青森県下北半島の西端に位置する佐井村は、津軽海峡に面し、雄大な自然と豊かな歴史文化を育む静かな村です。
「仏ヶ浦」と呼ばれる奇岩群や北限のサル生息地など、貴重な自然遺産を有し、近年では、その雄大な景観と静寂の魅力から、多くの観光客が訪れるようになりました。
概要
佐井村は、下北半島をまさかりに見立てると、刃の部分にあたる場所に位置し、村面積のほとんどを恐山山地が占めています。
海岸線沿いの平地部分に集落が点在し、山間部には「川目」と呼ばれる集落が一つだけ存在します。
集落は、北から「原田」「古佐井」「大佐井」「矢越」「磯谷」「長後」「福浦」「牛滝」の8つに分かれ、人口の約6割が佐井地区(大佐井、古佐井地区)に集中しています。
地理
- 位置: 青森県下北半島の西岸
- 面積: 135.05 km²
- 人口: 1,509人(2024年7月1日推計)
- 地形: 恐山山地を構成する山々に囲まれ、海岸線沿いに平地が広がる
- 最高峰: 荒沢山 (672m)
- 主要河川: 大佐井川、古佐井川
人口推移
佐井村の人口は、昭和40年代後半をピークに減少傾向にあります。
年 | 人口 |
---|---|
1970年 | 4,622人 |
1975年 | 4,462人 |
1980年 | 4,174人 |
1985年 | 3,634人 |
1990年 | 3,348人 |
1995年 | 3,173人 |
2000年 | 3,010人 |
2005年 | 2,843人 |
2010年 | 2,422人 |
2015年 | 2,148人 |
2020年 | 1,788人 |
歴史
佐井村は、古くから蝦夷の定住集落が存在していたとされています。
江戸時代には南部藩領となり、ヒバの産地および積出し港として、また、蝦夷地への渡船港として栄えました。
年表
- 1889年(明治22年)4月1日: 町村制の施行により、下北郡佐井村及び長後村を廃し、その区域をもって下北郡佐井村を設置
- 1985年: 佐井村行政改革大綱策定
- 2002年(平成14年)11月30日: ごみ焼却場閉鎖
- 2003年(平成15年)2月28日: 不燃物埋立最終処分場閉鎖
- 2005年(平成17年)6月20日: 大間町、風間浦村と共に、「北通り三町村合併協議会」を設置
- 2006年(平成18年)1月1日: 下北汽船の佐井-青森間を結ぶ離島航路をシィラインに譲渡
- 2006年(平成18年)4月1日: 原田小学校、磯谷小学校、長後小学校を佐井小学校に、磯谷中学校、長後中学校を佐井中学校に統合
- 2007年(平成19年)4月27日: 「三上剛太郎生家」の看板除幕式を開催
- 2007年(平成19年)6月15日: 「佐井村むらづくり基本条例」を村議会で可決成立
- 2019年(平成31年)3月31日: 児童・生徒の減少により、福浦小学校、福浦中学校は閉校し、佐井小学校・佐井中学校へ統合
行政
- 村長: 太田直樹(2022年4月27日~)
- 村議会: 議員定数8名(無所属8名)
歴代村長
代 | 氏名 | 就任 | 退任 | 備考 |
---|---|---|---|---|
佐井村長(官選) | ||||
1 | 太田長太郎 | 明治22年6月 | ||
2 | 木村重功 | 明治22年8月 | ||
3 | 小島留彦 | 明治23年5月 | ||
4 | 松谷賢治 | 大正7年4月 | ||
5 | 大野精輔 | 大正8年8月 | ||
6 | 大島渉 | 大正12年12月 | ||
7 | 川村常作 | 昭和10年11月 | ||
8 | 松谷彰次 | 昭和14年12月 | ||
佐井村長(公選) | ||||
9 | 伊藤忠次郎 | 昭和22年10月 | ||
10 | 渡辺幸定 | 昭和30年5月 | ||
11 | 松谷清治 | 昭和46年4月 | ||
12 | 石澤多佳樹 | 昭和58年1月 | ||
13 | 東出昇 | 昭和61年12月 | ||
14 | 石澤多佳樹 | 平成2年12月 | ||
15 | 東出昇 | 平成6年12月 | ||
16 | 太田健一 | 平成13年4月 | ||
17 | 樋口秀視 | 平成26年4月 | ||
18 | 太田直樹 | 令和4年4月 | 現職 |
経済
佐井村の主な産業は、林業、漁業、観光です。
産業
- 林業: 村面積の9割近くを山林が占め、その9割近くが国有林指定を受けています。ヒバなどの木材が産出されます。
- 漁業: 津軽海峡で獲れるイカナゴ、コンブ、タコなどが主要な水産物です。
- 観光: 毎年20万人以上が訪れ、仏ヶ浦や北限のサル生息地などが主要な観光スポットです。
漁業
- 主要漁港:
- 原田漁港
- 佐井漁港
- 矢越漁港
- 磯谷漁港
- 長後漁港
- 福浦漁港
- 牛滝漁港
郵便
- 佐井郵便局(集配局) (84032)
- 牛滝簡易郵便局 (84709)
- 長後簡易郵便局 (84791)
姉妹都市・提携都市
国内
- 函館市(北海道)
- 1975年(昭和50年)3月25日 – 旧茅部郡南茅部町と友好都市提携
地域
所轄警察署
- 大間警察署
- 佐井駐在所
所轄消防署
- 下北地域広域行政事務組合大間消防署
- 佐井消防分署
教育
2006年(平成18年)4月1日、原田小学校、磯谷小学校、長後小学校は佐井小学校に、磯谷中学校、長後中学校は佐井中学校に、それぞれ再編されました。
小学校
- 佐井村立佐井小学校
※以下は廃校
- 佐井村立佐井小学校矢越分校(1974年・佐井小学校へ統合)
- 佐井村立佐井小学校川目分校(同上)
- 佐井村立原田小学校(2006年・佐井小学校へ統合)
- 佐井村立磯谷小学校(同上)
- 佐井村立長後小学校(同上)
- 佐井村立福浦小学校(2019年・佐井小学校へ統合)
中学校
- 佐井村立佐井中学校
※以下は廃校
- 佐井村立磯谷中学校(2006年・佐井中学校へ統合)
- 佐井村立長後中学校(同上)
- 佐井村立福浦中学校(2019年・佐井中学校へ統合)
小中併設校
- 佐井村立牛滝小中学校(本州最後のへき地5級校。平成20年度以降はへき地4級校となっている。小学校は2019年4月から2023年3月まで、中学校は2021年4月から、それぞれ休校。)
社会施設
- 津軽海峡文化館「アルサス」
- 歌舞伎の館
- 佐井村農業研修センター
交通
鉄道
村内を鉄道路線は走っていません。最寄り駅は、JR東日本大湊線下北駅です。
路線バス
- 下北交通
- むつ市と佐井村を結ぶ路線バスを運行
- 佐井村コミュニティバス
- 大間病院ルート
- 川目アルサスルート
- 川内病院ルート
道路
- 一般国道: 国道338号
- 県道: 青森県道46号川内佐井線(かもしかライン)、青森県道253号長後川内線、青森県道284号薬研佐井線
船舶
- シィライン(離島航路): 青森港 – 脇野沢港 – 牛滝港 – 福浦港 – 佐井港(2023年3月31日廃止)
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
- 下北半島国定公園: 村内の海岸線の8割、および山間部の一部が指定されています。
- 仏ヶ浦: 国の名勝および天然記念物に指定されています(指定名称は「仏宇多」)。約2kmに渡る海岸線沿いに仏像を思わせる白緑色の奇岩が連なり、佐井村のシンボルとなっています。
- 北限のサル生息地: 国の天然記念物(指定名称は「下北半島のサルおよびサル生息北限地」)です。
- 願掛岩: 見ようによっては男女が抱き合っているように見える岩で、古くより縁結びの岩として信仰の対象となっています。
- 福浦: にほんの里100選に選定されています。
- 福浦歌舞伎: 明治20年頃に中村菊五郎夫妻により伝承され、100年以上続く伝統芸能です。青森県無形民俗文化財に指定されています。
- 木彫十一面観音立像(円空作): 県重宝指定(長福寺)
- 箭根森八幡宮: 1062年源頼義により勧請された神社です。
- 箭根森八幡宮例大祭: 京都祇園祭の流れを汲む、盛大な祭りです。
- 矢越八幡宮祭典: 「年間命日(年間の神事に関する行事)」の1つで、「お盆祭り」と位置付けられています。
- 縫道石山・縫道石: 特殊植物群落が国の天然記念物に指定されています。
- 三上剛太郎生家: 看板は三村申吾(日本赤十字社青森県支部長、青森県知事)が揮毫しました。
- 佐井村海峡ミュウジアム(大佐井)
- 牛滝まだぁ~る
- 佐井村がんかけ公園/がんかけ公園キャンプ場
出身・ゆかりのある有名人
- 三上剛太郎(1869年-1964年): 医師。日露戦争開戦時に軍医として満州に従軍し、負傷兵の治療に当たりました。
- 若山弦蔵: 声優。旧樺太生まれ。両親は佐井村出身。
イメージキャラクター
- 雲丹
脚注
- 図典 日本の市町村章 p26
- 佐井村について 基本情報
- 青函文化史 p165-p166
- 『広報さい 2003年(平成15年)1月号』、7頁
- 『広報さい 2007年(平成19年)8月号』、2-3頁
- “青森県における第19回統一地方選挙の対象市町村一覧”. 青森県. 2019年5月13日閲覧。
- “2019年版佐井村勢要覧”. 佐井村. 2021年9月17日閲覧。
- “村長の部屋”. 青森県下北郡佐井村(公式サイト). 2022年4月27日閲覧。
- 『広報さい 2006年(平成18年)11月号』 Archived 2011年7月19日, at the Wayback Machine.、9頁
- ^ a b 大間町史 p540
- 青函トンネル事典海峡回廊 富田全 p16-17
- 大間町史 p541
- 国指定文化財等DB(北限のサル)
- 下北観光協会-(願掛岩)
- 国土庁「平成12年度歴史・伝統を活用した地域づくりと都市・農村交流の促進による地域活性化支援調査事業」佐井村
- 箭根森八幡宮ホームページ
- 下北観光協会-(箭根森八幡宮)
- 縫道石山・縫道石
- 『広報さい 2007年(平成19年)6月号』
- 佐井村海峡ミュウジアム Archived 2009年12月13日, at the Wayback Machine.
- 佐井村観光協会
参考文献
- 自治体誌
- 大間町史 大間町史編纂委員会編 大間町 1997年
- 商業誌
- 青函トンネル事典海峡回廊 富田全 北海道総合出版 1988年
- 図典 日本の市町村章 小学館辞典編集部編 小学館 2007年
外部リンク
- 佐井村
- 佐井村商工会 – ウェイバックマシン(2000年10月20日アーカイブ分)
- ハローNETあおもり 佐井村の紹介 – ウェイバックマシン(2007年6月25日アーカイブ分)
佐井村についてのクイズ
佐井村の面積はどのくらいですか?
佐井村の面積は135.05 km²です。青森県下北半島の西端に位置し、その大部分を山林が占めています。特に恐山山地に囲まれたこの地域は、自然の美しさが際立っていて、多くの観光客が訪れる魅力があります。面積の大きさは他の村と比較しても、自然豊かな環境を感じさせる要因の一つです。佐井村の地形は山が多く、平地は限られているため、人口はほとんど海岸線沿いに集まっています。
佐井村の主な産業は何ですか?
佐井村の主な産業は観光、漁業、そして林業です。特に観光業は近年、仏ヶ浦や北限のサル生息地などの自然遺産が注目され、毎年20万人以上の観光客が訪れています。また、漁業においては、津軽海峡での水産物の漁獲が重要な役割を果たしており、主にイカナゴやコンブ、タコなどが漁獲され、地域の経済を支えています。さらに、林業も盛んであり、村内の大部分を占める森林資源からヒバなどの木材が生産されています。
佐井村が江戸時代に南部藩領となったのはいつですか?
佐井村は江戸時代に南部藩領となりました。具体的には、18世紀中頃から南部藩の支配下に入り、ヒバの産地や積出し港、さらには蝦夷地への渡船港などとして栄えました。この時代には、蓄えられた歴史文化や商業活動が地域に根付く重要な時期であり、特に江戸時代の南部藩による支配が地域発展に大きく寄与しました。佐井村の歴史をひも解く際、この時期は地域の経済や文化形成において重要な要素です。
佐井村の最高峰はどれですか?
佐井村の最高峰は荒沢山で、その標高は672メートルです。荒沢山は恐山山地の一部を成す山々の中でも特に高い位置にあり、その美しい自然景観が訪れる人々を魅了しています。この地域は自然遺産として特に重要で、登山やハイキングを通じて自然の恩恵を体感することができます。年間を通じて多くの登山客が訪れ、その雄大な風景を楽しむことができることから、地域の観光にも貢献しています。