北海道歌志内市:人口減少に立ち向かう炭鉱の町、観光と再生への挑戦

人口わずか2,600人、全国最少の人口を誇る北海道歌志内市。かつては石炭産業で栄えた活気あふれる街でしたが、閉山後は人口減少に苦しんでいます。しかし、歌志内市は豊かな自然と歴史、そして人々の温かさを活かし、新たな魅力を発信しようと奮闘しています。

概要

歌志内市は、北海道の中央部に位置する空知総合振興局に属する市です。2023年8月現在、全国47都道府県792市の中で最も人口の少ない市として知られています。

かつては年間生産量約70万トンの石炭産業で栄え、1948年には約46,000人の人口を記録しました。しかし、石炭産業の衰退とともに人口は減少の一途をたどり、1981年から2012年までは人口が1万人に満たない全国唯一の市でした。2007年以降は北海道の町制施行基準である人口5,000人を下回り、現在も人口5,000人に満たない日本で唯一の市となっています。

近年は、かもい岳国際スキー場や市営かもい岳温泉などの観光開発に力を入れていますが、厳しい財政状況に直面しています。

市名の由来

歌志内市は、市内を流れる「オタシナイ川」の音を採って命名された歌志内駅が開業し、その後分村時に駅名がそのまま村名となったと言われています。下流の「砂川」は、この「オタシナイ」を意訳して命名された地名とされています。

地理

歌志内市は、北海道空知総合振興局管内のほぼ中央に位置し、神威岳をはじめとする夕張山地の山々が連なる自然豊かな街です。市街地を貫流するペンケウタシュナイ川が大きな沢をつくり、市域は主に山岳・森林地帯となっています。

地形

山地

  • 神威岳
  • 西山

河川

  • ペンケウタシュナイ川
  • 歌志内中の沢川
  • 上歌川

隣接する自治体

  • 芦別市
  • 赤平市
  • 砂川市
  • 空知郡上砂川町

歴史

歌志内市域は、かつてアイヌの居住および狩猟の地であったと考えられており、神威岳もアイヌ語の「カムイヌプリ」(熊や狼など野獣の多い山の意)から命名されました。19世紀初頭には西蝦夷地の上カバタ場所に属し、1831年以降はイシカリ場所に属していました。明治維新を迎えるまで、松前藩領から天領、松前藩復領、再び天領を経て、1859年以降は庄内藩の警護地となりました。

沿革

  • 1831年(天保2年):松前藩イシカリ場所となる。
  • 1869年(明治2年):石狩国空知郡に属す。
  • 1890年(明治23年):滝川村から当市域を含めた奈江村(現砂川市)が分離新設される(歌志内開基)。北海道炭礦鉄道空知採炭所(空知炭鉱)開坑。
  • 1891年(明治24年)7月5日:北海道炭礦鉄道により鉄道(後の歌志内線)が開通、歌志内駅開業。北海道炭礦鉄道神威炭鉱開坑。
  • 1897年(明治30年)7月1日:歌志内村(現歌志内市・赤平市・芦別市)、奈江村(現砂川市)より分立。空知炭鉱倶楽部の開館。
  • 1900年(明治33年)6月1日:芦別村(現芦別市)分立。歌志内神社の創建。
  • 1940年(昭和15年)4月1日:町制施行「歌志内町」。
  • 1948年(昭和23年)7月:人口がピークを迎える(46,171人)。
  • 1958年(昭和33年)7月1日:市制施行「歌志内市」。
  • 1988年(昭和63年):住友石炭鉱業上歌志内鉱業所閉山、歌志内線廃止。
  • 1995年(平成7年):北海道炭礦汽船空知炭鉱閉山(空知炭田群炭山消滅)。
  • 2007年(平成19年)11月:人口が5,000人を割る。
  • 2019年(平成31年/令和元年):かもい岳国際スキー場が休止。
  • 2021年(令和3年)3月:人口が3,000人を割る。

行政

歌志内市役所は市域の東寄りに設置されています。2市3町地域づくり懇談会解散後、新たな連携、事務の共同化について検討が進められています。

市長

  • 市長:柴田一孔(2020年10月26日就任、1期目)

歴代首長

期間 役職 氏名 備考
1897年 – 1940年 歌志内村長 加藤尚友三郎
1940年 – 1958年 歌志内町長 阿部秀雄
1958年 – 1974年 歌志内市長 加藤正雄
1974年 – 1980年 歌志内市長 齊藤譲一 在任中逝去
1980年 – 1988年 歌志内市長 森永大
1988年 – 1992年 歌志内市長 堀内日出男
1992年 – 2004年 歌志内市長 河原敬
2004年 – 2012年 歌志内市長 泉谷和美
2012年 – 2020年 歌志内市長 村上隆興
2020年 – 現在 歌志内市長 柴田一孔

市議会

歌志内市議会は、定数8名で構成されています。

財政

歌志内市は、かつて「空知産炭地域総合発展基金」からの不適切な長期借り入れ(ヤミ起債)問題を抱えていましたが、救済策によって解決しました。しかし、財政再建団体への指定を免れたものの、厳しい財政状況は続いています。

地域

人口

歌志内市は、炭鉱都市として栄えていた時代には人口2万人を突破していましたが、閉山が相次いだ影響で、1981年には日本の市として初めて人口1万人を割り込みました。その後も人口は減少傾向にあり、現在では全国の市の中で最少となっています。

人口
1970年 19,334人
1975年 11,778人
1980年 10,178人
1985年 9,612人
1990年 8,279人
1995年 6,867人
2000年 5,941人
2005年 5,221人
2010年 4,390人
2015年 3,585人
2020年 2,989人

消滅集落

2015年の国勢調査では、歌志内市の字新歌と字西山は人口0人の消滅集落となりました。

公共施設

コミュニティセンター

  • 歌志内市コミュニティセンター(歌志内市公民館・歌志内市立図書館・大ホールを併設)

運動施設

  • 歌志内市民体育館

経済

産業

かつては石炭産業が歌志内市の主要産業でしたが、閉山後は観光業や農業などが中心となっています。札幌圏・道央自動車道へのアクセスを売りとした工業団地(文珠団地)も分譲されています。

観光

  • かもい岳国際スキー場
  • かもい岳温泉
  • 道の駅うたしないチロルの湯

教育

歌志内市には高等学校が存在しません。最寄りの高校は北海道砂川高等学校です。

義務教育学校

  • 歌志内市立歌志内学園

閉校となった学校

  • 北海道歌志内新歌高等学校
  • 北海道歌志内高等学校
  • 歌志内市立新歌志内中学校
  • 歌志内市立神威中学校
  • 歌志内市立歌志内中学校
  • 歌志内市立新歌小学校
  • 歌志内市立文珠小学校
  • 歌志内市立神威小学校
  • 歌志内市立上歌小学校
  • 歌志内市立中央小学校
  • 歌志内市立歌志内小学校〈旧〉
  • 歌志内市立西小学校
  • 歌志内市立歌志内小学校〈新〉

幼児教育

  • 歌志内市立歌志内認定こども園「あおぞら」

交通

鉄道

歌志内市には鉄道駅はありません。かつては歌志内線が通っていましたが、1988年に廃止されました。

バス

  • 北海道中央バス(滝川営業所)が、上砂川・砂川・赤平などへバスを運行しています。

道路

  • 北海道道114号赤平奈井江線
  • 北海道道115号芦別砂川線
  • 北海道道627号文珠砂川線
  • 北海道道691号赤平歌志内線
  • 北海道道1027号砂川歌志内線

道の駅

  • 道の駅うたしないチロルの湯

観光

観光スポット

  • かもい岳国際スキー場
  • 道の駅うたしないチロルの湯
  • 歌志内公園
  • 悲別ロマン座
  • 郷土館ゆめつむぎ
  • こもれびの杜記念館(旧・空知炭鉱倶楽部)
  • 神威岳自然公園
  • かもい岳温泉ホテル

文化・名物

スポーツ

  • かもい岳レーシングチーム

出身・関連著名人

出身著名人

  • 泉谷和美(元歌志内市長)
  • 佐分利信(俳優)
  • 笹崎僙(プロボクサー)
  • 高橋揆一郎(芥川賞作家)
  • 正司歌江(かしまし娘)
  • 秋庭豊とアローナイツ(ムードコーラス)
  • 若狭繁行(スキージャンプ選手)
  • 石井智也(アルペンスキー選手)
  • 佐々木富雄(アルペンスキー選手)
  • nonoc(歌手)
  • 工藤万砂美(政治家、参議院議員)

ゆかりの人物

  • 国木田独歩(作家)
  • 葛西善蔵(作家)
  • 三浦綾子(作家)
  • 早坂文雄(作曲家)

マスコット

  • ヒツジの「ホルンくん」

歌志内市を舞台とした作品

文学

  • 『空知川の岸辺』(国木田独歩)
  • 『雪おんな』(葛西善蔵)
  • 『友子』(高橋揆一郎)

映画

  • 『海へ 〜See you〜』

脚注

出典

  1. 毎日新聞 (2022年11月3日). “ルポ/1 人口2853人、減少続く歌志内市 自治体存続に危機感 新産業創出へ「小さな灯り」 /北海道”. 毎日新聞. 2023年11月2日閲覧。
  2. 産経新聞社 (2014年5月6日). “かつての4.6万人が遂に4千人切り! 全国最少市・歌志内市を訪ねてみた”. 産経新聞社. 2015年2月12日閲覧。
  3. 北海道の空き家率ランキング2021年9月24日アクセス
  4. 歌志内市 (2022年9月2日). “令和4年歌志内市月別世帯数・人口”. 歌志内市. 2022年9月2日閲覧。
  5. 歌志内市 (2022年9月2日). “平成29年歌志内市月別世帯数・人口”. 歌志内市. 2022年9月2日閲覧。
  6. 歌志内市 (2022年9月2日). “平成24年歌志内市月別世帯数・人口”. 歌志内市. 2022年9月2日閲覧。
  7. 総務省統計局統計調査部国勢統計課 (2017年1月27日). “平成27年国勢調査小地域集計01北海道《年齢(5歳階級),男女別人口,総年齢及び平均年齢(外国人-特掲)-町丁・字等》”. 総務省. 2017年5月20日閲覧。
  8. 2026年4月から滝川警察署。
  9. ほくでんネットワーク (2023年11月2日). “お近くのほくでんネットワーク検索”. ほくでんネットワーク. 2023年11月2日閲覧。
  10. 週刊東洋経済 (2020年). “都市データパック 2020年版”. 東洋経済新報社. 2023年11月2日閲覧。

関連項目

  • なんこ鍋
  • 全国市町村一覧

外部リンク

  • 歌志内市 公式ウェブサイト
  • 歌志内市 (utashinaicity) – Facebook
  • 歌志内市 – YouTubeチャンネル
  • うたしない観光マップ

歌志内市についてのクイズ

歌志内市の人口は現在、約何人ですか?

北海道歌志内市の現在の人口は約2,600人であり、これは全国の市の中で最も少ない数字です。歌志内市はかつて、石炭産業で栄え、1948年には約46,000人の人口を持っていましたが、石炭産業の衰退に伴い、人口は減少を続けています。1981年には日本の市として初めて人口が1万人を割り込み、その後も減少は続き、2007年からは再び5,000人を下回る状態が続いています。このような人口減少は地方都市や過疎地域に共通する課題ですが、歌志内市は豊かな自然や歴史を生かし、観光業や地域振興策を模索しながら再生を目指しています。

歌志内市の市名の由来となった川の名前は何ですか?

歌志内市の市名は、市内を流れる「オタシナイ川」に由来しています。この川の名前はアイヌ語に起源を持ち、市名が決まるきっかけとなりました。また、歌志内市の名前が使われるようになったのは、歌志内駅の開業とともに地名として認知されるようになったためです。歌志内市は、かつては石炭産業で栄えていた地域であり、多くの歴史を持っていますが、今日も自然環境を大切にしながらその歴史を語り継いでいます。市の名前には、その土地に根づいた伝統や文化が込められています。

歌志内市の最近の観光開発に注力している施設は何ですか?

歌志内市は観光開発に力を入れており、特に「道の駅うたしないチロルの湯」などがその一環として注目を集めています。この道の駅は、地域の特産品や観光情報の提供に加えて、観光客にリラックスできる空間を提供しています。また、周辺にはかもい岳国際スキー場やかもい岳温泉などもあり、自然や歴史が融合した独自の観光地としての魅力を発揮しています。財政的には厳しい状況ではありますが、地域の活性化を目指して観光の振興を図っています。

歌志内市でかつて栄えた主要な産業は何でしたか?

かつての歌志内市は石炭産業が主要な産業であり、栄えた時期には年間70万トンもの石炭を生産していました。しかし、経済構造の変化やエネルギー政策の転換に伴い、石炭産業は衰退し、市の人口減少の大きな要因となりました。このため、歌志内市は観光業や農業への転換を図っているのですが、観光開発は厳しい財政状況のなかでの挑戦でもあります。自然と歴史を大切にしながら新しい観光名所創出や地域振興を目指して活動しています。

歌志内市の市役所はどのように配置されていますか?

歌志内市役所は、市域の東寄りに設置されています。市役所は地域の行政機関の中核となる存在であり、市民の生活全般に関するサービスを提供する役割を果たしています。歌志内市は少子高齢化や人口減少などに直面しており、地域づくりや経済振興についても、新たな連携や共同化を進めることが重要視されています。市長のリーダーシップを中心に、住民と共に地域を盛り上げていく取り組みが求められています。