豊臣秀吉の天下統一に貢献した黒田官兵衛が築城した城下町であり、福沢諭吉の生誕地として知られる中津市。歴史と文化、そして雄大な自然に恵まれた大分県北西部に位置する街の魅力をご紹介します。
概要
大分県内では大分市、別府市に次いで人口が3番目に多い中津市は、城下町としての歴史を持ち、青の洞門、羅漢寺、福澤諭吉旧居、中津城などの文化財や歴史的建造物が数多く存在します。市域南部には、奇岩怪石が織りなす景勝地・耶馬渓が広がり、自然豊かな環境も魅力です。
中津市は旧豊前国にあたり、福岡県北九州地区との結びつきが強いことから、福岡県からの通勤・通学人口が多く、経済・文化・生活面で一体化しています。特に、旧上毛郡地域であった豊前市、上毛町、吉富町は、中津市との関係が深く、越境合併の動きも見られます。
近年では、ダイハツ車体の本社・工場の移転により、自動車関連工場の集積が進み、2015年には東九州自動車道の中津ICが開設されるなど、交通網も整備され、新たな発展を見せています。
地理
地形
中津市は、北部が周防灘(瀬戸内海)に面し、南部は耶馬渓と呼ばれる景勝地が広がる山間部となっています。東部は宇佐市にかけて水田が広がる県内最大規模の農業地帯であり、耶馬渓・八面山麓から山国川流域には、中津平野が広がっています。
自然
- 八面山 (大分県):標高905mの山で、中津市のシンボル的な存在です。
- 山国川:福岡県・大分県境を流れる一級河川で、中津平野を潤しています。
- 犬丸川:山国川の支流で、中津市街地を流れています。
- 周防灘:瀬戸内海の一部で、中津市の北部を臨んでいます。
- 英彦山:福岡県と大分県の県境にある山で、古くから信仰の山として知られています。
- 野依新池:環境省のレッドデータブックで絶滅危惧I種に指定されているベッコウトンボが生息しています。
気候
中津市は瀬戸内海式気候の影響を受け、温暖で年間降水量が少ない地域です。
中津(2011年 – 2020年)の気候 |
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月 |
最高気温記録 °C (°F) |
平均最高気温 °C (°F) |
日平均気温 °C (°F) |
平均最低気温 °C (°F) |
最低気温記録 °C (°F) |
降水量 mm (inch) |
平均降水日数 (≥1.0 mm) |
平均月間日照時間 |
隣接市町村
- 大分県
- 宇佐市
- 日田市
- 玖珠郡玖珠町
- 福岡県
- 豊前市
- 田川郡添田町
- 築上郡上毛町、吉富町、築上町
- 京都郡みやこ町
歴史
古代
中津平野では、古代から開発が進められており、国道10号南側には条里制による条里地割の跡が残っています。
中世・近世
中津市の城下町としての歴史は、1587年(天正15年)に黒田孝高(黒田官兵衛)が豊臣秀吉から豊前6郡の16万石と馬ヶ岳城を与えられたことに始まります。黒田孝高は拠点を山国川河口部に移し、中津城を築城しました。市街地がほぼ完成したのは1600年代中頃とされています。その後、城主は細川氏、小笠原氏を経て、1717年(享保2年)に奥平氏が入封し、明治維新を迎えます。
近現代
廃藩置県により中津県となり、その後小倉県を経て福岡県となりましたが、1876年(明治9年)に宇佐郡と下毛郡が大分県に編入され、中津支庁が設置されたことで、大分県北の中心地として発展しました。
1879年(明治12年)から工場が設置され、1890年代には繊維工業が集積するようになりました。1929年(昭和4年)には大分県で3番目に市制を施行しました。
1944年(昭和19年)には神戸製鋼所が進出し、戦後には重工業化が進みました。1970年(昭和45年)頃までは鉄鋼業と衛生陶器製造が盛んでしたが、1970年代後半からは自動車関連工場の進出が中心となり、1984年(昭和59年)には豊の国テクノポリスの中心都市に指定されました。
行政
市長
- 奥塚正典(2015年11月17日就任、3期目)
市議会
中津市議会は、定数24名で構成されています。
友好都市
- 福岡県太宰府市(2014年11月23日友好都市協定締結)
経済
主な企業
- ダイハツ九州(本社)
- TOTO
- ルネサス セミコンダクタ パッケージ&テスト ソリューションズ(大分工場)
- 西の誉銘醸(本社)
- オイレス工業(大分工場)
- DIC九州ポリマ
- マレリ九州(中津工場)
- 積水化成品大分(旧・積水化成品工業 大分工場)
特産品
- 旧中津市:白菜、ブロッコリー、大分味一ねぎ、梨、蛤しるこ、巻柿、かぼす麺、ハモ料理、丸芳露(丸ボーロ)
- 旧三光村:ややま味噌、いちご、大分味一ねぎ、三光桃、三光パン、トルコギキョウ
- 旧本耶馬渓町:耶馬渓茶、夏秋きゅうり、生しいたけ、いちご、にら、ソバ加工品
- 旧耶馬渓町:耶馬渓牛乳、耶馬渓茶、トルコギキョウ
- 旧山国町:夏秋きゅうり、豊後牛、木工品、梨、かずら工芸品
から揚げ
中津市は「中津からあげ」発祥の地として知られています。市内にはから揚げ専門店も多く、観光客にも人気です。
主要大規模小売店舗
- サンリブ中津
- ゆめタウン中津
- イオンモール三光
- フレスポ中津北
中心商店街
- 日の出町商店街
- 新博多町商店街・寿通り商店街
- 博多町商店街
- 仲町商店街
道の駅
- なかつ
- 耶馬トピア
- やまくに
交通
鉄道
- 九州旅客鉄道(JR九州)
- 日豊本線:中津駅、東中津駅、今津駅
バス
- 高速バス・特急バス:高速SORIN号、空港特急バスノースライナー
- 路線バス:大分交通グループ(大交北部バス、玖珠観光バス)
- コミュニティバス:中津市コミュニティバス、中津市山国バス
道路
- 高速道路:東九州自動車道、中津日田道路
- 一般国道:国道10号、国道212号、国道213号、国道496号、国道500号
- 県道:主要地方道、一般県道
港湾
- 中津港(重要港湾)
空港
- 最寄りの空港は大分空港または北九州空港。
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
名所・旧跡
- 中津城:黒田孝高が築城した城で、国の重要文化財に指定されています。
- 福澤諭吉旧居・福澤記念館:福沢諭吉が生まれた家と、その生涯を伝える資料館です。
- 中津市歴史博物館:中津市の歴史と文化を伝える博物館です。
- 村上医家史料館:江戸時代初期から続く村上医家の医学・蘭学に関する史料を展示しています。
- 大江医家史料館:代々中津藩御殿医を務めた大江家の医学・蘭学に関する史料を展示しています。
- 金谷武家屋敷:中津藩士の屋敷で、当時の暮らしを垣間見ることができます。
- 自性寺大雅堂:国の重要文化財に指定されている仏堂です。
- 生田家武家屋敷門:中津藩士の屋敷の門で、現在は中津市立南部小学校の校門として利用されています。
- 蛎瀬豊後街道:江戸時代に中津と豊後国(大分県)を結んでいた街道です。
- 中津大神宮:中津市の総鎮守です。
- 中津神社:中津祇園の上祇園を開催します。
- 薦神社:中津市で最も古い神社とされ、毎年9月には仲秋祭が行われます。
- 犬丸地区:菅原道真が九州に初上陸したとされる地です。
- 菅公御着船の旧跡
- 犬丸天満宮
- 若籏神社:植野神楽が毎年4月29日と大晦日に行われます。
- 三光コスモス園:秋には一面のコスモスが咲き乱れます。
- 耶馬渓:奇岩怪石が織りなす景勝地です。
- 深耶馬渓
- 青の洞門
- 羅漢寺
- 耶馬渓橋、馬渓橋、羅漢寺橋
- 大分県道411号中津山国自転車道線(メイプル耶馬サイクリングロード)
- 八面山金色温泉:日帰り温泉施設です。
- 耶馬溪温泉郷:耶馬渓にある温泉地です。
- 守実温泉:日帰り温泉施設です。
- 中摩温泉:日帰り温泉施設です。
- 大勢温泉:日帰り温泉施設です。
祭り
- 城下町中津のひなまつり
- 中津みなとふじまつり
- 中津祇園:毎年7月に行われる、中津市の夏の風物詩です。
- 耶馬溪湖畔祭り
- 寺町とうろう祭り
- 鶴市花傘鉾祭
- 薦神社 仲秋祭
- からあげフェスティバル
- 三光コスモス祭り
- 禅海ふるさとまつり
- やまくにかかしワールド
- 今津恵比須神社秋季大祭
- 今津大たいまつ
- 犬丸天満宮御神幸祭(大名行列)
- かまぎ餅祭り(鳩餅祭り)
- やんさ祭り
- 植野神楽
スポーツ
施設
- 大貞総合運動公園
- 中津市総合体育館(ダイハツ九州アリーナ)
- 野球場(ダイハツ九州スタジアム)
- 軟式野球場(ダイハツ九州軟式野球場)
- 中津体育センター
- 三光総合運動公園
- 永添運動公園
- 田尻ソフトボールグラウンド
- 中央公園ソフトボール球場
- 中津市民プール
- 耶馬渓海洋センター
- 耶馬渓アクアパーク
- やまくにスポーツパーク
- 禅海スポーツセンター
スポーツチーム
- FC中津:サッカー
その他
メディア
中津市では、大分県、福岡県、山口県のテレビ放送、4県のFM放送を受信できます。
2005年9月17日には、大分県初のコミュニティ放送局「エフエムなかつ」が開局しました。
出身有名人
- 福沢諭吉(教育者)
- 大島康徳(元プロ野球選手、元プロ野球監督)
- 奥村政稔(プロ野球選手、福岡ソフトバンクホークス所属)
- 倉本崇史(元プロサッカー選手、大分トリニータ・水戸ホーリーホックなど)
- 松本昌也(プロサッカー選手、ジュビロ磐田所属)
- 山口俊(プロ野球選手、読売ジャイアンツ所属)
- 小池可奈(アナウンサー)
- 南早紀(声優)
- 宮崎明日香(フリーアナウンサー)
- 屋敷優成(プロサッカー選手、大分トリニータ所属)
- 小野不由美(作家)
- 松下竜一(作家)
- 前田晃伸(みずほフィナンシャルグループ代表取締役社長)
- など
まとめ
中津市は、歴史と文化、そして豊かな自然に恵まれた魅力的な街です。黒田官兵衛ゆかりの中津城や福沢諭吉の生誕地、そして雄大な耶馬渓など、見どころ満載です。ぜひ一度、中津市を訪れてみてください。
中津市についてのクイズ
中津市のシンボル的な山として知られているのはどれですか?
中津市のシンボル的な存在である八面山は、標高905mの山です。周防灘に面した北部と、自然豊かな耶馬渓が広がる南部という特性から、八面山は地域の風景に多大な影響を与えています。市民にとってのレクリエーションの場でもあり、登山やハイキングに訪れる人々に愛されています。また、八面山はその独自の形状から遠くからでも一目でわかる特徴を持っており、観光資源としても大きな役割を果たしています。地元の文化や風習にも深く根付いており、八面山にちなんだ伝説や風物詩も存在し、地域住民の絆を強めています。
中津市の主要な観光施設で、福沢諭吉の生誕地である場所はどれですか?
福沢諭吉は、日本の近代教育の父として知られる偉大な教育者であり、彼の生誕地である福澤諭吉旧居は中津市内に位置しています。この旧居は、彼が生まれ育った場所であり、現在は福澤記念館として運営されています。この記念館では、福沢諭吉の生涯や業績に関連する資料が展示されており、訪れる人々に彼の偉業を伝えています。また、福沢諭吉の思想と教育理念は、現在の日本社会にも大きな影響を与えており、彼の旧居を訪れることでその足跡や思想に触れることができる貴重な機会となります。
中津市の隣接する福岡県の市町村でないものはどれですか?
中津市は、大分県の北西部に位置し、福岡県との境にあります。隣接する福岡県の市町村には、豊前市や築上郡の多くの町が含まれていますが、田川市や宮若市は中津市とは隣接していません。田川市は福岡県の南部に位置し、宮若市は福岡県の北東部にあります。中津市近隣の福岡県の市町村は、地域間での通勤・通学が活発で、経済や文化においても密接なつながりがあります。このような隣接性は、両県における生活の利便性を高めています。
中津市の有名な特産品として知られているのは何ですか?
中津市は、特に梨の生産で知られています。中津市においては、標高の高い山間部と温暖な気候が合わさることで、甘くてジューシーな梨が育つ理想的な環境が整っています。市内の農家では、手間暇かけて梨の栽培に取り組んでおり、その品質は高く評価されています。さらに、中津市の梨は地域の名物として知られ、観光客にも人気があります。市では、毎年梨の収穫シーズンに合わせて催事を開催し、地域全体でこの特産品を盛り上げる取り組みがなされています。このように、梨は中津市の重要な経済活動の一つであり、地域のアイデンティティの一部を形成しています。