福岡県京都郡苅田町:自動車産業と豊かな自然が調和する活気あふれる町

福岡県北東部、周防灘に面した苅田町は、臨海工業地帯と豊かな自然が調和する魅力的な町です。日産自動車九州など多くの工場が立地し、自動車産業の中心地として発展を遂げてきました。一方で、カルスト台地の平尾台や広谷湿原など、貴重な自然環境も数多く残されています。

概要

苅田町は、北九州都市圏に属し、隣接する北九州市、行橋市と日常生活圏を共有しています。北九州市の10%通勤圏であり、多くの住民が北九州市や行橋市に通勤しています。昼夜人口比は113.3%(2000年)と100を上回り、活気のある町です。

日産自動車九州やトヨタ自動車九州など、多くの工場が立地していることから、財政力も非常に強く、1975年度以降は地方交付税不交付団体となっています。これは福岡県内では唯一の事例であり、自治体運営の安定性を物語っています。

自動車産業以外にも、セメント、電力などの臨海工業が発展しており、人口規模に対して工業の集積が厚いことが特徴です。特に、1人あたり製造品出荷額は全国第3位(2003年度)を記録しており、日本の製造業を支える重要な拠点となっています。

さらに、東九州自動車道苅田北九州空港インターチェンジ、国際貿易港苅田港、北九州空港と、陸海空の複合的な物流インフラも整備されています。これらのインフラは、苅田町が国際的なビジネス拠点としての役割を果たす上で重要な役割を果たしています。

近年では、自動車産業の集積がさらに加速しており、1975年に日産自動車九州工場、2005年にはトヨタ自動車九州苅田工場が操業を開始しました。これらの工場の進出により、苅田町は北部九州の自動車産業を担う地域として発展を続けています。

地理

苅田町の中心部には、JR日豊本線と国道10号が南北に走り、その周囲に中心市街地が広がっています。東側は周防灘に面しており、苅田港、北九州空港、広大な臨海工業地帯が広がっています。西側は、カルスト台地で知られる平尾台に連なり、鍾乳洞の青龍窟や貴重な草花が咲く広谷湿原などの貴重な自然が残されています。地下には、石灰石、硅石、花崗岩などの資源も豊富に存在します。行橋市と隣接する南西部は、緑豊かな田園地帯が広がっています。

地形

  • 周防灘(瀬戸内海): 苅田町東部に位置し、豊かな漁場となっています。
  • 京都峠: 苅田町と行橋市を隔てる峠で、古くから交通の要衝として重要な役割を果たしてきました。
  • 平尾台: 苅田町西部の広大なカルスト台地。石灰岩の岩脈が特徴的で、貴重な自然環境が残されています。

隣接している自治体・行政区

  • 北九州市: 小倉南区、門司区
  • 行橋市

主要都市までの距離

  • 北九州市: 約20km
  • 行橋市: 約7km
  • 田川市: 約25km
  • 豊前市: 約28km
  • 中津市: 約35km

歴史

苅田町は、古くから人々が生活してきた地域であり、歴史的な遺産も多く残されています。

行政区域の変遷

  • 1889年4月1日: 町村制度発足により、京都郡苅田村、小波瀬村、白川村が発足。
  • 1924年8月1日: 苅田村が町制施行。苅田町となる。
  • 1955年1月1日: 苅田町、小波瀬村、白川村が合併し、現在の苅田町が発足。

市町村合併

苅田町は、2003年に発足した京築1市5町合併協議会など、周辺自治体との合併協議には参加していません。

歴代町長

氏名 就任年月日 退任年月日 回数
中山俊彦 1977年
尾形智矩 1977年 1986年 3期
沖勝治 1986年 1998年 3期
伊塚工 1998年7月20日 2005年10月5日 2期
吉廣啓子 2005年11月13日 2017年11月12日 3期
遠田孝一 2017年11月13日 現在 2期目

行政

町長

  • 遠田孝一(2期目)
  • 任期: 2025年11月12日

町議会

  • 定数: 16人
  • 任期: 2027年10月14日
  • 定例会は3・6・9・12月の年4回行われる。

公共施設

苅田町には、住民の福祉、文化、教育、スポーツなど、様々なニーズに対応する公共施設が整備されています。

  • 児童・高齢者・障害者福祉施設
    • パンジープラザ(苅田町総合保健福祉センター)
    • 総合福祉会館
  • 文化・社会教育施設
    • 苅田町立図書館 (1992年に日本図書館協会建築賞、1993年に福岡県建築住宅文化賞大賞と公共建築賞を受賞)
    • 三原文化会館
    • 歴史資料館
    • 中央公民館
    • 北公民館
    • 小波瀬コミュニティセンター
    • 西部公民館
  • スポーツ施設
    • 総合体育館
    • 臨海総合グラウンド
    • 向山公園内施設
    • 大熊公園内施設
    • 町民プール
  • 消防
    • 苅田町消防本部
  • 警察
    • 福岡県警察行橋警察署
      • 苅田交番
      • 白川駐在所

県の施設

  • 県土整備部苅田港務所
  • 企業局苅田事務所

国の施設

  • 門司税関苅田出張所
  • 九州地方整備局苅田港湾事務所
  • 海上保安庁苅田海上保安署
  • 海上保安庁北九州航空基地

財政力

苅田町は、地方交付税の減少などで財政難に喘ぐ自治体が多い中、安定した財政運営を行っています。2017年度も不交付団体となっており、高い財政力を持つ自治体として知られています。

ごみ処理

苅田町は、平成9年1月に町が三菱マテリアルなどと共同出資して第三セクター苅田エコプラント株式会社を設立しました。生ごみなどの一般廃棄物から固形燃料(RDF)を製造し、三菱マテリアルのセメント工場で石炭の補助燃料として利用することで、サーマルリサイクルを行っています。ごみ袋は無料で提供されています。

県議会

  • 福岡県議会京都郡選挙区(定数:1人)

国会

  • 衆議院議員総選挙の小選挙区は福岡県第11区。

地域

人口

苅田町の人口は、近年増加傾向にあります。2020年(令和2年)の推計人口は37,684人です。

人口
1970年 26,058人
1975年 27,771人
1980年 31,155人
1985年 32,341人
1990年 33,732人
1995年 35,072人
2000年 35,604人
2005年 34,387人
2010年 36,005人
2015年 34,963人
2020年 37,684人

地名

苅田町は、歴史的な変遷を経て現在の町域が形成されました。以下は、主な地名とその由来です。

  • 旧苅田村: 集、雨窪、尾倉、苅田、浜町、馬場、提、松山、光国、南原、磯浜町、京町、幸町、神田町、殿川町、富久町、松原町、若久町、尾倉
  • 旧小波瀬村: 新津、岡崎、上片島、下新津、下片島、二崎、与原、桜ケ丘、新津、小波瀬、与原
  • 旧白川村: 稲光、葛川、黒添、鋤崎、谷、法正寺、山口
  • 埋立地: 長浜町、鳥越町、新浜町、港町、空港南町、新松山

教育・保育

苅田町では、「未来を拓く子どもを育てる教育の町 苅田」のスローガンを掲げ、独自の教育政策を展開しています。

大学

  • 西日本工業大学

専門学校

  • 北九州保育福祉専門学校
  • 北九州リハビリテーション学院

高等学校

  • 福岡県立苅田工業高等学校

中学校

町立

  • 苅田中学校
  • 新津中学校

小学校

町立

  • 苅田小学校
  • 南原小学校
  • 与原小学校
  • 馬場小学校
  • 白川小学校
  • 片島小学校

幼稚園

私立

  • 苅田みどり幼稚園
  • 附属苅田幼稚園
  • 苅田第一幼稚園
  • すみれ幼稚園(閉園)
  • 尾倉すみれ幼稚園

保育園

私立

  • 善立寺保育園
  • 青い鳥保育園
  • 若久青い鳥保育園
  • 与原保育園
  • 白川保育園
  • 第一ひまわり保育園
  • 第二ひまわり保育園

経済・産業

苅田町は、自動車産業、セメント産業、電力産業などを中心とした工業都市として発展してきました。

工業

  • 自動車産業: 日産自動車九州、トヨタ自動車九州苅田工場など、多くの自動車関連企業が立地しています。
  • セメント産業: 豊国セメント(現三菱マテリアル)九州工場、麻生セメント苅田工場、宇部興産苅田セメント工場など、多くのセメント工場が立地しています。
  • 電力産業: 九州電力苅田火力発電所など、電力会社も進出しています。

苅田町に工場を置く主要企業

  • 日産自動車九州
  • 日産車体九州
  • トヨタ自動車九州苅田工場
  • 九州電力苅田火力発電所
  • 三菱マテリアル九州工場
  • 九州テクノメタル(旧・日立金属九州工場)
  • 麻生セメント苅田工場
  • 宇部興産苅田セメント工場

苅田町内の工業団地

  • 苅田臨海1号地
  • 苅田臨海2号地
  • 小波瀬工業団地
  • 松山工業団地
  • 苅田臨空産業団地
  • 白石工業団地
  • 新松山工業団地

物流

  • 佐川急便北九州中継センター: 九州発着荷物の集約拠点であるハブセンター

商業

苅田町は、郊外型商業の集積地である北九州市小倉南区や行橋市に隣接しており、国道10号を中心としたロードサイド店舗が発展しています。

  • ルミエール苅田店
  • サンリブエル苅田
  • ナフコ苅田店
  • オートウェイ
  • トライアル苅田店

金融機関

  • 福岡銀行
  • 西日本シティ銀行
  • 北九州銀行
  • 九州労働金庫
  • 福岡ひびき信用金庫

特産品

  • 豊前海一粒かき: 苅田町周辺の豊前海で養殖された、濃厚な味わいが特徴のかきです。
  • 松会漬け、松会みそ: 苅田町で古くから伝わる伝統的な漬物と味噌です。

交通

苅田町は、陸海空の交通網が整備されており、アクセスが便利です。

空港

  • 北九州空港: 国内線、国際線ともに就航しており、東京、大阪、名古屋、福岡など、主要都市へのアクセスが容易です。

鉄道

  • 九州旅客鉄道(JR九州)
    • 日豊本線: 苅田駅 – 小波瀬西工大前駅

道路

  • 高速道路
    • E10 東九州自動車道: 苅田北九州空港インターチェンジ
  • 一般国道
    • 国道10号
    • 国道201号
  • 主要地方道
    • 福岡県道25号門司行橋線
    • 福岡県道39号苅田港線
    • 福岡県道64号苅田採銅所線

バス

  • 西鉄バス(西鉄バス北九州): 国道10号線、国道201号線上にバス路線があります。北九州市小倉南区、行橋市を結ぶ一般路線バスと、福岡市と行橋市を結ぶ高速バスを運行しています。
  • 太陽交通: 行橋市と町南西部の白川地区を結ぶ一般路線バスを運行しています。
  • 苅田町コミュニティバス「ゆめシャトル」: 苅田駅、町役場、苅田町総合保健福祉センター「パンジープラザ」と町内各地を結ぶコミュニティバスです。

港湾

  • 苅田港: 1944年に開港した、国際貿易港です。自動車、セメント、鉄鋼などの輸出入拠点となっています。

名所・旧跡、観光スポット、祭事・催事

苅田町には、歴史、自然、文化など、様々な魅力が詰まっています。

文化財

  • 平尾台: カルスト台地の広大な自然を満喫できるスポットです。
  • 青龍窟: 国の天然記念物に指定されている鍾乳洞です。全長は約3kmあり、神秘的な空間が広がっています。
  • 広谷湿原: 町指定天然記念物に指定されている湿原です。モウセンゴケ、サギソウなど、貴重な植物が生息しています。
  • 石塚山古墳: 国の史跡に指定されている古墳です。邪馬台国伝説にまつわる三角縁神獣鏡が出土しました。
  • 御所山古墳: 国の史跡に指定されている古墳です。
  • 松山城: 町指定史跡に指定されている城跡です。

百選

  • 農村景観百選: 等覚寺の棚田 (農林水産省選定)
  • 福岡県自然百選: 内尾のアラカシ林 (福岡県選定)

観光スポット

  • 日産自動車九州: 工場見学ができます。車体、塗装、組立の各工程を専用通路から見学できます。
  • 日立金属鋳物記念館: 日産自動車の創業者鮎川義介の遺品、史料などを展示しています。
  • 白石海岸: 海水浴場、潮干狩りが楽しめます。
  • 高城山: 標高419mの山で、ハイキングコースがあります。
  • 松山城址: ハイキングコースがあります。
  • 相円寺: 木造薬師如来坐像が安置されています。

伝統行事・祭り

  • 白庭神社福焼き: 2月12日
  • 等覚寺の松会: 4月第3日曜日 (国の重要無形民俗文化財)
  • かんだ港まつり: 5月第3土曜日
  • 町民盆踊り大会: 8月28日
  • 苅田山笠(宇原神社神幸祭): 10月第1日曜日 (福岡県指定無形民俗文化財)

スポーツ

  • 日産自動車九州硬式野球部: 社会人野球チームです。
  • 苅田ビクトリーズ: 社会人野球のクラブチームです。

著名な出身者

  • 石田比呂志: 歌人
  • 大久保嘉人: サッカー選手
  • 潮田玲子: バドミントン選手 (町立新津中学校出身)
  • 星野秀樹: 映画プロデューサー
  • 木下直哉: 実業家、映画プロデューサー
  • 竹井奈美: 競艇選手

脚注

  1. “レースも趣味も めちゃアクティブ!/竹井奈美”. 日刊スポーツ. (2015年6月9日). https://www.nikkansports.com/public_race/boat/beautiful/news/1489700.html 2017年12月12日閲覧。

外部リンク

  • 公式ウェブサイト
  • 苅田町 (@kandatown) – LINE公式アカウント
  • 苅田町 (苅田町役場-560460383981822) – Facebook
  • 苅田港湾事務所

苅田町は、自動車産業や物流拠点としての発展と、豊かな自然環境の保護という2つの側面を併せ持つ魅力的な町です。歴史、文化、自然、産業など、様々な魅力に触れられる苅田町にぜひ足を運んでみてください。

苅田町についてのクイズ

苅田町の産業の中心となっているのはどの産業ですか?

苅田町は、自動車産業が大きな役割を果たしています。日産自動車九州やトヨタ自動車九州などの工場が立地しており、地域経済に大きな影響を与えています。自動車関連の企業が集積していることにより、雇用機会が増え、自動車産業は町にとって重要な収入源となっています。さらに、自動車産業は地域の財政力を強化し、地方交付税不交付団体になるなど、安定した財政運営を支えている要因ともなっています。このため、苅田町は日本の自動車産業の重要な拠点の一つとして認識されています。

苅田町にある国際貿易港は何という名前ですか?

苅田町に位置する苅田港は、1944年に開港した国際貿易港です。自動車やセメント、鉄鋼などの輸出入拠点として重要な役割を果たしています。国際貿易港としての機能を有する苅田港は、地元経済や産業の発展に寄与しており、物流拠点としても注目されています。周防灘に面しており、港湾の施設やインフラの整備が進められています。そのため、苅田港は多くの貿易業者や物流企業にとって重要な拠点であり、地域の発展に貢献しています。

苅田町の中心部を通る主要な鉄道路線は何ですか?

苅田町の中心部を通る主要な鉄道路線は日豊本線です。この路線は、九州の南北をつなぐ重要な交通路であり、苅田駅を含む駅が設置されています。日豊本線は、地域住民の通勤や移動に利用されているだけでなく、観光客にとっても便利な交通手段です。苅田町の交通網整備に寄与し、地域経済の活性化に寄与しています。また、この鉄道路線は、近隣の北九州市や行橋市へのアクセスを容易にし、住民の日常生活を支える役割も果たしています。

苅田町の教育機関の中で、大学の名前は何ですか?

苅田町にある大学は西日本工業大学です。この大学は、工業系の分野での教育に力を入れており、地元の産業とも密接な関係があります。西日本工業大学は、地域社会と連携しながら技術者や専門職業人の育成を行っており、卒業生は地域の企業に就職することが多いです。そのため、大学は苅田町の経済や産業の発展に寄与する重要な教育機関となっています。また、大学の存在は町にとっての文化的な側面や若者の活力にも貢献するなど、多面的な影響を持っています。

苅田町の人口は2020年時点で約何人でしたか?

2020年(令和2年)の苅田町の推計人口は37,684人です。これは、過去数十年にわたり、町の人口は増減を繰り返しながらも、近年は増加傾向にあることを示しています。この人口の変化は、町の発展や経済状況、産業の集積によって大きく影響を受けています。人口増加は、地域活性化に寄与し、町の未来にとっても重要な要素です。さらに、苅田町の安定した財政運営や教育環境の整備も、住民にとって魅力的な要因となり、今後の人口動態に良い影響を与えることが期待されています。