福島県東白川郡に位置する矢祭町は、豊かな自然と歴史、そして独自の行政改革で知られる魅力的な町です。人口減少に悩む多くの地方自治体の中で、合併せず独自路線を歩む矢祭町は、全国から注目を集め、多くの自治体から視察が訪れるほどです。本記事では、矢祭町の魅力を地理、歴史、行政、観光スポット、特産品など多角的に紹介します。
矢祭町の概要
矢祭町は、福島県の中通り地方、東白川郡に属する町です。町のほぼ中心には矢祭山がそびえ立ち、久慈川が南北に流れています。西端には八溝山が位置し、茨城県や栃木県との県境を形成しています。町内は山がちで、久慈川沿いにJR水郡線と国道118号が走っています。
町の概要
- 面積: 118.27 km²
- 人口: 4,967人 (2024年8月1日推計)
- 人口密度: 42 人/km²
- 隣接自治体: 福島県東白川郡棚倉町、塙町、茨城県常陸太田市、久慈郡大子町
- 町の木: アカマツ
- 町の花: ツツジ
- 町の鳥: ヤマバト
矢祭町の歴史: 戦国時代から現代まで
矢祭町の歴史は、戦国時代まで遡ります。
戦国時代
- 戦国時代には、常陸国北部を本拠地とした佐竹氏の領土でした。中心部の「東舘」は、佐竹氏によって付けられた地名です。東舘は、白河の結城氏の力で廃城となりましたが、その後、佐竹氏は前線拠点や補給線として活用していました。
江戸時代
- 関ヶ原合戦後、佐竹氏は常陸から出羽国へ国替えとなり、棚倉藩に入れられました。
- 1729年(享保14年)には棚倉藩領から江戸幕府直轄地(天領)となり、塙代官所の統治下に入りました。
近代
- 1953年(昭和28年)に国道118号が制定されました。
- 1930年(昭和5年)に水郡線の常陸大子駅 – 東館駅間が開業しました。
- 1955年(昭和30年)に豊里村と高城村の一部が合併し、矢祭村が発足しました。
- 1957年(昭和32年)に塙町の旧・石井村の一部が矢祭村に編入されました。
- 1963年(昭和38年)に町制施行により矢祭町となりました。
現代の矢祭町: 合併を拒否し、独自路線を歩む町
矢祭町は、2001年に「市町村合併をしない矢祭町宣言」を町議会が可決しました。これは、当時の町長であった根本良一氏の決断によるもので、全国で大きな話題となりました。
合併拒否の理由
- 「平成の大合併」によって山村が見捨てられる懸念があった
- 独自の行政改革によって自立した財政を実現できるという確信があった
矢祭町の行政改革
根本良一氏は、合併を拒否しただけでなく、独自に歳出削減を進め、節約した費用を財政的な自立と結婚・育児支援に充てました。その結果、矢祭町の合計特殊出生率は全国平均を上回っています。
矢祭町の行政改革の主な内容
- 職員・人件費の削減: 新規採用停止、嘱託職員削減、収入役の廃止、議会定数削減、町重要職・議員報酬削減
- 職員の職務兼務・組織変更: 7課体制を5課体制に、庁舎の清掃は町長・助役・教育長も行う、管理職もトイレ清掃を行う
- 開庁時間: 役場窓口業務にフレックスタイム導入、年中無休、平日7:30 – 18:30
- 出張役場制度: 役場職員の自宅を出張役場として利用、町民は職員自宅で各種届出・納付が可能
- 保育所・幼稚園の一元化: 保育時間は平日7:25 – 18:45、土曜日は7:45 – 12:45
- 町税等の公共料金の支払い: 地元商店会が発行するスタンプ券で支払い可能
- 役場職員消防隊: 役場職員が消防員として消火活動に従事
- 住民基本台帳ネットワークシステム: 2015年3月30日に接続
- 町議会議員報酬: 月額制から日当制に変更
矢祭町の魅力: 豊かな自然と歴史、そして温かい人々
矢祭町は、豊かな自然と歴史、そして温かい人々が魅力です。
自然
- 矢祭山: 奥久慈県立自然公園に指定され、ハイキングや登山を楽しむことができます。
- 滝川渓谷: 美しい渓谷美を楽しめる遊歩道があり、自然散策に最適です。
歴史
- 東舘: 佐竹氏が築いた城跡。現在は「リフレッシュふるさとランド」として整備されています。
- 戸津辺の桜: エドヒガンザクラの群生地で、県指定天然記念物に指定されています。
特産品
- 久慈川の鮎: 清流で育った鮎は、新鮮で美味です。
- 八溝山麓の柚子: 香り高い柚子を使った加工品が人気です。
- 飲むこんにゃくゼリー「ごっこん」: 地元産のこんにゃくを使った、ヘルシーなゼリーです。
イベント
- 矢祭町夏祭り: 毎年8月に開催され、花火大会や屋台、ステージイベントなどが楽しめます。
矢祭町を訪れるなら
矢祭町は、自然と歴史、そして人々の温かさを感じられる魅力的な町です。ぜひ一度訪れてみてください。
矢祭町へのアクセス
- 電車: JR水郡線 東館駅下車
- 車: 常磐自動車道 水戸南インターチェンジから約1時間
矢祭町観光情報: 矢祭町観光協会
まとめ
矢祭町は、合併を拒否し、独自の行政改革を推進することで、人口減少に歯止めをかけ、自立した財政を実現している町です。豊かな自然と歴史、そして温かい人々が魅力の矢祭町は、日本の地方自治体のモデルケースとして注目されています。
矢祭町についてのクイズ
矢祭町はどの県に位置していますか?
矢祭町は福島県東白川郡に位置し、豊かな自然と歴史を有する魅力的な町です。栃木県や茨城県との県境にあり、周囲の山々や久慈川による自然環境に恵まれています。この地域は、観光や歴史的な背景が深く、地元住民による温かい交流も魅力の一つです。地理的には中通り地方に属しており、福島県の天然資源を活かした特産品や観光地も多く存在しています。特徴的な歴史や文化を持ちながらも、独自の行政改革を進めることにより、人口減少に立ち向かう姿勢が地域の活性化にも寄与しています。
矢祭町の合併を拒否した宣言はいつ可決されましたか?
矢祭町は2001年に「市町村合併をしない矢祭町宣言」を可決しました。この決断は当時の町長である根本良一氏によるもので、全国的な注目を集めました。特に「平成の大合併」と呼ばれる流れにあって、独自の地域性を重視することを選んだ矢祭町の姿勢は、多くの地方自治体に影響を与えました。合併によるメリットとデメリットを慎重に考慮し、独立した財政基盤を目指す道を選んだことは、今後の地域社会の発展に寄与する試みとされています。
矢祭町の主な特産品は何ですか?
矢祭町の特産品には久慈川で育った鮎があり、清流で育った鮎は新鮮で美味しいと評価されています。また、八溝山麓の柚子を使った加工品も人気があります。特に、香り高い柚子を用いることで地域の特色を活かした商品が多く、観光客にも好評です。これらの特産品は、地元の農業や漁業の振興にも寄与し、地域経済を支える重要な要素となっています。さらに、飲むこんにゃくゼリー「ごっこん」など、新しい取り組みも行われており、矢祭町の多様な特産品は訪れる人々に楽しみを提供しています。