎葉は天領となり阿蘇大宮司に支配が委ねられましたが、1656年(明暦2年)、阿蘇氏は椎葉山管理を辞退。以降、人吉藩の預かり地となりました。

江戸時代には、人吉藩は椎葉を直接統治せず、向山、大河内、松尾、下福良の四名の庄屋と大河内、古枝尾の二名の横目に山中支配を担わせました。

近現代

1873年(明治6年)に椎葉山中84か村が合併し、向山村(のち不土野村)・大河内村・松尾村・下福良村が発足。1889年(明治22年)に町村制施行により、不土野村・大河内村・松尾村・下福良村が合併し、西臼杵郡椎葉村が発足しました。1949年(昭和24年)には西臼杵郡から東臼杵郡へ所属変更し、東臼杵郡椎葉村となりました。

1998年(平成10年)には十根川地区が重要伝統的建造物群保存地区として選定され、2010年(平成22年)には隣接する熊本県水上村との境界が約1700メートルにわたり確定しました。

椎葉村の産業と文化

椎葉村の産業

椎葉村の主な産業は農業と林業です。特に、日本で唯一、焼畑農業を継承している地域があります。焼畑農業は、山を切り開き、火入れを行い、灰を肥料として作物を栽培する伝統的な農業方法です。

椎葉村の文化

椎葉村には、古来から受け継がれてきた伝統文化が数多く存在します。

  • 椎葉神楽: 国の重要無形民俗文化財に指定されている、椎葉村内の26地区で伝承されている神楽です。全国的に珍しい曲目や近世以前の古い形態を現代に伝えていることを特色としています。
  • ひえつき節: 椎葉村発祥の民謡です。豊作を祈願する歌であり、現在も村の重要な文化として受け継がれています。
  • 焼畑農業: 日本で唯一、焼畑農業を継承している地域として知られています。
  • 臼太鼓踊り: 各地区に伝承されている伝統芸能です。

椎葉村の観光

椎葉村の観光スポット

  • 椎葉村十根川伝統的建造物群保存地区: 国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。「椎葉型」といわれる独特の建築様式の民家を有し、九州の山村集落としては初めて重伝建地区に選定されました。
  • 那須家住宅: 国の重要文化財に指定されています。通称「鶴富屋敷」と呼ばれ、文政年間(1818年~1831年)の建築とされています。「椎葉型」といわれる山岳地に適した並列型民家の代表例であり、長さは25.09m、奥行きは8.64mに達します。
  • 上椎葉ダム: 堤頂長341m、堤高110mの日本初の100m級アーチダムです。富山県の黒部ダムのモデルになったことから、ダム愛好家からは「閣下」と呼ばれることもあります。
  • 八村スギ: 国指定天然記念物です。樹高54.4m、根回り19.0m、幹周り13.3mの巨木で、推定樹齢は約800年です。

椎葉村のイベント

  • ひえつき節日本一大会: 9月に行われる、ひえつき節の大会です。
  • 椎葉平家まつり: 11月に行われる、平家の落人伝説にちなんだ祭りです。

椎葉村へのアクセス

椎葉村へのアクセスは、車かバスが一般的です。最寄りの空港は熊本空港または宮崎空港です。

バス

  • 宮崎交通: 日向市中心部と椎葉村を結ぶバス路線を1路線運行しています。
  • 椎葉村営バス: 椎葉村内を運行しています。

  • 国道327号: 日向市から椎葉村へアクセスできます。
  • 国道265号: 五ヶ瀬町から椎葉村へアクセスできます。

まとめ

椎葉村は、九州山地の秘境に位置する、自然豊かな村です。伝統文化や焼畑農業など、独特の文化が息づいています。観光スポットも数多くあり、自然と文化に触れたい人におすすめです。

椎葉村についてのクイズ

椎葉村はどの山地のほぼ中央に位置していますか?

椎葉村は九州山地のほぼ中央に位置しています。九州山地といえば、九州の地形を形作る大きな山脈を指し、数多くの山々が連なっています。この地域は、その険しい山々によって自然環境が形成されており、豊かな生態系や独自の文化が息づいています。椎葉村の環境はまるで秘境のようで、古くから伝承される文化や、現代においても続けられる焼畑農業が地域の生活と深く結びついていることが特徴です。これらの要素は、椎葉村の魅力を高め、訪れる人々に深い感動を与える要因となっています。

椎葉村の主な産業は何ですか?

椎葉村の主な産業は農業と林業です。特に、村では日本で唯一の焼畑農業が行われています。この農業手法は、山を切り開いて火を入れ、その灰を肥料として作物を育てるという古くからの伝統的な方法です。農業だけでなく、椎葉村の豊かな森林資源を生かした林業も重要な産業です。地域で受け継がれているこれらの産業は、椎葉村の文化や生活を支える基盤となっており、地域の人々が自然と共生しながら生活している様子が伺えます。

椎葉村の重要無形民俗文化財に指定されている伝統文化は何ですか?

椎葉村の重要無形民俗文化財に指定されている伝統文化は椎葉神楽です。この神楽は村内の26地区で伝承されており、全国的に珍しい曲目や近世以前の古い形態を現代に伝えていることが特色です。椎葉神楽は、村の祭りや行事で演じられることが多く、地域の人々にとって重要な文化的イベントとなっています。このような伝統文化は、椎葉村のアイデンティティを形成するだけでなく、地域の人々が共感し集まるきっかけにもなっています。

椎葉村の重要伝統的建造物群保存地区として指定されている場所はどれですか?

椎葉村の重要伝統的建造物群保存地区として指定されているのは「椎葉村十根川伝統的建造物群保存地区」です。この地区は、椎葉型と呼ばれる独特の建築様式の民家が点在しており、地域の歴史的価値を物語っています。九州の山村集落としては初めて、重伝建地区として認定されたことにより、その文化的遺産が保存されることになりました。地元の特色を強く持つこの地区は、伝統的な生活様式や建築技術を今に伝え、観光資源としても重要な役割を果たしています。