北茨城市は、茨城県の最北端に位置し、太平洋に面した自然豊かな街です。雄大な太平洋の海岸線、豊かな緑に覆われた山々、そして歴史を感じさせる文化遺産など、魅力が詰まっています。かつて炭鉱町として栄え、近代化の波を受けながら発展してきた北茨城市は、今や自然と文化が調和した、静かで穏やかな街として知られています。
概要
北茨城市は、関東地方の北部に位置し、茨城県北東部の県北地域に属する市です。市域は、北西に細く伸びた三角形をしており、北はいわき市、南が高萩市、西の端は福島県の鮫川村と塙町に接しています。市域の大半は低い多賀山地の山林で、東は太平洋に面しています。市街地は海岸沿いの平地にあります。
20世紀初頭には、常磐炭田の運営に乗り出した久原房之助により、炭鉱町として発展しました。炭鉱町としての繁栄は、高度経済成長期まで続きました。
現在では、常磐線、国道6号、常磐自動車道が縦断し、交通アクセスが良好です。南の水戸市までは57キロメートル、日立市までは25キロメートル、北のいわき市平までは38キロメートル、いわき市小名浜までは25キロメートルと、隣接する福島県いわき市との関係も深く、観光面でも連携しています。
地理
自然
北茨城市は、豊かな自然に恵まれた街です。
- 山: 市域の大半を占める多賀山地には、和尚山(804.0m)、栄蔵室(881.6m)、花園山(798m)、鷹巣山(559.4m)、高帽山(431m)など、多くの山々がそびえ立っています。
- 川: 里根川、大北川、花園川、木皿川、四時川など、多くの川が流れ、豊かな水資源を育んでいます。
- 湖沼・ダム: 水沼ダムは、茨城県内最初のダムとして、重要な役割を担っています。
気候
北茨城市は、太平洋に面したため、温暖な気候に恵まれています。
| 北茨城(1991年 – 2020年)の気候 |
|—|—|
| 月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年 |
| 最高気温記録 °C (°F) | 20.2 (68.4) | 22.8 (73) | 24.8 (76.6) | 25.7 (78.3) | 30.3 (86.5) | 33.4 (92.1) | 33.9 (93) | 35.7 (96.3) | 34.0 (93.2) | 32.1 (89.8) | 24.5 (76.1) | 24.3 (75.7) | 35.7 (96.3) |
| 平均最高気温 °C (°F) | 8.4 (47.1) | 8.6 (47.5) | 11.2 (52.2) | 15.6 (60.1) | 19.4 (66.9) | 22.1 (71.8) | 25.7 (78.3) | 27.4 (81.3) | 25.0 (77) | 20.4 (68.7) | 15.7 (60.3) | 10.9 (51.6) | 17.5 (63.5) |
| 日平均気温 °C (°F) | 3.6 (38.5) | 3.8 (38.8) | 6.5 (43.7) | 11.0 (51.8) | 15.3 (59.5) | 18.6 (65.5) | 22.1 (71.8) | 23.8 (74.8) | 21.1 (70) | 16.2 (61.2) | 11.0 (51.8) | 6.0 (42.8) | 13.2 (55.8) |
| 平均最低気温 °C (°F) | -1.2 (29.8) | -1.0 (30.2) | 1.7 (35.1) | 6.3 (43.3) | 11.3 (52.3) | 15.5 (59.9) | 19.4 (66.9) | 20.9 (69.6) | 17.9 (64.2) | 12.3 (54.1) | 6.2 (43.2) | 1.2 (34.2) | 9.2 (48.6) |
| 最低気温記録 °C (°F) | -9.0 (15.8) | -9.3 (15.3) | -5.9 (21.4) | -3.7 (25.3) | 2.5 (36.5) | 6.1 (43) | 12.3 (54.1) | 12.0 (53.6) | 9.1 (48.4) | 1.7 (35.1) | -2.7 (27.1) | -7.7 (18.1) | -9.3 (15.3) |
| 降水量 mm (inch) | 50.0 (1.969) | 45.9 (1.807) | 99.9 (3.933) | 128.5 (5.059) | 156.1 (6.146) | 158.0 (6.22) | 170.4 (6.709) | 138.1 (5.437) | 183.2 (7.213) | 189.5 (7.461) | 78.7 (3.098) | 48.8 (1.921) | 1,435.4 (56.512) |
| 平均降水日数 (≥1.0 mm) | 4.7 | 5.1 | 8.8 | 10.1 | 11.3 | 12.0 | 13.3 | 9.6 | 11.6 | 10.5 | 7.1 | 5.3 | 109.3 |
| 平均月間日照時間 | 196.7 | 183.3 | 191.9 | 193.6 | 191.0 | 141.6 | 150.3 | 181.3 | 140.4 | 143.8 | 156.5 | 179.4 | 2,040.8 |
| 出典1: Japan Meteorological Agency |
| 出典2: 気象庁 |
歴史
沿革
- 1828年(文政11年)5月: イギリスの捕鯨船員が大津港に上陸。
- 1868年(慶応4年)6月16日: 戊辰戦争時、新政府軍が平潟港への上陸作戦を開始。
- 1897年(明治30年)2月25日: 日本鉄道磐城線(現在の常磐線)水戸 – 平(現・いわき)間が開業。
- 1926年(大正15年)8月23日: 茨城無煙炭鉱が破産し、炭鉱従業員と家族約1万人に影響。
- 1956年(昭和31年)3月31日: 多賀郡磯原町、大津町、関南村、関本村、平潟町、南中郷村の6町村が合併し、市制施行。当初は茨城市と名付けられる予定だったが、県内の他の市町村からの反対により同日付で北茨城市に改称。
- 1956年(昭和31年)8月10日: 北茨城市市章を制定。
- 1963年(昭和38年)6月: 常磐線の上野 – 平間が電化。
- 1963年(昭和38年)11月: 茨城大学五浦研究所内に天心記念館が完成。
- 1966年(昭和41年)6月: 水沼ダムが茨城県内最初のダムとして完成。
- 1972年(昭和47年)4月: 北茨城市立病院(現:北茨城市民病院)が改装。
- 1987年(昭和62年)10月: 新市庁舎が完成。
- 1988年(昭和63年)3月24日: 常磐自動車道北茨城ICが供用開始。
- 1989年(平成元年)4月: 北茨城市立図書館が開館。
- 1997年(平成9年)11月8日: 茨城県天心記念五浦美術館が開館。
- 2011年(平成23年)3月11日: 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生。北茨城市では最大震度6弱を観測し、死者10名、行方不明者1名、負傷者188名の被害が発生。
- 2016年(平成28年)2月23日: 新消防庁舎が運用開始。
- 2016年(平成28年)6月: 新北茨城市立図書館が開館。
人口
北茨城市の人口は、近年減少傾向にあります。
年 | 人口 |
---|---|
1970年 | 48,323人 |
1975年 | 44,332人 |
1980年 | 47,670人 |
1985年 | 51,035人 |
1990年 | 51,093人 |
1995年 | 52,074人 |
2000年 | 51,593人 |
2005年 | 49,645人 |
2010年 | 47,026人 |
2015年 | 44,412人 |
2020年 | 41,801人 |
行政
市長
- 現職: 豊田稔(6期目)
警察・消防
市内には警察署はなく、高萩警察署が管轄しています。消防は北茨城市消防署が管轄しています。
経済
工業
北茨城市は、工業が盛んな街です。
- JX金属磯原工場(非鉄金属)
- NOK北茨城事業場(輸送用機器)
- オート化学工業北茨城工場
- 日亜鋼業茨城工場(鉄鋼)
- 日東電気磯原工場
- 扶桑薬品工業茨城工場(医薬品)
- ユニマテック第一工場(化学)
- スリーエム ジャパン プロダクツ 茨城事業所
漁業
- 平潟漁港
- 大津漁港
商業
磯原地区が商業の中心ですが、商店街が鉄道によって東西に分断されていること、店舗密度が低いこと、歩道や駐車場整備が不十分なことなどの要因から、日立や平へ購買力が流出しています。
交通
鉄道
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
- 常磐線: 南中郷駅 – 磯原駅 – 大津港駅
- 中心駅: 磯原駅
路線バス
茨城交通の一般路線バスは2023年9月末をもって全路線廃止となり、以降は市営のコミュニティバスである北茨城市巡回バスのみが運行されています。
高速バス
- いわき号(東京駅 – 北茨城IC・いわき駅)
- 新宿いわき号(バスタ新宿 – 北茨城IC・いわき駅)
- いわき・日立 – TDR線(いわき駅・北茨城IC – 東京ディズニーリゾート)
- 赤塚・水戸・勝田・日立・北茨城 – 相馬・仙台・山形
道路
- E6常磐自動車道: 中郷SA – 北茨城IC – 関本PA
- 国道6号(陸前浜街道)
- 茨城県道10号日立いわき線
- 茨城県道22号北茨城大子線
- 茨城県道27号塙大津港線
- 茨城県道69号北茨城インター線
名所・観光地・祭り
名所・観光地
- 花園花貫県立自然公園: 豊かな自然と景観を楽しめる公園。
- 花園神社: 花園山の山頂にある神社。
- 野口雨情記念館・北茨城市歴史民俗資料館: 詩人・野口雨情の生涯と作品を展示。
- 茨城県天心記念五浦美術館: 日本を代表する美術家・岡倉天心の作品を展示。
- 六角堂: 岡倉天心が日本美術館の本拠を移し思索にふけったと言われる、真紅な六角形の建物。東日本大震災による津波で消失しましたが、再建され一般公開されています。
- 大津漁港・平潟漁港: 新鮮な魚介類が水揚げされる漁港。
- 二ツ島海水浴場: 広大な砂浜と青い海が広がる海水浴場。
- 五浦海岸・磯原海岸・長浜海岸: 美しい海岸線。
- 磯原温泉・五浦温泉・平潟港温泉・中郷温泉: 温泉を楽しめる施設。
- 大津岬灯台: 海を見渡せる灯台。
- 公共の宿「マウントあかね」: 自然に囲まれた温泉宿。
- 花園オートキャンプ場: キャンプを楽しめる施設。
- ガラス工房「シリカ」: 美しいガラス製品が作られる工房。
- 茨城パシフィックカントリー倶楽部: ゴルフを楽しめる施設。
- 七ツ滝: 壮大な滝。
- 磯原駅東のからくり時計: 1時間に1度、からくり人形が動く時計。
- 天心焼: 岡倉天心にちなんだ陶器。
- 皇祖皇太神宮天津教: 天津教の総本山。
祭り
- 常陸大津の御船祭: 5年に1度開催される、伝統的な祭り。
- 中郷 石岡さくら祭り: 4月に行われる、桜をテーマにした祭り。
- 花園のささら: 5月に行われる、伝統的な民謡と踊りを楽しむ祭り。
- 大津盆船流し: 8月に行われる、盆船を流す祭り。
- 北茨城市民まつり: 8月に行われる、地域の活性化を目的とした祭り。
- 雨情の里港まつり: 11月に行われる、野口雨情にちなんだ祭り。
- 磯原節大会: 12月に行われる、磯原節を競い合う大会。
- 富士ヶ丘棒ささら: 伝統的な棒ささらを披露する祭り。
著名な出身者
- 野口雨情(詩人)
- 松本辰夫(作家)
- ベルトラメリ能子(声楽家)
- 蛭田二郎(彫刻家)
- 宮路オサム(歌手)
- 石井竜也(歌手)
- 鈴木康二朗(元プロ野球選手)
- 金澤健人(元プロ野球選手)
- 細川成也(プロ野球選手)
- 武藤修平(プロバスケットボール選手)
- 金子美奈子(ダンサー・振付師)
- 来栖あつこ(女優)
- 村山優香(女優)
- SWEETIE JUNK FILE(ロックバンド)
- 滝善充(ミュージシャン)
- 渡辺壮亮(ミュージシャン、嘘とカメレオンギター・コーラス担当)
- 大塚利恵(作詞家・シンガーソングライター)
- 大滝良江(ピアニスト、編曲家)
- TRILL DYNASTY(HIPHOP作曲家)
姉妹都市・提携都市
国内
- 長野県中野市(姉妹都市提携)
海外
- ワイロア地区(国際親善友好都市提携)
その他
- 日本の音風景100選: 五浦海岸の波音
- 日本の渚百選: 五浦海岸
- 日本の白砂青松100選: 五浦海岸
- 風船爆弾: 五浦海岸で製造発射
- あんこう鍋: 冬の味覚として人気。
- フラガール: 市内に残る常磐炭田の炭鉱住宅でロケが行われた映画。
- 揚枝方衛星通信所: NTTドコモの衛星電話(ワイドスター)の地上局がある。
- 東京発電石岡第一発電所: 日本最古の鉄筋コンクリート製水力発電所。
- 竹内文書: 古代史研究において重要な資料。
北茨城市は、豊かな自然、歴史、文化が調和した魅力的な街です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してください。
北茨城市についてのクイズ
北茨城市が位置するのはどの県ですか?
北茨城市は茨城県の最北端に位置し、太平洋に面した自然豊かな街です。長い海岸線があり、北はいわき市、南は高萩市、西の端は福島県に接しています。また、市域の多くは多賀山地の山林によって覆われています。茨城県内では、自然や歴史的文化遺産が調和しており、観光地としても魅力的です。特に、豊かな水資源に恵まれており、多くの川や湖沼、ダムが存在します。交通アクセスも良好で、隣接する水戸市や日立市、福島県いわき市とも深いつながりがあります。
北茨城市の気候はどのような特徴がありますか?
北茨城市は、太平洋に面しているため、温暖な気候に恵まれています。最高気温記録が35.7°Cに達し、冬は比較的温暖で、最低気温が-9.3°Cという記録もあります。このため、農業や観光業に適した地域特性を持っています。また、降水量も多く、特に6月から9月にかけての降水が顕著です。気候の温暖さは、地域の生態系や住環境に影響を与えており、多様な植物や動物が生息しています。
北茨城市を炭鉱町として発展させた人物は誰ですか?
北茨城市はかつて炭鉱町として栄え、特に20世紀初頭には常磐炭田の運営に乗り出した久原房之助によって発展しました。彼の取り組みにより、地域の経済は急成長し、多くの労働者が北茨城市に集まるようになりました。炭鉱町としての繁栄は、高度経済成長期まで続きましたが、その後は近代化の波を受け、現在では自然と文化が調和した静かな街として知られています。地域の歴史や文化において、久原房之助は重要な人物とされています。
北茨城市の中心駅はどこですか?
北茨城市の中心駅は磯原駅です。磯原駅は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の常磐線上に位置しており、地域の交通の要所となっています。駅を中心に市街地が形成されており、様々な商業施設も集まっています。また、他の市町からのアクセスも良く、観光客や地元住民の交通手段として利用されています。今後も地域振興の一環として、交通インフラの整備が期待されます。