秋田県小坂町: 鉱山の歴史と自然が織りなす魅力的な町

秋田県の北東部に位置する小坂町は、豊かな自然と歴史、そして活気あふれる産業が調和する魅力的な町です。かつては小坂鉱山など鉱産資源に恵まれ、江戸時代には津軽街道が通る盛岡藩の領地として栄えました。鉱山閉山後も、その技術を活かしたリサイクル産業が発展し、現代においても重要な役割を担っています。

概要

小坂町は、秋田県の北東部に位置し、青森県と境を接しています。奥羽山脈の西側、鹿角盆地の北部に位置し、町域の北東部には十和田湖が広がっています。2008年までは十和田湖との境界が確定していませんでしたが、同年9月に十和田市との境界が覚え書きによって決定し、官報に告示されたことで、十和田湖の西側が正式に小坂町の町域となりました。

19世紀初頭、小坂鉱山が発見されたことをきっかけに、金・銀の採掘を中心とした鉱山産業が発展し、町は大きく発展しました。明治時代には銅・亜鉛の採掘も始まり、小坂鉱山事務所など数多くの近代建築が建設され、小坂町はさらに活気をおびました。特に銅は、別子銅山や足尾銅山と並び、三大銅山と称されるほど豊富な産出を誇りました。

しかし、第二次世界大戦後は鉱山資源が枯渇し、一時は過疎化が進行しました。近年では、明治期の近代建築や十和田湖の観光資源を生かした町づくりが模索されています。また、自動車廃触媒や金属スクラップを製錬して貴金属やレアメタルなどを回収するリサイクル産業も発展しており、小坂町は日本の代表的なリサイクル拠点として注目を集めています。

町のシンボル

小坂町には、町の象徴となるシンボルがいくつかあります。

町の木: ベニヤマザクラ

ベニヤマザクラは、1967年(昭和42年)に小坂町の町の木に制定されました。春の芽出しの頃は、淡いピンク色の花が咲き乱れ、町を華やかに彩ります。

町の花: アカシア

アカシアは、2005年(平成17年)に新町制50周年を記念して制定されました。ただし、町内に植えられているのは、ニセアカシアです。ニセアカシアは、かつて鉱山開発によって荒廃した土地を緑化するために植えられました。白い花が咲き乱れる風景は、小坂町のシンボルとして親しまれています。

町の魚: ヒメマス

ヒメマスは、2005年(平成17年)に新町制施行50周年を記念して制定されました。十和田湖で養殖されたヒメマスは、小坂町の豊かな自然と人々の努力の象徴として、愛されています。

地理

小坂町は、奥羽山脈の西側に位置し、山々に囲まれた自然豊かな町です。

  • 長引山: 標高1,337.8m。小坂町の最高峰で、町の中央部から東部にかけて連なる山塊の最高峰です。
  • 白地山: 標高1,010.2m。十和田湖の南西に位置し、雄大な十和田湖の景観を望むことができます。

河川

  • 小坂川: 長引山から流れ出し、町の中心部を流れ、十和田湖に注ぎ込みます。
  • 荒川: 十和田湖に流れ込む河川で、小坂町と青森県平川市の境界をなしています。

湖沼

  • 十和田湖: 青森県と秋田県の県境に位置する、日本最大のカルデラ湖です。小坂町からは、雄大な十和田湖の景観を楽しむことができます。

隣接している自治体

  • 秋田県
    • 大館市
    • 鹿角市
  • 青森県
    • 平川市
    • 十和田市

歴史

小坂町の歴史は、鉱山開発の歴史と深く関わっています。

  • 1590年(天正18年): 豊臣秀吉の朱印状により、鹿角郡は盛岡藩(南部領)と確定します。
  • 1869年(明治元年): 戊辰戦争後の盛岡藩への処分により、弘前藩取締地となります。その後、北奥県、九戸県、三戸県、江刺県を経て、1871年(明治4年)に秋田県の管轄となります。
  • 1884年(明治17年): 藤田組(後の同和鉱業、現・DOWAホールディングス)が政府から小坂鉱山の払い下げを受け、創業します。
  • 1889年(明治22年): 町村制施行に伴い、鹿角郡小坂村と七滝村が発足します。
  • 1902年(明治35年): 鉱山の煙害が深刻化し、後に煙害対策としてニセアカシア(アカシア)の植林が行われます。
  • 1908年(明治41年): 藤田組が大館駅から小坂間に小坂鉄道専用鉄道を敷設します。
  • 1909年(明治42年): 小坂鉄道が藤田組から受け継いだ専用鉄道を小坂線として、大館駅-小坂駅間の旅客営業を開始します。
  • 1914年(大正3年): 小坂村が町制施行し、小坂町となります。
  • 1938年(昭和13年): 小坂小学校の体育館の屋根が積雪の重みで倒壊し、児童8人が死亡、51人が重軽傷を負います。
  • 1955年(昭和30年): 小坂町と七滝村が合併し、現在の小坂町が発足します。
  • 1956年(昭和31年): 小坂町の山根、上向の一部が十和田町に編入されます。
  • 1990年(平成2年): 東北自動車道小坂ICが供用開始されます。
  • 1994年(平成6年): 小坂線が旅客営業を廃止し、貨物専業の鉄道となり、古館駅が廃止されます。
  • 2008年(平成20年): 青森県十和田市との境界のうち、十和田湖の境界が確定します。
  • 2009年(平成21年): 小坂線が全線廃止となり、町内から鉄道が姿を消します。
  • 2013年(平成25年): 秋田自動車道小坂北ICが供用開始されます。
  • 2014年(平成26年): 小坂鉄道跡が小坂製錬など3社より無償譲渡され、小坂駅構内敷地を賃貸契約します。
  • 2014年(平成26年): 小坂駅跡を再整備し、小坂鉄道レールパークが開設されます。
  • 2014年(平成26年): 小坂町立小坂中学校の旧校舎を改修して再利用し、町役場が小坂字上谷地に移転します。

地域

人口

小坂町の人口は、近年減少傾向にあります。

人口
1970年 13,768人
1975年 11,878人
1980年 10,526人
1985年 9,728人
1990年 8,035人
1995年 7,703人
2000年 7,171人
2005年 6,824人
2010年 6,054人
2015年 5,339人
2020年 4,780人

教育

小坂町には、小学校、中学校、高等学校があり、子どもたちの教育環境が整っています。

高等学校

  • 秋田県立鹿角高等学校(2024年4月に秋田県立小坂高等学校と統合)

中学校

  • 小坂町立小坂中学校

小学校

  • 小坂町立小坂小学校

こども園等

  • 社会福祉法人こばと会小坂マリア園

産業

小坂町は、鉱山関連産業、リサイクル産業、農業などが盛んです。

電気機器

  • 十和田オーディオ(ソニー製品製造)

非鉄金属事業

  • DOWAホールディングスグループ
    • DOWAメタルマイン関連
      • 小坂製錬
    • DOWAエコシステム関連
      • エコシステムリサイクリング・北日本工場(貴金属・非鉄金属のリサイクル)
      • エコシステム小坂(産業廃棄物・自動車シュレッダーダスト・資源リサイクルなど)
      • オートリサイクル秋田(自動車の回収・解体・リサイクル)
      • グリーンフィル小坂(廃棄物の最終処理)
  • 日本ピージーエム

繊維製品

  • エドウイン小坂ジーンズ

郵便局

  • 小坂郵便局
  • 七滝郵便局

交通

小坂町は、東北自動車道、国道282号、秋田県道2号大館十和田湖線などが通っており、交通アクセスが便利です。

鉄道

町内を鉄道路線は通っていません。鉄道を利用する場合は、JR東日本花輪線十和田南駅が最寄りの駅となります。

廃止路線

かつては小坂製錬小坂線が通っていましたが、2009年(平成21年)に廃線となりました。

バス

  • 路線バス
    • 秋北バス
      • 大館線
      • 花輪線
    • 小坂町営バス
      • 野口線
      • 上向七滝線
  • 高速バス
    • あすなろ号 小坂インター(青森 – 盛岡線)

道路

  • 高速自動車国道
    • E4 東北自動車道
    • E7 秋田自動車道
  • 一般国道
    • 国道103号
    • 国道454号
    • 国道282号
  • 主要地方道
    • 秋田県道2号大館十和田湖線

空港

  • 大館能代空港
  • 青森空港

名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事

小坂町には、歴史的な建造物や自然豊かな観光スポット、そして地域の伝統文化を体験できる祭事や催事など、魅力的な観光資源が数多く存在します。

  • 小坂鉄道レールパーク: 小坂鉄道小坂駅跡を利用したテーマパークで、かつての小坂線の車両やレールなどが展示されています。
  • 小坂鉱山事務所: 1992年(平成4年)に銀山町地区から現在の永楽町に移築された、明治時代に建てられた歴史的な建物です。
  • 康楽館: 現存する日本で一番古い木造芝居小屋です。
  • 十和田湖: 雄大な自然を満喫できる観光スポットです。
  • 小坂七夕祭: 毎年8月7日に開催される、小坂町の夏の風物詩です。
  • アカシアまつり: 5月下旬に開催される、ニセアカシアの花をテーマにした祭りです。
  • ワイン祭り: 9月上旬に開催される、地元産ワインを楽しむ祭りです。
  • 十和田湖国境祭: 10月上旬に開催される、十和田湖を舞台にした祭りです。
  • 小坂エコタウンセンター: リサイクル産業に関する展示や体験ができる施設です。
  • 七滝: 小坂川に流れ落ちる美しい滝です。
  • 明治百年通り: かおり風景100選に選定され、国土交通省手づくり郷土賞を受賞した、歴史と自然が調和した街並みです。

出身有名人

小坂町には、様々な分野で活躍する著名人が多くいます。

  • 福田豊四郎: 画家。小坂町の町章のデザインを手がけました。
  • 大間ジロー: ミュージシャン。元オフコースのメンバーです。
  • 小坂川健三郎: 大相撲力士。1950年代前半に活躍しました。
  • 佐々木喜久治: 元秋田県知事、元消防庁長官。
  • 佐々木吉蔵: 陸上競技選手。1936年ベルリンオリンピック男子100メートルに出場しました。
  • 川口博: 元衆議院議員、元小坂町長。
  • 長井辰男: 長井医科学研究所所長、北里大学名誉教授、医学博士。
  • 杉澤龍: プロ野球選手。オリックス・バファローズ所属。

その他

  • 十和田湖地区でのテレビ放送は、在青テレビ局が視聴されています。

脚注

  1. 小坂町プロフィール
  2. “かつての鉱山跡地で金や銀を生産 原料は廃棄の電子基板”. 朝日新聞2022年3月16日. 2024年2月28日閲覧。
  3. “秋田県北部エコタウンからのお知らせ(ハード事業)「リサイクル精錬拠点施設」”. 「美の国あきたネット」2006年9月7日. 2024年2月28日閲覧。
  4. “小坂町の郷土史(平成元年〜平成20年)”. 十和田湖における青森県十和田市及び秋田県小坂町の境界決定に係る覚書. 小坂町. 2014年3月26日閲覧。
  5. ^ a b  『県の境界にわたる市町の境界の確定 (平成20年総務省告示第721号)』。ウィキソースより閲覧。
  6. 「アカシアは郷土の花?」『森林の環境100不思議』p176 日本林業技術協会 1992年2月15日刊 全国書誌番号:99066256
  7. “『町村変更』官報. 1914年05月12日 – 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2022年2月28日閲覧。
  8. 死亡八人、重軽傷五十一人『秋田魁新聞』(昭和13年1月28日)『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p6 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  9. “小坂鉄道遺産 無償譲渡を正式契約 DOWA3社 レールパークの基盤整う”. 北鹿新聞. (2014年3月25日)
  10. 「108年の歩み胸に 「花輪」「十和田」と来春統合の小坂高で記念式典」『秋田魁新報』2023年10月29日。オリジナルの2023年12月14日時点におけるアーカイブ。2024年3月4日閲覧。
  11. 日本放送協会 (2024年4月8日). “鹿角市と小坂町の3つの高校が統合 鹿角高校で入学式”. NHK NEWS WEB. 2024年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月7日閲覧。
  12. 「4月開校「鹿角高校」の大講堂などお披露目 木材ふんだんに、見学会開催」『秋田魁新報』2024年1月22日。オリジナルの2024年1月22日時点におけるアーカイブ。2024年6月7日閲覧。
  13. 町内の保育施設一覧(保育所、幼稚園等への入所申込みについて) – 小坂町

外部リンク

  • 小坂町役場
  • 秋田県小坂町 (@kosakamachi) – X(旧Twitter)
  • 小坂町 (kosakamachiyakuba) – Facebook
  • 小坂町に関連する地理データ – オープンストリートマップ
  • 地図 – Google マップ

小坂町についてのクイズ

小坂町はどの県の北東部に位置していますか?

小坂町は秋田県の北東部に位置しています。青森県と境を接し、奥羽山脈の西側、鹿角盆地の北部に広がっています。歴史的には、江戸時代に盛岡藩の領地として発展し、19世紀には小坂鉱山が発見されることでさらに繁栄しました。その後、鉱山が閉山した後もリサイクル産業が発展し、今日に至るまで町は多様な産業を抱えています。地理的には、周囲を山に囲まれた自然豊かな環境が特徴であり、観光地としても有名な十和田湖が近くに位置しています。

小坂町の町の木は何ですか?

小坂町の町の木はベニヤマザクラです。1967年(昭和42年)に町の木として制定され、春には淡いピンク色の花を咲かせ、町を華やかに彩ります。この桜は、特に観光客にも親しまれている象徴的な存在です。小坂町の豊かな自然を体現する存在であり、多くの地域住民や訪れる人々にとって、春の風物詩として愛されています。町内では、ベニヤマザクラを利用したイベントや観光スポットが多数存在し、地域の文化を育む重要な役割を果たしています。

小坂町の町の花は何ですか?

小坂町の町の花はニセアカシアです。2005年(平成17年)に新町制50周年を記念して制定されました。ニセアカシアは、かつて鉱山開発によって荒廃した土地を緑化するために植えられ、白い花が咲き乱れる風景は町の美しい象徴となっています。この花は、地域の環境再生や自然回復のシンボルともなり、町の魅力を引き出す重要な要素となっています。特に春から初夏にかけて訪れる人々には、ニセアカシアの美しい花が印象に残ります。

小坂町の山の中で、最高峰はどれですか?

小坂町の山の中で最高峰が長引山です。標高は1,337.8メートルで、小坂町の中央部から東部にかけて連なる山塊の最高峰となっています。長引山は登山スポットとして人気があり、美しい自然環境とともに、四季折々の風景を楽しむことができます。特に秋には紅葉が美しく、多くのハイカーや観光客が訪れることで知られています。自然が豊かな小坂町の一部として、長引山は地域の自然美を体現する重要な存在です。

小坂町の環境において、リサイクル産業が特に発展しているのはどのような分野ですか?

小坂町のリサイクル産業は、自動車廃棄物のリサイクルに特に注力しています。自動車の回収や解体、リサイクルを行う企業が存在し、環境保全に取り組む姿勢が町の産業の重要な側面となっています。また、这些リサイクル事業は地域経済に貢献し、さらなる雇用創出にもつながっています。小坂町では、貴金属やレアメタルの回収も行っており、かつての鉱山町の技術を生かした新たな産業が発展しています。環境循環型社会の実現に向けた努力が行われており、地域の持続可能な発展を支える重要な役割を果たしています。

小坂町にはどのような歴史的な建物がありますか?

小坂町には康楽館という歴史的な建物があります。康楽館は、現存する日本で最も古い木造芝居小屋として知られ、地域の文化と歴史を感じさせる貴重な建物です。この建物は明治時代に建設され、現在も地域の観光名所として多くの人に親しまれています。また、康楽館では地元の伝統芸能や演劇上演が行われ、地域の文化の重要な一部として機能しています。観光客はこのような歴史的な背景を持つ場所で、地域の文化や芸能に触れることができ、とても意義深い体験をすることができます。

小坂町で毎年開催される夏の風物詩は何ですか?

小坂町で毎年8月7日に開催される小坂七夕祭は、町の夏の風物詩として広く知られています。この祭りは、地域住民が共同で作り上げるイベントで、色とりどりの七夕飾りが町を彩り、多くの観光客を呼び寄せています。七夕の伝説にちなんだイベントや、地元の特産品を使った屋台など、地域の文化を楽しむ要素が盛りだくさんです。地域住民の協力により、世代を超えて受け継がれるこの祭りは、地域の絆を深め、観光の振興にも寄与しています。