仙台空港や広大な水田地帯、そして太平洋の美しい海岸線を持つ宮城県名取市は、歴史と自然が調和した魅力的な街です。古くから交通の要衝として栄え、近年では仙台市のベッドタウンとして発展を遂げています。
概要
名取市は宮城県の中央南部に位置し、仙台市の南東に隣接する太平洋沿岸の臨空都市です。市内には仙台空港があり、東北地方の玄関口として重要な役割を担っています。
地名の由来
名取市の地名の由来は、古来より湿地が多く、アイヌ語で湿地を意味する「ニタトル」と呼ばれていたことに由来すると言われています。それが訛って「ニトリ」に、さらに「ナトリ」と呼ばれるようになり、現在の「名取」になったとされています。
地理
位置
名取市は宮城県の南部に位置し、太平洋に面しています。西側は陸前丘陵の一部を成す高舘丘陵、東側は仙台平野(名取平野)が広がっています。
北には仙台市との境界を流れる名取川があり、河口部には閖上港があります。東北自動車道、国道4号線、東北新幹線、東北本線が縦貫しており、交通の便にも恵まれています。
地形
名取市は西が高く東が低い地勢となっており、市内を流れる河川は西から東に向かって流れ下りています。奥羽山脈から流れるのは名取川だけで、それ以外は丘陵に源を持つ小河川です。
山岳
- 日和山: 閖上地区にある築山。
河川
- 名取川
- 増田川
- 川内沢川
- 志賀沢川
湖沼
- 広浦: 閖上地区にある潟湖。閖上漁港として船舶が停泊しています。
- 樽水ダム: 増田川にあるダム。
海岸
- 閖上浜: 太平洋に面した砂浜。
気候
名取市は、太平洋側気候に属し、温暖で湿潤な気候です。夏は高温多湿で、冬は比較的穏やかな気候です。年間を通して降水量は多いですが、特に梅雨の時期は降水量が多くなります。
歴史
古代
名取市から仙台市南部にかけては、4世紀後半の古墳時代前期から多数の古墳が造営されました。中でも最大のものが、愛島丘陵東端に築かれた東北地方最大の雷神山古墳です。大型前方後円墳はこれ一つですが、多数の中小古墳が作られ、7~8世紀の横穴墓へと繋がっています。
中世
平安時代に高舘丘陵北東麓に紀伊国の熊野神社の本宮・新宮・那智社が勧請され、名取熊野三山を形成しました。熊野社の分社は多いですが、三社を合祀せず別々に設けて三山を引き写したのは全国的にみても珍しいです。
近世
仙台藩は新しく奥州街道を開き、増田宿を置きました。仙台藩は陸奥国領内を南・北・中奥・奥の4つに分割して各々郡奉行を置き、その下を19の代官区に細分して支配しましたが、後に名取市にまとまる地域は、全域が南郡奉行の下に置かれ、増田代官所に統治されました。増田には三と七がつく日に市が立ったとされています。
近代
明治時代に入ると、藩政時代の村を基本単位として数か村を様々な組み合わせでまとめて行政単位が置かれました。
1889年(明治22年)の町村制施行で、現在の名取市域には6ヶ村が誕生しました。
1926年(大正15年)には増田村と閖上村を結ぶ軽便鉄道「増東軌道」が開通しますが、バスとの競合により10年余りで廃止されました。
近現代
1955年(昭和30年)に6町村が合併し、名取町が誕生しました。
1958年(昭和33年)に名取町は市制施行し、名取市となりました。
2011年(平成23年)3月11日には、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し、閖上地区の中心部や下増田村の沿岸地域が津波の被害を受けました。
経済
名取市は、農業、水産業、工業などがバランスよく発展した都市です。
第一次産業
農業
名取市は、肥沃な仙台平野に位置しているため、古くから農業が盛んです。主な農産物は米、カーネーション、メロン、タケノコ、セリ、ミョウガなどです。
水産業
名取市は、太平洋に面しているため、水産業も盛んです。主な海産物はヒラメ、赤貝、シャコエビなどです。
第二次産業
工業
名取市には、サッポロビール仙台工場や仙台ニコンなどの工場があります。
第三次産業
商業
名取市には、イオンタウン名取、なとりりんくうタウン、イオンモール名取などの大型商業施設があります。
観光
名取市には、歴史的な建造物や自然豊かなスポットなど、魅力的な観光地がたくさんあります。
名所・旧跡
- 雷神山古墳: 東北地方最大の前方後円墳。国の史跡に指定されています。
- 名取熊野三社: 熊野新宮社、熊野本宮社、熊野那智神社の3社からなる神社。
- 佐倍乃神社: 古くから地元の人々に信仰されてきた神社。
- 旧中澤家住宅: 江戸時代の農家。国の重要文化財に指定されています。
- 洞口家住宅: 江戸時代の農家。国の重要文化財に指定されています。
観光スポット
- ゆりあげ港朝市: 毎週日曜・祝日に閖上港近くで行われる朝市。新鮮な魚介類が豊富です。
- かわまちてらす閖上: 東日本大震災からの復興を象徴する新しい商店街。
- 東北電力名取スポーツパーク: 東北電力が建設した総合運動公園。
- 貞山運河: 伊達政宗が作った運河を端緒として、次々に作られた運河が連結・延長して長くなった運河。
- あんどん松: 名取川の堤防に沿った松並木。樹齢は300年を超えており、伊達政宗が植えたものであるといわれています。
文化・名物
名取市には、独自の文化や名産品があります。
文化財
- 雷神山古墳
- 飯野坂古墳群
- 旧中澤家住宅
- 洞口家住宅
- 熊野那智神社
- 熊野新宮寺
- 熊野神社
- 道祖神神楽
祭事・催事
- なとり夏まつり: 毎年8月上旬に催される祭り。名取川河口での花火大会などがあります。
- サッポロビールまつり: 毎年6月に名取駅に隣接するサッポロビール仙台工場で行われていたお祭り。工場を開放し、見学や各種イベント等があります。ビールの無料試飲もありました。
名産・特産
- 笹かまぼこ
- ビーテラ: 市内のビール工場のビール酵母を使ったカステラ。ビールの香りがします。
- 焼き鰈
交通
名取市は、仙台空港、東北新幹線、東北本線、国道4号線などの交通機関が整備されており、アクセス抜群です。
空路
- 仙台空港: 国内線、国際線ともに就航しています。
鉄道
- 東北新幹線: 白石蔵王駅 – 仙台駅間で市を通過しています。
- 東北本線: 館腰駅 – 名取駅
- 仙台空港鉄道仙台空港線: 名取駅 – 杜せきのした駅 – 美田園駅 – 仙台空港駅
バス
- なとりん号: 名取市民乗合バス
- 宮城交通: 尚絅学院大線、ライフタウン名取線
- 岩沼市民バス: 仙台空港停留所のみ
道路
- 東北自動車道: 仙台南IC
- 仙台東部道路: 仙台空港IC、名取中央SIC、名取IC
- 国道4号
- 国道6号
- 国道286号
まとめ
宮城県名取市は、仙台空港、豊かな自然、歴史的な建造物など、魅力あふれる都市です。仙台市のベッドタウンとして発展を続けている一方で、伝統文化や自然環境を守りながら、独自の文化を育んでいます。ぜひ一度、名取市を訪れてみてください。
名取市についてのクイズ
名取市の地名の由来は何に由来していると言われていますか?
名取市の地名の由来は、アイヌ語で湿地を意味する「ニタトル」とされており、これが訛って「ニトリ」、さらに「ナトリ」と呼ばれるようになり、現在の「名取」という名前に至っています。この地域は歴史的に湿地が多く、アイヌ語の呼称がそのまま地名に反映される形で定着していったと考えられています。地名の由来がアイヌ語に拠る場合、地域における先住民族の存在や、その言語が持つ文化的価値が強調されます。このように、名取市の地名の由来はその土地の自然環境を反映しており、古代の人々にとって重要な特徴だったことが伺えます。
名取市を代表する河川はどれですか?
名取市を代表する河川は「名取川」です。名取川は市の北部を流れ、仙台市との境界を形成しています。名取川の流域は豊かな自然環境に恵まれており、周辺地域にとって重要な水源です。また、名取川は水資源の供給だけでなく、交通・経済活動の面でも重要な役割を果たしてきました。西から東へと流れるこの川は、奥羽山脈からの水が流れ込む一方で、地元住民にとっては釣りやレクリエーションの場としても利用されています。このように、名取川は名取市の自然環境を象徴する重要な存在となっています。
名取市で行われる夏の祭りの名前は何ですか?
名取市で行われる夏の祭りは「なとり夏まつり」です。この祭りは、毎年8月上旬に開催され、名取川の河口で花火大会が行われるなど多くの人々が集まります。なとり夏まつりは、地域のコミュニティの絆を深めるために重要なイベントであり、地元住民だけでなく、周辺地域からも多くの観光客が訪れます。この祭りは、名取市の文化や伝統を体験する絶好の機会となっており、地元に根付いた祭りとして愛されています。地元の食材を用いた出店や、踊りや音楽のパフォーマンスもあり、参加者にとって楽しみが詰まったイベントです。
名取市にある古墳で、東北地方最大のものは何ですか?
名取市にある古墳の中で、東北地方最大のものは「雷神山古墳」です。この古墳は国の史跡に指定されており、古代の葬送文化や信仰を反映している重要な考古学的遺産とされています。雷神山古墳は、4世紀後半から6世紀にかけての時代に建立されたと推定され、多数の中小古墳と共に地域の墓制を形成しています。このような古墳群は、当時の権力者や氏族の存在を物語っており、考古学的な研究において大きな価値を持つとされています。雷神山古墳は、名取市の歴史的な象徴として地域の文化的アイdenティティに大きな役割を果たしています。