北海道余市郡余市町:ワインとニシンが香る、豊かな歴史と自然に抱かれた町

小樽市から車で約30分、ニセコ町から車で約70分の距離にある余市町は、北海道後志総合振興局に位置する魅力的な町です。高速道路の開通により札幌市からも60分圏域となり、アクセス抜群の立地を誇っています。

概要:ワインと果樹、そしてニシンの歴史が織りなす風景

余市町は、北海道内一の生産量を誇るワイン醸造用のブドウ畑(ヴィンヤード)を持つ「北のフルーツ王国よいちワイン特区」として知られています。また、日本国内で初めて民間栽培によって誕生したリンゴの産地としても有名で、ナシ、ブドウ、サクランボなどの果樹園が観光農園として多くの人に親しまれています。

豊かな自然に恵まれた余市町は、かつてニシン漁で栄えた場所でもありました。ニシン漁の際に唄われた民謡「ソーラン節」は、余市町が発祥の地とされ、町の歴史を物語っています。町内には、当時の施設を復元した旧余市福原漁場や、現存する唯一の運上家として復元した旧下ヨイチ運上家など、歴史的建造物が数多く残っています。

地理:積丹半島の基部に広がる、変化に富んだ地形

余市町は、北海道北西部の積丹半島基部に位置し、日本海に面しています。東西約20.3km、南北約42kmにわたる広大な土地には、余市川、ヌッチ川、登川、畚部川(フゴッペ川)などの河川が流れ、その流域に市街地が形成されています。

余市川は、余市岳を源として日本海に注ぎ、流域ではリンゴ、ナシ、ブドウなどの果樹園や水田、蔬菜の畑が並ぶ農業地帯が広がっています。また、北限のアユ生息地としても知られています。海岸線は17kmに及び、一部はニセコ積丹小樽海岸国定公園に指定されています。

自然:雄大な山岳から豊かな河川、そして変化に富んだ海岸線

余市町は、雄大な山岳、豊かな河川、変化に富んだ海岸線など、多様な自然環境に恵まれています。

  • 山岳: 毛無山 (650.4m)、大登山 (565.0m)、小登山 (514.7m)、元服山 (477.3m)、モイレ山 (65.4m)、天狗岳 (872.3m)、湯内岳 (654m)
  • 河川: 畚部川、登川、余市川、ヌッチ川、梅川、出足平川、湯内川
  • : 畚部岬、モイレ岬、シリパ岬、オトドマリ岬、烏帽子岬、ワッカケ岬、滝の澗岬、蛸穴の岬
  • ダム: 余市ダム

気候:温暖な気候が、果樹栽培に最適

日本海を北上する対馬海流(暖流)の影響を受け、北海道の中では比較的温暖な気候となっています。年間平均気温は8℃程で、日較差が大きいのが特徴です。そのため、果物の栽培に適した気候条件となっており、良質なリンゴやブドウなどが栽培されています。

歴史:ニシン漁で栄え、ワインとリンゴの町へ

余市町は、縄文時代早期以降から各年代の遺跡が発見されているなど、古くから人が住んでいた場所です。近世以降は、北海道内有数の交易場所、ニシンの千石場所として栄えました。しかし、ニシンは1954年の漁を最後に余市湾への回遊が途絶え、「幻の魚」となってしまいました。

ニシン漁の衰退後、余市町はリンゴ栽培、そしてワイン醸造へと転換を遂げ、新たな発展を遂げました。

主要な歴史年表

  • 1599年 (慶長4年):松前慶広が余市川右岸を「上ヨイチ場所」、左岸を「下ヨイチ場所」とする。
  • 1806年 (文化3年):柏谷喜兵衛がヨイチ場所を請負う。
  • 1820年 (文政3年):林長左衛門がヨイチ場所を請負い、漁場を拓く。
  • 1856年 (安政3年):神威岬以北への婦女子の通行禁止を解く。
  • 1857年 (安政4年):小樽とを結ぶ道路が開通。
  • 1869年 (明治2年):場所請負制廃止。開拓使の余市詰役員派遣(浜中出張所)。
  • 1871年 (明治4年):旧会津藩士の入植始まる。
  • 1875年 (明治8年):開拓使がアメリカからリンゴなどの苗木を農家に配布。
  • 1889年 (明治22年):公立余市病院開院。
  • 1900年 (明治33年):余市町が発足。
  • 1902年 (明治35年):北海道鉄道により余市駅が設置される。
  • 1912年 (大正元年):東北帝国大学農学部農科大学附属余市果樹園(現在の北海道大学余市果樹園)設置。
  • 1929年 (昭和4年):北海道水産試験場本場(現在の中央水産試験場)完成。
  • 1932年 (昭和7年):大火災発生。
  • 1934年 (昭和9年):大日本果汁(現在のニッカウヰスキー)創設。
  • 1963年 (昭和38年):海岸線が「ニセコ積丹小樽海岸国定公園」となる。
  • 1969年 (昭和44年):余市水産博物館開館。
  • 1971年 (昭和46年):役場新庁舎完成。海上自衛隊余市防備隊開隊。
  • 1988年 (昭和63年):ストラスケルビン(現・イースト・ダンバートンシャー)と「姉妹都市」提携。
  • 2010年 (平成22年):北海道余市紅志高等学校開校。
  • 2011年 (平成23年):「構造改革特別区域法」による「北のフルーツ王国よいちワイン特区」認定。
  • 2018年 (平成30年):後志自動車道余市ICが供用開始。

行政:町民の生活を支える、行政組織

余市町は、町長と町議会によって運営されています。町長は、町民の代表として、町政全般を統括する役割を担い、町議会は、町長が提出する議案を審議する役割を担っています。

町長と町議会:町政を担う二人

  • 町長: 齊藤啓輔(2022年9月5日就任、2期目)
  • 町議会: 定数18名

町の組織

  • 常任委員会: 総務文教委員会、民生環境委員会、産業建設委員会
  • 特別委員会: 並行在来線の存続等に関する調査特別委員会
  • 議会運営委員会

官公署:町民生活を支える、様々な機関

余市町には、国や道、地方独立行政法人の機関が設置されています。これらの機関は、町民の生活や産業活動を支える様々な役割を担っています。

国の機関

  • 財務省: 国税庁札幌国税局余市税務署
  • 厚生労働省: 北海道労働局小樽公共職業安定所余市分室(ハローワークよいち)
  • 農林水産省: 北海道森林管理局石狩森林管理署余市森林事務所
  • 防衛省: 海上自衛隊大湊地方隊余市防備隊

道の機関

  • 後志総合振興局: 俱知安保健所余市支所、後志農業改良普及センター北後志支所、後志地区水産技術普及指導所(中央水産試験場内)、小樽建設管理部余市出張所

地方独立行政法人

  • 北海道立総合研究機構水産研究本部中央水産試験場

公共施設:町民の暮らしを豊かにする、様々な施設

余市町には、町民の生活を豊かにする様々な公共施設が整備されています。

交流・文化施設

  • 余市町中央公民館
  • 余市町図書館
  • 余市宇宙記念館
  • 余市水産博物館

産業・観光施設

  • 余市町農村活性化センター(メッセ・アップルドーム)
  • 余市町観光物産センター(エルラプラザ)
  • 余市フィッシュリーナ

運動施設・公園

  • 余市運動公園: 総合体育館、陸上競技場、野球場、テニスコート、自由広場
  • 余市あゆ場公園: パークゴルフ場
  • 余市町温水プール
  • 竹鶴シャンツェ、笠谷シャンツェ

教育機関:未来を担う人材育成

余市町には、子供たちの未来を育む教育機関が数多く存在します。

高等学校

  • 北海道余市紅志高等学校
  • 北星学園余市高等学校

中学校

  • 余市町立東中学校
  • 余市町立西中学校
  • 余市町立旭中学校

小学校

  • 余市町立黒川小学校
  • 余市町立沢町小学校
  • 余市町立大川小学校
  • 余市町立登小学校

未就学児施設

  • 余市町立大川保育所
  • 余市町立中央保育所
  • 余市町立黒川児童館
  • 余市町立沢町児童館

特別支援学校

  • 北海道余市養護学校

経済・産業:ワインと果樹、そして水産が支える町

余市町の経済は、農業、漁業、製造業、商業などが支えています。

農業

  • 北海道内一のワイン醸造用ブドウ畑を擁する「北のフルーツ王国よいちワイン特区」
  • 日本国内で初めて民間栽培によって誕生したリンゴの産地
  • ナシ、ブドウ、サクランボなどの果樹園が観光農園として人気
  • 余市合同青果物地方卸売市場

漁業

  • 地方港湾の余市港と4つの漁港を有する
  • つくり育てる増殖型漁業への転換を進めている
  • エビ、タラ、カレイ、イカ、アユ、身欠ニシン、サケ、数の子、ウニなどが水揚げされる

製造業

  • 出荷額の7割以上を食料品が占める
  • 水産加工品、農産加工品、酒造部門など、町の資源を活用した形態
  • ニッカウヰスキー、余市協同乳業など

商業

  • 小規模な小売店舗の減少が続いている一方で、大型店の出店が進んでいる
  • 周辺町村の商業地としての役割を担っている
  • イオン北海道、ラルズマート、コープさっぽろ、ツルハドラッグなど

交通:アクセス抜群の立地

余市町は、鉄道、バス、道路など、様々な交通手段でアクセス可能です。

鉄道

  • JR北海道函館本線: 余市駅

バス

  • 北海道中央バス余市営業所
  • ニセコバス(北海道中央バスグループ)

道路

  • E5A後志自動車道: 余市IC
  • 国道5号
  • 国道229号
  • 北海道道36号余市赤井川線
  • 北海道道228号豊丘余市停車場線
  • 北海道道378号余市港線
  • 北海道道753号登余市停車場線
  • 北海道道755号然別余市線
  • 北海道道1092号栄町温泉線
  • 北後志東部広域農道(フルーツ街道)
  • 道の駅スペース・アップルよいち

場外離着陸場

  • 余市農道離着陸場(アップルポート余市)

文化財:歴史と文化を伝える、貴重な遺産

余市町には、歴史と文化を伝える貴重な文化財が数多く残っています。

国指定

  • 史跡: フゴッペ洞窟、旧下ヨイチ運上家、旧余市福原漁場
  • 重要文化財: 旧下ヨイチ運上家、ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所建造物10棟

道指定

  • 史跡: 西崎山環状列石

町指定

  • 天然記念物: 神木サイカチの木
  • 名勝: 奇岩えびす岩・大黒岩、奇岩ローソク岩
  • 史跡: 芭蕉句碑、桐ヶ谷太兵衛建立地蔵尊、庚申塚、茂入山城跡、幸田露伴句碑、シリパケールン群遺跡、旧ヤマウス稲荷社石垣階段、旧ヨイチユワナイ間山道余市口、川内漁場敷地、開村記念碑、旧今邸園
  • 有形文化財: 大日本果汁株式会社(ニッカウヰスキー株式会社)工場創立事務所、鐘楼門、川内漁場文書庫、茂入神社祭壇及び吊天井、ヨイチ御場所上下運上家関係古文書、蒔絵模様両開箪笥、鰐口、野口雨情書軸物2点/1点、湯内漁場盛業鳥瞰図、安政年間のヨイチ鳥瞰図、林子平東邦地図、板戸「波に千鳥」、アイヌ絵(武者のぼり下絵)、御受書(血判書)、幸田露伴自筆の電報送達紙、東開和尚筆達磨絵、日像菩薩本尊銘の掛軸

観光・レジャー:自然と歴史、そして食を楽しむ

余市町には、自然、歴史、食など、様々な魅力が詰まっています。

観光スポット

  • 西崎山環状列石
  • フゴッペ洞窟
  • 観光農園
  • 余市ワイナリー
  • 余市町観光物産センター(エルラプラザ)
  • ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所
  • 道の駅スペース・アップルよいち
  • 余市水産博物館
  • 旧下ヨイチ運上家
  • 余市フィッシャリーナ
  • 旧余市福原漁場
  • 円山公園
  • シリパ岬
  • えびす岩・大黒岩
  • ローソク岩
  • 浜中モイレ海水浴場
  • あゆ場公園パークゴルフ場
  • 余市川桜並木
  • 温泉
  • OcciGabi(オチガビ)ワイナリー

イベント

  • 余市川桜並木イベント
  • 余市神社例大祭
  • 浜中モイレ海水浴場海開き
  • 北海ソーラン祭り
  • 旬鮮祭
  • 余市町全日本ジュニアサマージャンプ大会・余市サマーコンバインド大会
  • 毛利記念日
  • 味覚の祭典
  • 味覚マラソン
  • ラフェト・デ・ヴィニュロン・ア・ヨイチ(農園開放祭@余市)
  • 余市ゆき物語
  • ワインを楽しむ会

名産・特産:豊かな自然が育む、美味しい逸品

余市町は、美味しいものがたくさんある町としても有名です。

水産物・水産加工品

  • エビ、タラ、カレイ、イカ、アユ、身欠ニシン、サケ、数の子、ウニなど

農産物

  • リンゴ、ナシ、ブドウ、サクランボ、トマト、イチゴ、モモ、ササゲなどの施設野菜など

その他

  • りんごのほっぺなどのジュース類
  • ニッカウヰスキーによる余市蒸溜所のウイスキー
  • 国内外で評価の高い各種ワイナリーによる自然派ワインやクラシックワイン
  • ウイスキー最中、りんごもなかなど

余市町が舞台となった作品

  • 『余市姫』
  • 『ヤンキー母校に帰る』
  • 『マッサン』

まとめ

北海道余市郡余市町は、ワインとニシンが香る、豊かな歴史と自然に抱かれた魅力的な町です。美味しい食べ物、美しい風景、そして温かい人々との出会いが待っています。ぜひ一度、余市町を訪れてみてください。

余市町についてのクイズ

余市町はどこに位置していますか?

余市町は北海道に位置し、後志総合振興局に属する町です。小樽市から車で約30分、ニセコ町からは約70分の距離にあるため、地理的に見るとアクセスが非常に良いスポットと言えます。また、高速道路の開通により札幌市からも60分圏内に入っており、都市部との結びつきが強くなっています。ここでは、北海道特有の自然環境や観光資源が豊かにあふれており、多くの観光客が訪れています。

余市町が「ワイン醸造用のブドウ畑」で有名な特区の名前は何ですか?

余市町は「北のフルーツ王国よいちワイン特区」として知られています。この特区は、北海道内でもトップクラスの生産量を誇るワイン醸造用のブドウ畑を有し、観光農園としても多くの人に親しまれています。余市町は食文化の宝庫ともいえる場所で、果樹栽培が盛んなため、リンゴやナシ、サクランボなど様々な果物が栽培されています。特に、ワイン産業の発展はこの地域の経済にも寄与しており、多くの観光客を引き寄せています。

余市町の地理的な特徴は何ですか?

余市町は、北海道北西部の積丹半島の基部に位置しています。幅広い地形を持ち、約20.3kmの東西と42kmの南北に広がっており、多様な自然環境に恵まれています。特に日本海に面しているため美しい海岸線を持ち、各種河川が流れており、その流域には豊かな農業地帯が広がっています。また、自然環境が多様で雄大な山岳や豊かな河川、さらに変化に富んだ海岸線があり、観光やレジャーとしての魅力も豊富です。

余市町の歴史的な漁業は何によって栄えましたか?

余市町は、かつてニシン漁によって栄えた地域です。この漁業は、地域の経済に非常に重要な役割を果たしており、もちろんそれにまつわる文化や伝統も豊かでした。特に「ソーラン節」という民謡は、余市町が発祥の地とされ、ニシン漁の際に唸られたことが町の歴史を物語っています。しかし、1954年を最後に漁が途絶え、ニシンは「幻の魚」となりました。漁業の衰退後、町はリンゴ栽培やワイン醸造へと転向し、新しい発展を遂げています。

余市町の気候はどのような特徴を持っていますか?

余市町は、日本海を北上する対馬海流の影響を受け、北海道の中では比較的温暖な気候となっています。年間平均気温は約8℃とされており、日較差が大きく、果樹栽培に非常に適した気候条件を持っています。これにより、良質なリンゴやブドウが栽培されており、「北のフルーツ王国」と呼ばれる所以がここにあります。地元の農業やワイン産業もこの恵まれた気候条件によって支えられており、豊かな自然とともに地域の経済も活性化しています。

余市町の主要な産業は何ですか?

余市町の経済は、農業、漁業、製造業、商業など多岐にわたる産業によって支えられています。特に農業では、ワイン醸造用のブドウやリンゴ、ナシなどの果物が高く評価されており、観光農園としての役割も果たしています。また、漁業ではエビやタラ、アユなど多様な水産物が水揚げされており、製造業も活発で食料品が出荷の大部分を占めています。このように、余市町は多様な産業が協力し合い地域経済を支えています。

余市町の交通手段として利用できるものはどれですか?

余市町は、多様な交通手段によってアクセス可能な地域です。鉄道はJR北海道函館本線の余市駅があり、近隣都市との交通の便が良好です。また、バスは北海道中央バス余市営業所やニセコバスなどが運行しており、徒歩や自転車での移動も可能です。さらに、E5A後志自動車道の余市ICを利用することで、車でのアクセスもスムーズで、都心部からも比較的短時間で到達可能です。これにより観光客や地元住民が自由に行き来しやすくなっているのです。

余市町の名産・特産品は何ですか?

余市町は、美味しい特産品が豊富にあります。特に水産物では、エビやタラ、カレイ、イカ、アユ、身欠ニシン、サケ、数の子、ウニなどがあり、地元で採れた新鮮な海の幸が地域の名物です。また、農産物においては良品質のリンゴやナシ、ブドウ、サクランボなどが高く評価されています。これらの特産品は、町の経済に貢献し、観光客へも地域の魅力を伝えています。更に、ニッカウヰスキーのウイスキー製品も広く知られ、高い評価を得ています。