宮城県亘理町:豊かな自然と歴史が息づく、魅力あふれるまち

穏やかな太平洋に面し、豊かな自然と歴史が息づく宮城県亘理町。伊達政宗の重臣・伊達成実を初代当主とする亘理伊達氏の城下町として栄え、現在もその歴史を感じられる名所旧跡が数多く点在しています。温暖な気候を生かした農業も盛んで、特にイチゴの名産地として知られています。2011 年の東日本大震災では大きな被害を受けましたが、町民の力強い復興の歩みは、未来への希望を告げているようです。

概要

宮城県南部の太平洋沿岸に位置する亘理町は、亘理郡に属する町です。県の地域区分では広域仙台都市圏に含まれ、仙台市中心部から約 30km の距離にあります。

亘理町は、伊達政宗の重臣である伊達成実を初代当主とする亘理伊達氏の城下町として栄えました。町内には、その歴史を物語る城跡や史跡が点在しており、歴史ファンならずとも訪れる価値のある場所です。

町内は、中央西部に位置する亘理地区、北部の逢隈地区、中央東部の沿岸に位置する荒浜地区、南部の吉田地区に分けられます。亘理地区には、町の中心地があり、県道 10 号塩釜亘理線が東西に貫き、中小の店舗が建ち並び、亘理郡の中心商業地となっています。

亘理町は、温暖な気候を生かした果樹栽培が盛んで、特にイチゴの産地として有名です。近年では、イチゴを使った加工品も開発され、町の名産品として人気を集めています。また、2007 年には郷土料理のはらこ飯が農林水産省の主催する農山漁村の郷土料理百選に選出されるなど、食文化も魅力の一つです。

地理

亘理町は、西側に丘陵地帯、東側に平野が広がる地形をしています。北側には阿武隈川が流れ、太平洋に注ぎます。沿岸部には汽水湖の鳥の海があり、豊かな生態系を育んでいます。

奥羽山脈と陸前丘陵、さらに阿武隈高地によって雪雲が遮断され、海風によって気温が上昇するため、冬季は県内でも特に晴天率が高く温暖な地域です。

  • 四方山(274m)
  • 黒森山(255m)
  • 愛宕山(185m)
  • 三門山(205m)
  • 七峰山(124m)

河川

  • 阿武隈川
  • 鐙川
  • 舟入川

鳥の海

鳥の海は、太平洋に面した汽水湖で、ラムサール条約に登録されています。多様な生物が生息し、渡り鳥の重要な中継地となっています。また、近年では、鳥の海で鳴き砂が発見され、新たな観光資源として注目されています。

気候

亘理町は、温暖な気候に恵まれ、年間を通じて過ごしやすい地域です。冬は、太平洋の影響で比較的暖かく、雪も少ないのが特徴です。夏は、海風が吹き抜けるため、蒸し暑さはそれほど感じられません。

| 亘理(1991 年 – 2020 年)の気候 |
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| 月 | 1 月 | 2 月 | 3 月 | 4 月 | 5 月 | 6 月 | 7 月 | 8 月 | 9 月 | 10 月 | 11 月 | 12 月 | 年 |
| 最高気温記録 °C (°F) | 17.4 (63.3) | 20.8 (69.4) | 25.2 (77.4) | 30.2 (86.4) | 30.8 (87.4) | 33.9 (93) | 36.1 (97) | 36.0 (96.8) | 34.4 (93.9) | 29.5 (85.1) | 26.1 (79) | 20.8 (69.4) | 36.1 (97) |
| 平均最高気温 °C (°F) | 6.1 (43) | 6.7 (44.1) | 10.1 (50.2) | 15.3 (59.5) | 19.7 (67.5) | 22.4 (72.3) | 25.8 (78.4) | 27.5 (81.5) | 24.6 (76.3) | 19.7 (67.5) | 14.3 (57.7) | 8.8 (47.8) | 16.8 (62.2) |
| 日平均気温 °C (°F) | 1.8 (35.2) | 2.2 (36) | 5.2 (41.4) | 10.3 (50.5) | 15.2 (59.4) | 18.7 (65.7) | 22.4 (72.3) | 23.9 (75) | 20.6 (69.1) | 15.2 (59.4) | 9.4 (48.9) | 4.3 (39.7) | 12.4 (54.3) |
| 平均最低気温 °C (°F) | -2.5 (27.5) | -2.3 (27.9) | 0.3 (32.5) | 5.2 (41.4) | 11.0 (51.8) | 15.6 (60.1) | 19.7 (67.5) | 21.0 (69.8) | 17.2 (63) | 11.1 (52) | 4.6 (40.3) | -0.1 (31.8) | 8.4 (47.1) |
| 最低気温記録 °C (°F) | -13.0 (8.6) | -11.6 (11.1) | -7.6 (18.3) | -4.9 (23.2) | 2.9 (37.2) | 7.9 (46.2) | 12.3 (54.1) | 12.7 (54.9) | 7.7 (45.9) | 0.9 (33.6) | -3.8 (25.2) | -7.3 (18.9) | -13.0 (8.6) |
| 降水量 mm (inch) | 45.3 (1.783) | 33.3 (1.311) | 71.7 (2.823) | 86.6 (3.409) | 104.7 (4.122) | 133.1 (5.24) | 180.7 (7.114) | 154.9 (6.098) | 202.6 (7.976) | 164.0 (6.457) | 58.0 (2.283) | 37.3 (1.469) | 1,272.2 (50.087) |
| 平均降水日数 (≥1.0 mm) | 5.3 | 5.1 | 7.7 | 8.1 | 9.4 | 11.7 | 13.8 | 11.5 | 12.1 | 8.8 | 5.8 | 5.5 | 104.9 |
| 平均月間日照時間 | 153.2 | 158.2 | 183.4 | 190.6 | 190.1 | 146.0 | 132.9 | 155.9 | 131.2 | 144.9 | 145.5 | 146.4 | 1,881.1 |
| 出典 1:Japan Meteorological Agency |
| 出典 2:気象庁 |

人口

令和 2 年国勢調査によると、亘理町の人口は 33,087 人です。1970 年代以降、仙台都市圏のベッドタウンとして人口が増加していましたが、2006 年以降は減少傾向にあります。

| 亘理町の人口推移 |
| —————————– | ——— |
| 年 | 人口 |
| 1970 年 | 25,141 人 |
| 1975 年 | 25,742 人 |
| 1980 年 | 27,822 人 |
| 1985 年 | 29,263 人 |
| 1990 年 | 30,301 人 |
| 1995 年 | 33,034 人 |
| 2000 年 | 34,770 人 |
| 2005 年 | 35,132 人 |
| 2010 年 | 34,845 人 |
| 2015 年 | 33,589 人 |
| 2020 年 | 33,087 人 |
| 出典:総務省統計局 国勢調査 |

歴史

亘理町の歴史は古く、古事記や日本書紀にもその名が登場します。

  • 養老 2 年(718 年) – 『続日本紀』に「曰理郡」の名が登場。これが文献上での亘理の初見です。
  • 天喜 4 年(1056 年)頃 – 亘理権大夫・藤原経清が亘理郡に入部し、亘理地方を所領とします。
  • 建久元年(1190 年) – 武石胤盛(亘理氏の祖)、源頼朝に亘理郡を与えられます。
  • 天正 19 年(1591 年) – 亘理氏涌谷へ転封。片倉景綱が、その後 11 年間亘理の地を治めます。
  • 慶長 7 年 12 月 30 日(1603 年 2 月 10 日) – 伊達政宗の一門・伊達成実が亘理城主となります(亘理伊達氏)。
  • 明治 3 年(1870 年) – 亘理伊達氏第 14 代当主・伊達邦成、北海道開拓のため家臣団を率いて胆振国有珠郡(現・伊達市一帯)への移住を開始。
  • 1889 年(明治 22 年)4 月 1 日 – 町村制施行により、小堤村の区域をもって、「亘理町」が発足。
  • 1943 年(昭和 18 年)4 月 29 日 – 荒浜村が町制施行し、「荒浜町」となります。
  • 1955 年(昭和 30 年)2 月 1 日 – 亘理町、荒浜町、吉田村及び逢隈村が合併し、現在の「亘理町」が発足します。

東日本大震災

2011 年 3 月 11 日、東日本大震災が発生しました。亘理町は、震度 6 弱を観測し、大津波によって町の面積の 47%が浸水しました。沿岸部の地区は壊滅的な被害を受け、町民の死者・行方不明者は計 305 人、5,600 棟を超える住宅が全半壊しました。

震災後、亘理町は復興に向けて懸命な努力を続けています。被災地の再建はもちろんのこと、防災対策の強化、地域経済の活性化、人材育成など、様々な課題に取り組んでいます。

  • 津波により浸入した海水を排出する作業の様子
  • 一本松より長瀞小学校を望む
  • 津波により水没した高屋地区の水田
  • 津波により水没した高屋地区
  • 高屋地区で捜索救出活動中の UH-60 ヘリコプター
  • 津波により被災した鳥の海北側の地区
  • 被災した蛭塚への橋「マリンレインボーブリッジ」

行政

首長

  • 町長:山田周伸(2018 年 5 月 28 日就任、1 期目)

町議会

  • 議員定数:18 人

第四次総合計画

亘理町は、2006 年度より 10 ヶ年計画での総合発展計画「暮らしやすさ NO.1」を策定し、地域全体の活性化を目指しています。

経済

産業

亘理町の産業は、農業、工業、商業の 3 つに大きく分けられます。

  • 農業:温暖な気候を生かした果樹栽培が盛んで、特にイチゴは東北地方でトップクラスの出荷量を誇ります。リンゴの出荷量も宮城県内 1 位です。
  • 工業:地場食品加工業や自動車関連企業が中心です。
  • 商業:亘理地区の市街地を中心に、中小の店舗が軒を連ねています。

地場産物

亘理町では、以下の地場産物が有名です。

  • イチゴ:東北地方最大の産地として知られています。
  • リンゴ:宮城県内最大の産地です。
  • はらこ飯:鮭とイクラを使った郷土料理。
  • 笹かまぼこ:亘理町で古くから作られている伝統的な食品です。

交通

鉄道

  • 東日本旅客鉄道(JR 東日本)常磐線:浜吉田駅 – 亘理駅 – 逢隈駅

常磐線は東北本線仙台駅まで直通しており、仙台市へのアクセスも良好です。

バス

  • 亘理町町民乗合自動車「さざんか号」

道路

  • 高速道路:E6 常磐自動車道、E6 仙台東部道路
  • 一般国道:国道 6 号
  • 県道:宮城県道 10 号塩釜亘理線、宮城県道 14 号亘理大河原川崎線、福島県道・宮城県道 38 号相馬亘理線など

名所・旧跡・祭事・催事等

名所・旧跡

  • 鳥の海(汽水湖):2006 年に明成高等学校科学部によって、国内最大規模の鳴き砂の存在が確認された場所です。
  • わたり温泉鳥の海:弱アルカリ高温泉です。
  • 三十三間堂官衙遺跡:国の史跡に指定されています。平安時代の亘理郡衙の跡地です。
  • 大雄寺の亘理伊達家御廟所(小堤城跡):亘理伊達氏の菩提寺です。
  • 亘理神社(亘理城跡):亘理伊達氏の氏神です。
  • 尊久老稲荷神社
  • 称名寺のシイノキ:国の天然記念物に指定されています。

祭事・催事

  • 亘理町産業祭:毎年 10 月に開催される、町の産業を PR するイベントです。
  • 亘理町花火大会:夏に開催される、町を彩る花火大会です。
  • 鳥の海マラソン:毎年 11 月に開催される、鳥の海を舞台にしたマラソン大会です。

出身有名人

  • 佐藤恵利子:女子サッカー選手
  • 菅原克己:詩人
  • 菅原祐輝:ラグビー選手
  • 鈴木淳:元サッカー選手、J1 監督
  • 武田信平:元サッカー選手、川崎フロンターレ前会長
  • 宮城けんじ:漫才師(W けんじ)
  • 武者大輔:ラグビー選手
  • 村上和巳:フリージャーナリスト
  • 村松巌:七十七銀行元頭取
  • 森俊博:空手家

郷土料理

  • はらこ飯:鮭とイクラを使った郷土料理。秋の風物詩として親しまれています。
  • あさり飯:春に旬を迎えるアサリを使った郷土料理です。
  • しゃこ飯:夏に旬を迎えるシャコを使った郷土料理です。
  • ほっき飯:冬に旬を迎えるホッキ貝を使った郷土料理です。

町民憲章

亘理町では、町民憲章を制定し、町民一人ひとりが、より良い町づくりを目指しています。

  • 一、汗して働き、ゆとりある豊かな町をつくりましょう。
  • 一、自然を生かし、美しい町をつくりましょう。
  • 一、きまりをまもり、助け合う明るい町をつくりましょう。
  • 一、すすんでまなび、郷土を護る文化の町をつくりましょう。
  • 一、希望にみちた、活力のある伸びゆく町をつくりましょう。

脚注

    1. ^ a b 2023 年 5 月 1 日時点。

参考文献

  • 『亘理町史』現代編(宮城県亘理郡亘理町、2008 年)

関連項目

  • 日本の地方公共団体一覧
  • 藤原経清

外部リンク

  • わたりちょう 宮城県亘理郡亘理町

まとめ

亘理町は、豊かな自然と歴史が息づく、魅力あふれる町です。温暖な気候を生かした農業、美しい自然、歴史を感じられる名所旧跡など、魅力が満載です。東日本大震災からの復興を力強く進める亘理町は、未来に向けて新たな発展を遂げるまちです。

亘理町についてのクイズ

宮城県亘理町は、どのような地域の一部として位置づけられていますか?

亘理町は宮城県南部の太平洋沿岸に位置し、広域仙台都市圏に含まれています。具体的には、仙台市中心部から約30kmの距離にあり、仙台市へのアクセスも良好です。周辺地域には自然が豊かで、歴史的な名所や観光スポットも点在しています。このような位置づけから、亘理町は地域の経済活動や住民生活においても、仙台市との結びつきが強く、交通や商業において重要な役割を果たしています。また、町の温暖な気候を活かした農業も盛んで、特にイチゴの名産地として知られています。地域資源や地理的な特徴を活かしながら、亘理町は魅力あふれる町づくりを目指しています。

亘理町の主な気候の特徴は何ですか?

亘理町は、温暖な気候に恵まれており、冬は比較的温暖で雪も少ないのが特徴です。太平洋の影響を受けているため、冬季は県内でも特に晴天率が高いです。また、夏は海風が吹き抜けるため蒸し暑さをあまり感じることがありません。こうした気候条件は、農業の発展に寄与しており、特に果樹栽培が盛んです。亘理町では、イチゴやリンゴなどの生産が活発で、これらの作物は町の特産品として知られています。気候に適した農業を行うことで、地域経済の向上や自然環境の保全にも寄与しています。

亘理町での人口の推移は、どのような傾向を示していますか?

亘理町の人口は、1970年代以降は増加傾向にありましたが、2006年以降は徐々に減少傾向に転じています。この減少は、少子高齢化や若者の都市部への流出など、さまざまな要因によって引き起こされています。令和2年国勢調査によると、亘理町の人口は33,087人で、その前の調査から減少していることが示されています。町はこの課題に対処するために、地域活性化や子育て支援策の強化を進めており、未来の持続可能な町づくりに向けた努力を続けています。

亘理町の名所として位置づけられている観光地はどれですか?

亘理町の名所の一つに「鳥の海」があります。これは、太平洋に面した汽水湖であり、多様な生物が生息する豊かな生態系を育んでいます。また、ラムサール条約に登録されており、渡り鳥の重要な中継地としても知られています。さらには、鳥の海は鳴き砂が見つかった場所で、観光資源として新たに注目を浴びています。訪れる人々にとって、自然の美しさや生態系の重要性を実感できる貴重な場所となっており、亘理町の観光に欠かせない存在です。

亘理町の産業の中で特に重要な分野はどれですか?

亘理町の産業の中で特に重要なのは農業です。町の温暖な気候を生かした果樹栽培が盛んで、特にイチゴの生産量は東北地方でトップクラスを誇ります。また、リンゴも宮城県内での最大の産地として知られており、農業は町の経済活動の中心的な役割を果たしています。それに加えて、農業関連の加工品の開発や地元の食文化を引き継ぐ動きも進んでおり、地域の活性化にも寄与しています。亘理町は、農業を基盤としてさらなる発展を目指しています。

亘理町の歴史の中で、伊達政宗に関する出来事はいつ起こりましたか?

亘理町の歴史の中で、伊達政宗の一門である伊達成実が亘理城主となったのは、慶長7年(1603年)のことです。亘理伊達氏がその中心となり、町は城下町として栄えました。この時期の亘理町は、歴史と文化の交差点となっており、現在でもその名残が町中に見られます。町内には亘理伊達氏に関連する史跡や文化財が多く存在し、訪れる人々に豊かな歴史を伝えています。亘理町はこの豊かな歴史を背景に、観光や地域振興を図る努力を続けています。