岩手県奥州市:前沢牛と歴史が香る、豊かな自然と文化の街

奥州市(おうしゅうし)は、岩手県の内陸南部に位置する、自然と歴史が織りなす魅力あふれる街です。ブランド牛肉の前沢牛や、歴史ロマンあふれる観光施設「えさし藤原の郷」で知られています。この記事では、奥州市の魅力を余すことなく紹介します。

概要

奥州市は、岩手県南地方を管轄する県南広域振興局の所在地です。2006年(平成18年)に水沢市・江刺市、胆沢郡前沢町・胆沢町・衣川村が新設合併して誕生しました。人口は約11万人、県内では盛岡市についで第2位の人口規模です。総面積は993.35平方キロメートルと広大で、東京都の半分弱、岩手県内では宮古市、一関市についで第3位です。

市名の「奥州」は、旧令制国での陸奥国の別称であり、岩手県全体を含む東北地方の大半を包含する名称でもあります。

地理

奥州市は、西側を奥羽山脈、東側を北上山地で挟まれる北上盆地の南部に位置します。北は花巻市、北上市、西和賀町、金ケ崎町、南は一関市、平泉町、東は遠野市、住田町、西は秋田県東成瀬村と隣接しています。

立地と地勢

奥州市は、北上川と胆沢川が流れ、豊かな自然に恵まれた地域です。西部地域の焼石連峰はブナの原生林が残り、北上川東側には田園地帯が広がります。東端部には種山高原、阿原山高原が連なり、地域全体が緑豊かな自然に包まれています。

主な可住地は、胆沢川によって拓かれた広さ2万ヘクタールの胆沢扇状地、その扇端の東側を南北に流れる北上川が形成した河岸段丘、その他の小河川沿い平地や高原地域です。可住地面積は443.69km2と、全国で7位(岩手県内では1位)です。岩手県の可住地率は低いですが、奥州市は北上盆地の恩恵を受けています。

産業

奥州市は、農業、工業、商業がバランスよく発展した街です。

農業

肥沃な大地を生かし、稲作を中心とした複合型農業が盛んです。県内屈指の農業地帯として、前沢牛江刺りんご江刺金札米などの有名な農産物を生産しています。

工業

交通の利便性を活かし、工業団地が整備されています。特に、自動車組立工場とその関連工場が近年活発です。

商業

県内屈指の商業集積地として発展してきました。中心市街地には、大型商業施設が立ち並び、かつては活気あふれる街並みでした。近年は、郊外型商業施設の進出などにより、中心市街地の空洞化が課題となっています。

歴史

奥州市は、古代から東北地方の歴史において重要な役割を果たしてきた地域です。

古代

  • 5世紀後半〜6世紀初には、日本列島北端に位置する前方後円墳、角塚古墳が造営されました。この古墳は、古代の豪族の権力の大きさを物語っています。
  • 729年(天平元年)、東北地方初の寺院として、行基が黒石に東光山薬師寺(後の黒石寺)を建立しました。
  • 780年(宝亀11年)、三十八年戦争が勃発し、奥州市は戦乱の舞台となりました。
  • 平安時代後期には、安倍氏が奥六郡を支配し、衣川は歌枕として多くの歌人に詠まれました。

中世

  • 平安時代末期、奥州藤原氏が平泉に拠点を築き、東北地方を支配しました。奥州市は、奥州藤原氏の重要な拠点の一つとして栄えました。
  • 鎌倉時代から室町時代にかけて、葛西氏が奥州市を治めました。水沢城は葛西氏の胆沢平野支配の拠点の一つでした。
  • 1349年(貞和4年)、正法寺が黒石に建立されました。奥羽二州における曹洞宗の中心寺院として発展しました。

近世

  • 仙台藩が成立すると、奥州市は仙台領の一部となりました。水沢城には留守氏が入城し、水沢は仙台藩一門三席留守氏の支配が幕末まで続きました。
  • 江刺郡には岩谷堂城が築かれ、仙台藩一門六席「岩谷堂伊達家」の時代が幕末まで続きました。
  • 1612年(慶長17年)、キリシタンの後藤寿庵が水沢に見分村(現在の水沢福原)を領し、東北地方のキリシタン布教の拠点となりました。

近代

  • 戊辰戦争では、仙台藩は奥羽越列藩同盟に加わり、明治新政府と戦いました。
  • 1869年(明治2年)、仙台藩が廃藩置県となり、胆沢県と江刺県が設置されました。
  • 1876年(明治9年)、胆沢県と江刺県が岩手県に編入されました。
  • 1889年(明治22年)、町村制が施行され、水沢町や江刺町などが成立しました。
  • 1890年(明治23年)、日本鉄道水沢駅が開業しました。
  • 1899年(明治32年)、水沢に緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)が開設されました。

現代

  • 1954年(昭和29年)、水沢町などが合併し、水沢市が誕生しました。
  • 1958年(昭和33年)、江刺町が市制施行し、江刺市が誕生しました。
  • 2006年(平成18年)、水沢市・江刺市、胆沢郡前沢町・胆沢町・衣川村が合併し、奥州市が誕生しました。

行政

  • 奥州市の市長は倉成淳氏です。

観光

奥州市は、歴史と自然が調和した魅力的な観光スポットが数多く存在します。

歴史的建造物

  • 角塚古墳: 古墳時代、東北地方を代表する前方後円墳。
  • 胆沢城跡: 789年(延暦8年)に築城された城跡。
  • 正法寺: 曹洞宗三本山の一つ。
  • 黒石寺: 東北地方最古の寺院。
  • 高野長英旧宅: 江戸時代後期の蘭学者、高野長英の旧宅。
  • 後藤新平旧宅: 政治家、後藤新平の旧宅。
  • 斎藤実記念館: 海軍大臣、斎藤実の業績を展示する記念館。

自然

  • 焼石連峰: ブナの原生林が残る、奥羽山脈の美しい山々。
  • 北上川: 奥州市を流れる、雄大な川。
  • 胆沢ダム: 国内最大級のロックフィルダム。
  • 衣川の星空: 日本一の星空として知られています。

テーマパーク

  • えさし藤原の郷: 平泉藤原氏の栄華を再現した歴史公園。

祭り

  • 日高火防祭: 毎年4月に開催される、火防神を祭る伝統的な祭り。
  • 江刺鹿踊り: 国の重要無形民俗文化財に指定されている、伝統芸能。

名産品

  • 前沢牛: 奥州市を代表するブランド牛。
  • 江刺りんご: 甘みが強く、シャキシャキとした食感が特徴のりんご。
  • 南部鉄器: 江戸時代から続く伝統工芸品。

交通

奥州市は、鉄道、道路、バスなどの交通網が整備されています。

鉄道

  • JR東北新幹線:水沢江刺駅
  • JR東北本線:水沢駅

道路

  • 東北自動車道:水沢IC、奥州スマートIC

まとめ

奥州市は、豊かな自然と歴史、そして文化が調和した、魅力的な街です。ブランド牛肉の前沢牛や歴史ロマンあふれる観光施設「えさし藤原の郷」など、見どころが満載です。ぜひ一度、奥州市を訪れてみてください。

奥州市についてのクイズ

奥州市はどのようにして誕生しましたか?

奥州市は2006年に、水沢市、江刺市、胆沢郡前沢町、胆沢町、衣川村の合併により誕生しました。これにより、農業、工業、商業がバランスよく発展した地域としての地位を確立しました。合併前の市町はそれぞれ独自の文化や特産品を持っており、合併後もその多様性が地域の魅力として生き続けています。合併後の市名「奥州」は、旧任制国である陸奥国の別称に由来しており、地域の歴史を象徴する名称でもあります。

奥州市を流れる大きな川はどれですか?

奥州市を流れる主な河川は北上川です。北上川は岩手県を代表する川で、奥州市の中心部を流れています。地域には他にも胆沢川が流れており、これらの川は広大な農地と豊かな自然を形成する要素となっています。また、北上川の流域は古くから人々の生活を支えてきた場所であり、地域の歴史や文化にも深く関わっています。川の存在が地域社会にもたらした恩恵は計り知れません。

奥州市で生産されている有名な農産物はどれですか?

奥州市を代表する有名な農産物は前沢牛です。前沢牛は、その肉質の柔らかさと豊かな脂肪分が特徴のブランド牛で、全国的にも評価が高いです。また、奥州市は江刺りんごや江刺金札米など、他にも多くの優れた農産物を生産しています。これらの農産物は、奥州市が肥沃な土地に恵まれていることから生まれるものであり、地域の農業文化を支える重要な産業のひとつです。

奥州市にある歴史的な観光施設の一つはどれですか?

奥州市には「えさし藤原の郷」という観光施設があります。これは平泉藤原氏の栄華を再現した歴史公園であり、訪れた人々は平安時代の雰囲気を感じながら、その文化を体験することができます。施設内には、当時の建物や生活様式を模した展示があり、観光客だけでなく地域の文化交流の場としても重要な役割を果たしています。また、躍動感のある祭りやイベントが開催され、多くの人々が訪れる魅力的なスポットとなっています。