北海道浜中町:津波に耐え、自然と共存する魅力溢れる町

雄大な太平洋に面し、霧多布湿原など豊かな自然に恵まれた北海道浜中町。幾度もの津波被害を経験しながらも、その度に立ち上がり、現在では全国初の津波防災ステーションも設置されるなど、防災対策の先進地として知られています。

町の名前の由来

浜中町の名前の由来は、アイヌ語の「オタノㇱケ(ota-noske)」(砂浜・の中央)に由来しています。かつては役場が置かれている霧多布市街の北の付近が地名の発祥地でしたが、その後、鉄道開通により浜中駅が内陸部に設置されたため、現在では駅付近を指すようになっています。

地理と気候

浜中町は釧路総合振興局の東南部に位置し、太平洋に面しています。役場は湯沸島(霧多布島)の霧多布地区に設置され、釧路市から東へ約80km、根室市から西へ約50kmのところに位置しています。

浜中町は、北部は丘陵地が広がり、国道44号が東西に縦貫しています。南部は面積約3,168ヘクタールの霧多布湿原を有する平野が広がっています。

気候は、湿潤大陸性気候に属し、寒暖の差が大きく、降雪量も多いのが特徴です。夏は濃霧が発生しやすく、気温があまり上がらないことも特徴です。

主な地理的特徴

  • 山: 湯沸山
  • 河川: 琵琶瀬川
  • 湖沼: 火散布沼(ひちりっぷぬま)・藻散布沼
  • 湾: 浜中湾・琵琶瀬湾
  • 島: 湯沸島・嶮暮帰島・小島・ゴメ島

気候データ(榊町 1991年 – 2020年)

最高気温記録 (°C) 平均最高気温 (°C) 日平均気温 (°C) 平均最低気温 (°C) 最低気温記録 (°C) 降水量 (mm) 平均降水日数 (≥1.0 mm) 平均月間日照時間
1月 8.7 -0.8 -5.3 -11.2 -25.3 26.2 6.0 185.6
2月 12.6 -0.8 -5.3 -11.7 -26.0 18.5 4.5 179.3
3月 15.1 2.8 -1.4 -6.7 -21.4 50.1 7.5 197.8
4月 23.5 8.1 3.3 -1.6 -14.2 73.1 9.3 180.1
5月 35.2 12.5 7.6 3.2 -4.7 103.2 10.7 168.6
6月 30.7 15.1 11.0 7.8 -1.5 111.7 8.9 125.0
7月 34.1 18.6 14.9 12.0 2.5 117.3 10.3 106.2
8月 35.5 21.1 17.3 14.3 5.1 124.2 10.9 117.1
9月 30.2 19.9 15.7 11.5 1.1 157.0 10.7 146.8
10月 24.0 15.3 10.4 4.8 -5.2 123.3 9.1 170.2
11月 20.7 9.0 3.9 -1.8 -13.0 74.5 9.2 164.8
12月 12.9 2.2 -2.6 -8.1 -18.0 56.2 7.7 165.9
年間 35.5 10.3 5.8 1.1 -26.0 1,033.3 104.3 1,913.8

歴史

浜中町の歴史は、1701年(元禄14年)に厚岸場所を分割し、キイタップ場所(後の霧多布場所)が開設されたことに始まります。その後、漁業が盛んになり、1963年(昭和38年)に町制施行により浜中町となりました。

主な歴史的出来事

  • 1701年(元禄14年):厚岸場所を分割しキイタップ場所(後の霧多布場所)が開設。
  • 1831年(天保2年):国籍不明の異国船が厚岸場所ウラヤコタンに碇泊し発砲。
  • 1869年(明治元年):北海道11国86郡が置かれ、現在の浜中町に相当する地域は釧路国厚岸郡に含まれる。
  • 1872年(明治5年):開拓使根室支庁の所轄となり、榊町に浜中出張所が開設される。
  • 1879年(明治12年):榊町に戸長役場設置。
  • 1884年(明治17年):榊町戸長役場廃止、後静村、琵琶瀬村、霧多布村、散布村の四村に分割。
  • 1886年(明治19年):霧多布外一町四村戸長役場設置。
  • 1906年(明治39年):二級町村制が施行及び改称、浜中村となる。
  • 1919年(大正8年):一級町村制施行、浜中村。
  • 1952年(昭和27年):十勝沖地震の津波により、村が壊滅状態となる。
  • 1960年(昭和35年):チリ地震の津波により、村が再び壊滅状態となる。
  • 1963年(昭和38年):根室市との境界変更。町制施行、浜中町となる。
  • 1999年(平成11年):霧多布温泉開湯。
  • 2011年(平成23年):ルパン三世通り開設。
  • 2021年(令和3年):1月6日 – 浜中町役場新庁舎開庁。

経済

浜中町は、気候に恵まれているため、酪農や漁業などの産業が発展しています。

産業

  • 酪農: 北部の内陸部では酪農が盛んであり、生産される生乳は高品質で、高級アイスクリームや乳酸菌飲料の原料として使用されています。
  • 漁業: 南部の海岸地帯では漁業(昆布、ホッキなど)が盛んであり、特に天然昆布は日本有数の生産量を誇っています。

主要企業

  • タカナシ乳業北海道工場

公共機関

  • 警察: 厚岸警察署霧多布駐在所、厚岸警察署茶内駐在所、厚岸警察署浜中駐在所
  • 消防: 釧路東部消防組合浜中消防署、茶内分遣所

地域

人口

浜中町の人口は、近年減少傾向にあります。2020年(令和2年)の国勢調査では、人口は5,507人となっています。

人口推移(総務省統計局 国勢調査より)

人口
1970年 10,192人
1975年 9,668人
1980年 9,243人
1985年 8,921人
1990年 8,395人
1995年 7,866人
2000年 7,335人
2005年 7,005人
2010年 6,511人
2015年 6,061人
2020年 5,507人

教育

  • 高等学校: 霧多布高等学校(町立)
  • 中学校: 霧多布中学校、茶内中学校、浜中中学校
  • 小学校: 霧多布小学校、茶内小学校、浜中小学校
  • 小中学校: 散布(ちりっぷ)小中学校

交通

浜中町は、JR根室本線(花咲線)と町営バスが運行されています。

鉄道

  • 北海道旅客鉄道(JR北海道)
    • 根室本線(花咲線): 茶内駅 – 浜中駅 – 姉別駅

バス

  • 浜中町営バス
    • 霧多布温泉ゆうゆ・渡散布・藻散布より厚岸町(子野日公園)方面
    • 浜中駅 – 榊町 – 新川十字路 – 役場前 – 霧多布温泉ゆうゆ

道路

  • 一般国道: 国道44号
  • 道道: 北海道道123号別海厚岸線、北海道道142号根室浜中釧路線、北海道道449号別海浜中停車場線、北海道道506号茶内停車場線、北海道道599号火散布茶内停車場線、北海道道807号円朱別原野茶内線、北海道道808号琵琶瀬茶内停車場線、北海道道813号上風連大別線、北海道道988号貰人姉別原野線、北海道道1039号霧多布岬線

名所・旧跡・観光スポット

浜中町には、雄大な自然と歴史を感じることができる観光スポットが数多く存在します。

観光スポット

  • 霧多布岬: 太平洋に突き出た断崖絶壁で、雄大な景色を楽しむことができます。
  • ルパン三世通り: 漫画家モンキー・パンチの出身地である浜中町に、ルパン三世のキャラクターをモチーフにした通りが整備されています。
  • アゼチ岬: 霧多布岬の隣にある岬で、小島と嶮暮帰島を望むことができます。
  • 霧多布湿原: ラムサール条約北海道遺産に登録された湿原で、貴重な植物群落を見ることができます。
  • 霧多布温泉ゆうゆ: 温泉施設で、日帰り入浴や宿泊ができます。
  • 酪農展望台: 国道44号に接する展望台で、雄大な田園風景を望むことができます。
  • 琵琶瀬展望台: 太平洋を見渡せる展望台で、水平線を眺めることができます。
  • ウラヤコタン異国船上陸地: 1831年に異国船が上陸した場所です。

イベント

  • ルパン三世フェスティバルin浜中町: ルパン三世のキャラクターが登場するイベントです。
  • 浜中うまいもん市: 浜中町の特産品が販売されるイベントです。
  • 岬まつり: 霧多布岬で行われる祭りです。

出身の有名人

  • モンキー・パンチ: 漫画家。代表作である『ルパン三世』の作者。
  • 大野勝巳: 外交官、帝国ホテル社長。
  • 奥田仁: 経済学者。
  • 上田和男: バーテンダー(「ミスター・ハードシェイク」、銀座『TENDER』オーナー・バーテンダー)。
  • 長澤幸太: ばんえい競馬騎手。
  • 武藤祐貴: プロゴルファー。

浜中町が舞台の作品

  • 小説『霧多布殺人湿原』(著:梓林太郎 徳間書店)
  • ルパン三世シリーズ
    • 『TV第2シリーズ』第108話「哀しみの斬鉄剣」
    • アニメスペシャル『ルパン三世 霧のエリューシヴ』
  • 思い出のマーニー (スタジオジブリ制作 長編アニメーション映画)

その他

  • レジ袋有料化: 2008年4月より、全国で初めて行政区域内の全商店でレジ袋を有料化しました。
  • ふるさと100選: 2009年1月朝日新聞社のふるさと100選に選出されました。

まとめ

北海道浜中町は、豊かな自然と歴史、そして活気あふれる町です。津波に耐え、自然と共存しながら発展を続ける浜中町は、魅力溢れる観光地として、多くの人々を惹きつけます。

浜中町についてのクイズ

浜中町の名前の由来は何ですか?

浜中町の名前の由来はアイヌ語の「オタノㇱケ(ota-noske)」から来ています。この言葉は「砂浜・の中央」を意味し、地名の成立時の環境を反映しています。町の発祥地は、霧多布市街の北近くで、そこから町の名前がつけられました。しかし、鉄道の開通により浜中駅が内陸部に設置されたため、駅周辺が現在の浜中町の中心地として知られています。アイヌ語の用語が町名の由来であることは、地域の歴史と文化の重要な一部であり、このような言語の背景を持つ地名が残ることは、先住民の文化への敬意や地域のアイデンティティを保つためにも大切です。

浜中町はどの気候に属していますか?

浜中町は湿潤大陸性気候に属しています。この気候は、寒暖の差が大きく、年間を通して降雪量も多いのが特徴です。特に冬は非常に寒く、夏も濃霧が発生することが多いのが特徴です。気温があまり上がらないこともあり、冷涼な気候が地域の特産品や農業に大きな影響を与えています。地域の農作物や酪農業がこの気候の特性を活かして発展しており、特産品として高品質な生乳や新鮮な海産物が揃います。また、湿度の高い環境は、自然の生態系を豊かに保つ要因ともなっており、はまゆうと呼ばれる花々が咲く湿原や、豊かな植物が栄える自然環境が整っています。

浜中町の経済において、盛んな産業は何ですか?

浜中町の経済は、主に酪農と漁業が盛んです。北部の内陸部では高品質な生乳が生産され、特に高級アイスクリームや乳酸菌飲料の原料として利用されています。生乳の生産は地域の重要な産業であり、地元の農家が誇る生産技術と良好な気候条件が育んでいます。また、南部の海岸地域では、昆布やホッキ貝などの漁業が発展しています。この町では、特に天然昆布の生産量が日本有数であり、漁業も地域の経済基盤として重要な役割を果たしています。それにより、浜中町は産業の多様性を持ちながらも、地元の特産物を活かした経済発展を実現しており、地域のブランド力が高まっています。

浜中町にある高等学校の名前は何ですか?

浜中町には霧多布高等学校が設立されています。この高等学校は町立で、地域の教育を支える重要な教育機関です。霧多布高等学校は地元の学生に質の高い教育を提供しており、進学や就職を支援するための様々なプログラムを展開しています。また、地域の特性や文化を反映した教育を行うことで、生徒たちが地元のアイデンティティを理解し、誇りを持って成長する機会を提供しています。教育環境を整えることで、地域の将来を担う若者を育てることが町全体にとって重要であり、地域の発展を支える要素として期待されています。

浜中町が舞台のマンガ作品は何ですか?

浜中町は漫画『ルパン三世』の舞台の一部とされています。作者のモンキー・パンチの出身地でもあるこの町は、彼の作品に影響を与えた地域として知られています。『ルパン三世』は、世界中で人気のあるキャラクターであり、様々なエピソードが展開され、特にあの独特のスタイルと魅力的なストーリーがファンに支持されています。浜中町では、ルパン三世に関連したイベントやスポットを設け、地域の観光資源としても活用されています。町の文化や歴史がそのまま作品に息づいていることは、地域にとっての誇りをさらに高める要素となっています。