新潟県三条市:金属加工の街から生まれた、新たな魅力を発信する都市

新潟県の中部に位置する三条市は、古くから金属加工業で栄え、伝統と革新が息づく街として知られています。近年では、豊かな自然や歴史、文化を活かした観光や地域活性化にも力を入れており、新たな魅力を発信する都市として注目されています。

概要

三条市は、新潟県の中越地方に位置し、隣接する燕市と合わせて「燕三条地域」と呼ばれています。県下有数の工業都市として、金属加工業をはじめとする様々な産業が発展しています。2005年5月1日には、旧三条市、南蒲原郡栄町、下田村が合併し、現在の三条市が誕生しました。

地理

三条市の中心部には五十嵐川が流れ、市西部で信濃川と合流します。市域東部の笠堀地区には、国の特別天然記念物であるニホンカモシカが生息しています。

市街地は五十嵐川に沿って形成され、江戸時代に整備された城下町の面影を残しています。雁木やアーケードが続く伝統的な街並みが魅力です。一方で、高速道路のインターチェンジや幹線国道が集中するJR燕三条駅周辺には、ロードサイド型の市街地が形成されています。

気候

三条市は、日本海側気候に属し、冬は豪雪に見舞われます。夏は、フェーン現象によって高温になることがあり、過去には全国最高気温を記録したこともあります。夏季は晴天が多く、日照時間が長いのも特徴です。

歴史

江戸時代以前

  • 885年:京都石清水八幡宮より分霊を頂き、大崎に八幡宮(三条八幡宮)が創建される。
  • 1297年:日蓮の孫弟子・日印が青蓮華庵(現在の法華宗陣門流総本山・本成寺)を創建。
  • 1507年:永正の乱。三条島ノ城将山吉能盛が守護代の長尾為景(三条長尾家。上杉謙信の父)につく。
  • 1577年:神余親綱が三条島ノ城主となる。
  • 1599年:堀直政が三条城島ノ城主となる(5万石)。八幡宮が現在地へ移る。

江戸時代

  • 1608年:堀直政の長男・堀直清が三条島ノ城主となる。
  • 1610年:堀家のお家騒動により堀直清が改易、三条島ノ城は廃城。
  • 1616年:幕府が市橋長勝を伯耆矢橋から三条城主(4万1,300石)に任じ、三条島ノ城の信濃川対岸(現在の元町。旧三条小学校付近)に新たに城地を定めて三条城を築城。
  • 1620年:幕府が稲垣重綱を同じ越後国の刈羽郡藤井から三条城主(2万3,000石)に移封。
  • 1623年:稲垣重綱が大阪城番となり、三条城は廃藩。出雲崎代官領となる。
  • 1631年:三条城廃城。
  • 1642年:長岡藩主牧野忠成が幕命により三条城を破却。
  • 1649年:出雲崎代官領から村上藩(松平藤松)となる。
  • 1675年:三条村が「裏館村」、三条新田(新田三条)が「三条町」と改称。
  • 1690年8月:東本願寺三条掛所(現在の真宗大谷派三条別院)創設、浄圓寺御堂が仮本堂となる。
  • 1703年8月:東本願寺三条掛所本堂完成、入仏式挙行。
  • 1822年:三条八幡宮の大名行列が三条の領主である村上藩主内藤信敦の京都所司代就任を祝って始められる。
  • 1828年12月18日(旧暦霜月:11月12日):三条地震(朝五ツ時上刻:7:40頃。マグニチュード6.9)。

明治時代

  • 1872年11月4日:三条小学校創立。
  • 1873年9月25日:五十嵐川に初めての橋、三条橋(のちの嵐川橋)架橋。
  • 1877年10月:松尾与十郎らの尽力により五十嵐川左岸の築堤工事が完成。
  • 1878年9月21日:明治天皇が北陸地方を巡幸し、東本願寺三条別院(東別院)の御在所に宿泊。
  • 1879年5月12日:三条町に南蒲原郡役所が開設される。
  • 1880年5月21日:糸屋万平火事。
  • 1881年4月15日:三条で初めての金融機関三条会社(のちの三条銀行)創業。
  • 1885年10月4日:瑞雲橋架橋。
  • 1887年8月19日:日本で初めての日食観測(皆既日食)が大崎山の山頂で観測。
  • 1894年8月11日:五十嵐川が氾濫し、曲淵・田島・西大崎で破堤。
  • 1896年:10月30日に三条銀行の貯蓄部門を三条貯蓄銀行として独立、11月26日に北越商業銀行が二ノ町に設立される。
  • 1897年11月20日:北越鉄道の沼垂駅‐一ノ木戸駅間が開業。
  • 1898年6月16日:北越鉄道の一ノ木戸駅‐長岡駅間が開業、同時に三条駅開設。
  • 1901年3月18日:新潟県立新潟中学校三条分校(現:新潟県立三条高等学校)設置。
  • 1906年6月24日:東本願寺三条別院(東別院)の現在の本堂が建立され、1908年(明治41年)7月3日に落慶入仏式挙行。
  • 1910年5月9日:三条町町立三条女子工芸学校(現:新潟県立三条東高等学校)設置。
  • 1911年4月15日:南蒲原郡三条商工学校(現:新潟県立三条商業高等学校、新潟県立新潟県央工業高等学校)開校。

大正時代

  • 1913年7月24日:三条駅前‐弥彦神社前間に参宮自動車が開業。
  • 1925年
    • 4月10日:越後鉄道の燕駅‐一ノ木戸駅間が開業、同時に北三条駅開設。
    • 7月28日:諏訪・曲渕切れの水害。

昭和時代

  • 1927年
    • 7月25日:越後鉄道の一ノ木戸駅‐越後長沢駅間が開業
    • 10月1日:越後鉄道が国有化され、一ノ木戸駅を東三条駅に改称。
  • 1928年:大島村の南蒲原郡畜産組合が三条競馬を始める。
  • 1935年7月19日:今井雄七丸井今井社長らの寄付により武徳殿(現・三条市歴史民俗産業資料館)竣工。
  • 1944年9月16日:弥彦線東三条駅‐越後長沢駅間が不要不急線として営業休止。
  • 1945年3月4日:東別院本堂に積もった雪が大落雪、学童疎開の児童1名死亡。
  • 1947年10月10日:昭和天皇の戦後巡幸。県立三条中学校(現三条高等学校)へ行幸[18]。
  • 1961年8月5日:8・5集中豪雨。五十嵐川に架かる新大橋が橋詰めの民家とともに流失し家族5名が流されるも4名は常盤橋で辛うじて救助されるが1名と消防署員1名が死亡、新大橋の流失に続き渡瀬橋も流失など被害甚大。被害総額は8億6,746万円(当時)。
  • 1963年1月:昭和38年1月豪雪(サンパチ豪雪)。1月28日には国鉄東三条駅で積雪4.25mを観測、2月1日には災害救助法が雪害では初適用。被害は全壊16棟、半壊11棟など。被害総額は66億9,746万円(当時)。
    • ケンオー・ドットコム「三八豪雪の8ミリ映画に残る43歳の故金子六郎氏をムービーで」に当時の記録(カラー8ミリフィルムの映像記録)がある。
  • 1964年7月7日:7・7水害。五十嵐川が氾濫、中新の堤防が200m決壊、行方不明者1名、床上62棟、床下425棟の浸水被害。
  • 1967年8月28日:8・28水害。
  • 1978年
    • 6月26日:6・26水害。
    • 9月21日:北陸自動車道(新潟黒埼IC‐長岡IC・JCT間)開通、下須頃に近い燕市に三条燕IC開設。
  • 1979年7月28日:7・28水害。
  • 1982年11月15日:上越新幹線(大宮駅‐新潟駅間)開業、下須頃の燕市との境に燕三条駅(弥彦線と接続)開設。
  • 1985年4月1日:弥彦線の東三条駅‐越後長沢駅間(下田村)(7.9km)を廃止(列車の運行は前日まで)、越後大崎駅も廃止
  • 1988年3月:昭栄地区再開発事業の中核をなすジャスコパルム店がオープン

平成時代(三条市(1934年ー2005年))

  • 1995年6月10日:三条市民球場の開設記念として、プロ野球公式戦パ・リーグ・近鉄バファローズ-日本ハムファイターズ戦開催(近鉄4‐6日本ハム)。三条市民球場での唯一の一軍公式戦。
  • 1997年9月16日:弥彦線(燕三条駅‐東三条駅間)の約2.7kmで連続立体交差事業(総事業費約123億円)が完成し、この日から同区間では高架線での運行を開始。北三条駅は高架駅となる。
  • 1998年:この頃に五十嵐川左岸土手脇に斎場建設計画が持ち上がる。しかし脇の高台に新潟県立月ヶ岡養護学校という教育機関があることから、地域住民を中心に反対運動が持ち上がる(その後、3万人強の署名が集まったにもかかわらず、斎場建設は決定している)。
  • 2001年8月16日:三条競馬場で、新潟県競馬・三条開催の事実上最後のレース。2002年(平成14年)3月24日には、1993年(平成5年)から発売されていた日本中央競馬会の場外発売を廃止。
  • 2002年9月8日:1887年7月創業の老舗スーパーマーケット「まるよし」が、8月29日に民事再生法の適用を申請したことにより、全店舗を閉店。
  • 2004年
    • 7月13日:平成16年7月新潟・福島豪雨(7・13水害)。市内の死者9人、負傷者80人、罹災者2万3,452人(7,467世帯)、被災住家1万0,352棟。
    • 10月23日:新潟県中越地震(新潟県中越大震災)発生。三条市西裏館では震度5弱(計測震度4.9。最大加速度191.7gal)を観測。負傷者8人、住家300棟が一部損壊、公共施設など32棟に被害。交通網の寸断や風評被害などで経済的な損害も。

平成時代(新市)

  • 2005年
    • 6月28日:五十嵐川上流ダムの流入量がマニュアルに定めた数値を超えたため、嵐南・嵐北地区26,128世帯に全国で初めて「避難準備情報」を発令(これで2回目となる)。
    • 8月10日:三条で1時間に72mmの猛烈な雨(気象庁のアメダス観測では1976年の観測以来最大値)。竜巻と見られる突風(F0~F1)が発生し、4人が負傷、建物21棟に被害。
  • 2007年7月16日:新潟県中越沖地震発生。新堀(栄地区)で震度5強、西裏館で震度5弱(三条地区。計測震度4.8、最大加速度117.3gal)、荻堀(下田地区)で震度4を観測。市内では負傷者32人、空家1棟が崩壊、住家111棟が一部損壊。
  • 2011年7月27日~30日:平成23年7月新潟・福島豪雨発生。市内での死者1名。五十嵐川をはじめ、市内3ヶ所の堤防が決壊。一時は市内全世帯に対して避難勧告が出されたほか、浄水場の処理能力が低下して市内のほぼ全域で断水するなどの被害。
  • 2018年
    • 8月23日:台風20号によるフェーン現象の影響で、最高気温40.4度を観測[19]。
    • 10月6日:午後2時40分頃、台風25号の影響で暖かい空気が南から流れ込み、10月の国内最高気温の記録を更新する36.0度を観測した[20]。

令和時代

  • 2019年8月15日:観測史上最も高い一日の最低気温30.2度を観測。同日は最高気温40.0度を観測し、2018年8月23日に次いで2度目の40度以上を観測した[21]。
  • 2020年9月3日:9月の国内最高気温の記録を更新する40.4度を観測した[22]。

経済

工業

  • 金属加工業: 三条市は、古くから金属加工業で栄え、包丁や工具など、高品質な製品を世に送り出しています。特に、越後三条打刃物は伝統工芸品として有名です。
  • その他: 金属加工業以外にも、暖房器具、アウトドア用品、生活用品など、様々な分野の製造業が盛んです。

農業

  • 稲作: コシヒカリなど、良質な米の産地として知られています。
  • 野菜: 下田郷では、サツマイモ「越紅」の生産が盛んです。
  • 植木・造園業: 保内地区は、昭和中期には「日本三大植木生産地」として知られていました。現在でも、多くの植木業者がオープンガーデンを開設しています。

行政

  • 市長: 滝沢 亮

議会

  • 三条市議会: 定数22人
  • 新潟県議会: 三条市選挙区 定数2人
  • 衆議院: 新潟4区(新潟市の一部、長岡市の一部、三条市、加茂市、見附市、南蒲原郡)

文化・名物

祭事・イベント

  • 三条まつり: 5月に開催される、三条市の最大の祭事です。
  • 三条凧合戦: 6月に開催される、伝統的な凧揚げのイベントです。
  • 工場の祭典: 10月に開催される、金属加工業の技術を披露するイベントです。

郷土料理

  • 三条カレーラーメン: 70年の歴史がある、三条市の名物ラーメンです。
  • 背脂ラーメン: 燕市発祥ですが、三条市でも人気があります。
  • 車麩: グルテンの生地を巻きつけて焼いた、三条市で伝統的に作られる食材です。

観光スポット

  • 三条鍛冶道場: 鍛冶体験や見学ができる施設です。
  • 三条市歴史民俗産業資料館: 三条市の歴史や文化を学ぶことができます。
  • 真宗大谷派三条別院: 江戸時代に建立された、壮大な寺院です。
  • 法華宗陣門流総本山本成寺: 日蓮宗の寺院で、国の重要文化財に指定されています。
  • 保内公園: 多くのオープンガーデンがあり、四季折々の花を楽しむことができます。
  • 八木ヶ鼻: 五十嵐川の河岸段丘に位置し、雄大な景色を望むことができます。
  • 下田郷: 古くからの伝統的な街並みが残る地域で、温泉や棚田などがあります。

三条市を訪れる人へ

三条市は、金属加工の伝統、豊かな自然、そして活気あふれる街並みが魅力の都市です。ぜひ、三条市を訪れて、その魅力を体感してみてください。

三条市についてのクイズ

三条市はどのような産業で知られているでしょうか?

三条市は新潟県の中越地方に位置する工業都市で、特に金属加工業が長い歴史を持ち、発展してきました。古くから包丁や工具などの高品質な製品が生産されており、越後三条打刃物は伝統工芸品として有名です。三条市は、その金属加工の技術力が評価されており、地域の経済に大きく貢献しています。近年では、観光業や地元の農産物の生産も促進されていますが、金属加工がこの地域の核となっていることは変わりません。

三条市の地理的特徴は何ですか?

三条市は、江戸時代に整備された城下町の面影を残しており、五十嵐川に沿って市街地が形成されています。雁木やアーケードが続く伝統的な街並みはその象徴であり、観光スポットとしても訪問者に人気があります。また、市域東部の笠堀地区には国の特別天然記念物であるニホンカモシカが生息しており、豊かな自然環境も特徴です。

三条市で広く生産されている農産物は何ですか?

三条市は良質な米の産地として知られ、特にコシヒカリが広く生産されています。この地域の気候と土壌が、米作りに適しているためです。農業は地域経済の重要な一部であり、米だけでなく、サツマイモなどの野菜や、植木・造園業も盛んです。三条市は、食文化の面でも多様性があり、地産地消が進んでいます。

三条市の気候の特徴は何ですか?

三条市は日本海側気候に属し、冬は豪雪に見舞われることが多いです。特に、三条市周辺の地域は、雪が多く降り、雪深い冬を過ごします。一方で、夏季はフェーン現象の影響で高温になることがあり、過去には全国最高気温も記録されています。このような気候的特徴は、農業や工業にも影響を与えており、地域特有の産業活動が展開されています。