青森県東南部に位置する階上町は、太平洋に面した美しい海岸線と、雄大な階上岳を擁する自然豊かな町です。八戸市のベッドタウンとして発展を遂げ、近年では八戸工業大学への進学者が多く居住するなど、活気に満ち溢れています。豊かな漁場と酪農産業が盛んな一方、観光スポットや歴史的な名所も数多く存在し、魅力的な町として注目されています。
概要
階上町は、青森県の南部最東端に位置し、北・西は八戸市、南は岩手県洋野町、東は太平洋に面しています。八戸市のベッドタウンとして宅地開発が進み、八戸都市圏の一部を成しています。八戸工業大学に通う学生の多くが居住しているため、19歳から22歳の人口比率が突出して高く、若者が多い町です。
沿岸部は三陸海岸の豊かな漁場であり、新鮮な海の幸が豊富です。内陸部は酪農産業が盛んで、広大な牧草地が広がっています。太平洋と県南地域を一望できる標高740mの階上岳があり、周辺地域から気軽に訪れることができる行楽地となっています。
地理
町内には海岸段丘による平坦な段丘面が広がっており、岩手県との県境には階上岳を主峰として山が連なっています。東部は三陸海岸に向かって東流する河川が並んでいる一方、西部は新井田川の支流の流域となっており、北流して八戸港に流れ込みます。
気候
階上町の気候は太平洋側気候に属し、夏は偏東風(やませ)の影響で冷涼です。海から冷たい風が吹き付けて冷夏になる年もあります。冬は北東北にありながら降雪量が少なく乾燥し、晴天が多いため日照時間も長いのが特徴です。
- 夏季
- 真夏日(最高気温が30度以上) 13日(1997年から2007年までの平均)
- 8月の平均最高気温 26.5℃(1997年から2007年までの平均)
- 過去最高気温 37.0℃(1978年8月3日)
- 冬季
- 真冬日(最高気温が0度以下) 11日(1997年から2007年までの平均)
- 1月の平均気温 -0.7℃(1997年から2007年までの平均)
- 過去最低気温 -15.7℃(1953年1月3日)
歴史
階上町には中世以前からの歴史があり、古くから人々が生活していたことがうかがえます。
- 神亀元年から神亀5年(724年 – 728年):現在の階上町寺下地区に 応物寺 が建立されます。詳細は不明ですが、大正時代に倒壊するまで五重塔が現存し、行基が観音像を納めたとされています。
- 文安元年(1444年):階上町道仏地区に 西光寺 が琳阿孝寛大和尚によって開基されます。これにより、現在の階上町の集落の基礎が誕生したとされています。
- 寛文4年(1664年):八戸藩の所領になります。
- 文化4年(1807年):太平洋沿岸を防衛するため、八戸藩によって階上町小舟渡海岸に 浦固め が設置されます。
- 明治4年:廃藩置県により八戸県を設置。その後、弘前県、黒石県、斗南県、七戸県、八戸県及び館県を廃し、その区域をもって弘前県を設置。弘前県の名称を青森県に変更します。
- 明治6年:大区小区制の施行により、第九大区ハ小区を設置。
- 明治11年:大区小区制の廃止。
- 1889年(明治22年)4月1日:町村制の施行により、三戸郡田代村、晴山沢村、平内村、鳥屋部村、金山澤村、赤保内村、道仏村及び角柄折村を廃し、その区域をもって三戸郡 階上村 を設置。
- 1980年(昭和55年)5月1日:三戸郡階上村を三戸郡 階上町 とする。単独での昇格(合併での場合を除く)は、青森県内では最後。
- 2008年(平成20年)7月24日:午前0時26分の岩手県沿岸北部地震で階上町道仏で震度6弱を観測。近隣の青森県八戸市でも震度6弱、岩手県洋野町・軽米町で震度5強を観測。
町名の由来
「はしかみ」の語源の由来は諸説あります。
- 『糠部5郡の中に階上郡があり、糠部の中心から見て北方海上(階上)郡があったといい伝えられ、当時郡役所の仕事をし、改革に当たった役人たちが階上岳の北麓にある8つの村を統合する名称として「はしかみ」 と命名されたのではないか』という説。
- 現在の町名が命名された由来としては、『明治の8村合併の時に岩手県との県境にある階上岳をとって村名とした』という説。
行政
- 町長: 荒谷憲輝(2021年(令和3年)12月から) 任期: 2025年12月23日
- 1970年(昭和45年)4月24日生 略歴: 階上町議会議員
- 町議会: 議員定数14名(無所属14名)
産業
階上町は、古くから漁業や農業が町の基幹産業でしたが、隣接する八戸市のベッドタウン化が進んだため、多くの居住者が八戸市内に職場を持つようになりました。また、町と八戸市の境界に接する形(八戸市側)で八戸工業大学があることから、大学生も多数居住しています。
産業別労働者人口
- 労働人口総数 6,835人
- 第1次産業 793人(11.6%)
- 第2次産業 2,132人(31.1%)
- 第3次産業 3,845人(56.2%)
第1次産業
階上町は 酪農 が盛んで、養鶏や養豚の産出額が最も高いです。野菜では米や路地ねぎ栽培が多い町です。
- 農業産出額の49%が鶏、22%が豚、その他(米・野菜など)が29%を占めています。
- 飼料用のトウモロコシを生産し、粗飼料自給率の高い酪農経営をしている農家が多いです。
- 階上町の酪農・農業を含めた耕地面積は、1,380haです。ただし、このうちの62%が農地として使われ、残りの38%は休耕地です。
- 2005年の調査によると、階上町の農業・林業農家の90%は家族経営をしています。
- 農業就業人口・基幹的農業従事者は全体で793人ですが、そのうち75歳以上の割合が最も多く、年齢が低くなるにつれて減少する傾向にあります。
- 農産物を作っている人の55%が販売農家で、45%が自給的農家です。青森県全体では販売農家が84%であるのに対して、階上町の販売農家数と自給的農家の割合はほぼ同じ傾向にあります。
漁業 は、平成18年度の青森県海面漁業に関する調査報告所によると、平成18年度の漁獲高は3億3832万円です。
- 漁獲高の内訳は、魚類が1億6379万円、貝類が5242万、水産動物(いか・たこ・うに・ほや)が1億981万円、藻類が1228万円でした。
- 漁獲数量が最も多いのは、サケで324トンで漁獲高が8256万円。次いでスルメイカが101トンで漁獲高が3683万円。三番目はタラで110トンで漁獲高が3966万円です。
第2次産業
平成17年度工業統計調査によると、町全体の製造品出荷額は82億361万円で、22の事業所があり、全体で710人が労働しています。階上町の第2次産業は、主に 食料品 を扱う工場が主力です。
- 2番目に金属製品産業が6億77万円、3番目に衣服産業が2億1299万円の製造品出荷額があります。
第3次産業
平成16年商業統計調査によると、年間商品販売額は合計で102億7763万円で、そのうち小売業は66億1207万円、卸売業が36億6556万円でした。町内の第3次産業の労働人口は584人。売り場面積は12009平方メートル。
- 飲料品小売業 が主力産業で、年間商品販売額は37億3970万円で、労働者は259人であり、第3次産業の約半数を占めています。
- 町内には コカコーラ社 の販売事業所があります。
地域
人口
上記の通り、八戸工業大学に通う学生の多くが居住しているため、19歳から22歳の人口の割合が突出して高いです。
- 平成27年国勢調査より前回調査からの人口増減をみると、4.59%減の14,025人であり、増減率は県下40市町村中10位。
年 | 人口 |
---|---|
1970年(昭和45年) | 9,279人 |
1975年(昭和50年) | 9,375人 |
1980年(昭和55年) | 10,199人 |
1985年(昭和60年) | 11,547人 |
1990年(平成2年) | 12,959人 |
1995年(平成7年) | 14,428人 |
2000年(平成12年) | 15,618人 |
2005年(平成17年) | 15,356人 |
2010年(平成22年) | 14,699人 |
2015年(平成27年) | 14,025人 |
2020年(令和2年) | 13,496人 |
土地利用
階上町の土地の約6割は 山林 です。畑や雑種地も多く、宅地の割合は全体の4%程度です。
以下は土地利用の内訳を示します。
- 総面積93.8平方キロメートル
( )は全体の割合
- 田40.2平方キロメートル(4.28%)
- 畑13.39平方キロメートル(14.26%)
- 宅地3.45平方キロメートル(3.68%)
- 山林56.91平方キロメートル(60.63%)
- 原野2.67(2.84%)
- 雑種地7.24平方キロメートル(7.71%)
- 牧場0.96平方キロメートル(1.02%)
- その他5.23平方キロメートル(5.58%)
階上町は平成5年5月2日に、町全体の面積の9,387haのうち72%にあたる6,783haが未線引き都市計画区域に指定されました。これにより、原則3000平方メートル以上の開発行為は原則として都道府県知事の許可を必要とするようになりました。
所轄警察署
- 八戸警察署管内
- 階上交番
- 田代駐在所
所轄消防署
- 八戸地域広域市町村圏事務組合八戸東消防署階上分署
教育
中学校
- 階上町立道仏中学校
- 階上町立階上中学校
※以下は廃校。
- 田代中学校 (2017年・八戸市立島守小学校へ統合)
小学校
- 階上町立赤保内小学校
- 階上町立石鉢小学校
- 階上町立大蛇小学校
- 階上町立小舟渡小学校
- 階上町立道仏小学校
- 階上町立階上小学校
※以下は廃校。
- 階上町立登切小学校(2010年・赤保内小学校へ統合)
- 階上町立金山沢小学校(2011年・赤保内小学校へ統合)
- 田代小学校 (2017年・八戸市立島守中学校へ統合)
交通
鉄道
- 東日本旅客鉄道
- 八戸線: 大蛇駅 – 階上駅
路線バス
- 岩手県北自動車南部支社
- 階上町コミュニティバス
道路
高規格幹線道路
一般国道の自動車専用道路
- E45 八戸久慈自動車道
- 一般国道45号八戸南道路: 種差海岸階上岳IC – 階上IC
一般国道
- 国道45号
- 道の駅はしかみ
県道
- 主要地方道
- 青森県道1号八戸階上線
- 青森県道・岩手県道11号八戸大野線
- 青森県道42号名川階上線
- 一般県道
- 青森県道221号鳥屋部十日市線
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
旧跡
- 寺下観音堂: 724年行基により開山。奥州糠部三十三観音一番札所となっています。
- 道仏館跡
- 茨島のトチノキ(ばらじま-) 〔赤保内字茨島〕県天然記念物、推定樹齢600 – 800年。
- うつぎ 〔保内字赤保内〕県天然記念物、樹齢不詳であるが、ウツギの大木は日本において記録がない。
- 応物寺五重塔跡
観光スポット
- 階上岳: ツツジの群生地、毎年5月下旬より6月上旬にかけて咲き乱れます。
- 八戸カントリークラブ
- 小舟渡海岸: 青森県で一番早く日の出が拝める場所(山間部を除く)
- 廿一平: 三浦哲郎の「海村異聞」で舞台となった廿一村の所在地。現在では芝生の広場となっており、いちご煮まつりの会場としても使われます。
祭事
- 寺下観音祭: 5月第3日曜日
- 臥牛山まつり: 5月
- いちご煮まつり: 7月
- 町民文化祭: 11月
出身有名人
- 小原佑太: 競輪選手
- 十文字友和: 大相撲力士
- Win(風田、Feng Tian): 俳優、歌手。台湾のアイドルグループ「SpeXial」のメンバー。
- 佐藤千優(ちひろ): 五所川原エフエムパーソナリティ
出典
- 町長あいさつ – 階上町
- 気象庁 | 過去の気象データ検索(青森県八戸市)
- 平成19年度 100の指標からみた和歌山 -県勢編- (PDF)
- 歴史 – 階上町
- 歴史 – 階上町(最終閲覧2008年12月24日)
- 地名の由来
- 平成17年度国勢調査 産業別就業者数
- 市町村の姿 青森県階上町 農業データ農業産出額(最終閲覧日2008年12月24日)
- 市町村の姿 青森県階上町 農業データ 耕地面積(最終閲覧日2008年12月24日)
- 「2005年農林業センサス 第1巻都道府県別統計書 青森県『第1部 農林業経営体調査 農林業経営体編 土地 – 経営耕地の状況』(最終閲覧日2008年12月24日)
- 市町村の姿 青森県階上町 農業データ 農業就業人口・基幹的農業従事者(最終閲覧日2008年12月24日)
- 平成19年度土地概要調査書
- “もっと台湾!~青森発、台湾情報連続配信!!”. RAB青森放送. 2019年11月2日閲覧。
外部リンク
- 階上町
階上町についてのクイズ
階上町はどの県に位置していますか?
階上町は青森県の南部最東端に位置しています。太平洋に面し、隣接する八戸市と岩手県洋野町と接しています。この地理的な位置により、自然豊かな環境が形成されており、海と山の恵みを享受することができる地域です。階上町の立地は地元の漁業や酪農が盛んな背景とも関連し、若者の居住地としても注目されています。地元の産業や観光も、これらの自然環境に大きく影響を受けています。
階上町の気候の特徴は何ですか?
階上町の気候は太平洋側気候に属しており、夏は偏東風(やませ)の影響で冷涼です。また、冬は降雪量が少なく、晴天が多いの特徴です。これにより、日照時間が長く、農業や観光活動においてもプラスに働きます。この温暖な気候が、地域の農業・漁業にも良い影響を与え、特に夏には新鮮な海の幸や地場産の農作物が豊富になります。
どの寺院が724年に建立されたことがあるか?
724年に建立された寺院は応物寺です。この寺は現在の階上町寺下地区に位置しており、古くから地域の人々に信仰されてきました。応物寺は行基によって観音像が納められたことでも知られ、歴史的な意義を持つ寺院として地域の文化に深く根付いています。このような歴史的背景は、階上町の地域性を形成している一因となっています。
階上町の主要な産業は何ですか?
階上町の主要な産業には漁業と農業があります。特に、周辺の豊かな漁場からの新鮮な海の幸と内陸部の酪農産業が町の経済を支えています。漁業は多彩な魚種が捕れる点が特長であり、酪農では鶏や豚の生産が特に多く見られます。この地域では、地元産業の発展とともに、居住者の生活が成り立っており、町全体の活性化にもつながっています。
階上町の人口はどのように推移していますか?
階上町の人口は減少傾向にあります。近年の国勢調査によると、少子高齢化の影響もあり、人口が減少していることが確認されています。特に、階上町には多くの若者が住んでいる一方で、高齢化が進んでいるため、世代間の人口バランスに課題が残ります。このような人口動態は、地域の未来に対してさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
階上町で有名な祭りは何ですか?
階上町で有名な祭りの一つは「いちご煮まつり」です。この祭りは、毎年夏に開催されるもので、地域の特産品や文化を楽しむイベントとして知られています。いちご煮は青森県の特産料理であり、この祭りを通じて町の魅力を広くアピールしています。また、このような地域の祭りは地元住民の結束を高め、町の活性化に寄与しています。