金沢は、石川県のほぼ中央に位置する、北陸地方最大の都市です。加賀藩の城下町として栄え、江戸時代には人口規模で江戸、大阪、京都に次ぐ、名古屋と並ぶ大都市でした。第二次世界大戦では空襲を免れたため、歴史的な街並みが現在も残っており、伝統工芸、日本三名園の一つである兼六園、百万石まつりなどの文化イベントで知られています。
概要
金沢は、石川県の県庁所在地であり、中核市、保健所政令市、中枢中核都市に指定されています。かつては、加賀藩(「加賀百万石」)の城下町として栄え、その歴史は江戸時代にまで遡ります。
金沢は、歴史的建造物や伝統工芸、文化イベントなど、魅力的な観光資源に恵まれています。 2009年にはユネスコ創造都市ネットワーク・クラフト部門に登録され、国内では神戸市、名古屋市に続く3番目、クラフト&フォークアート部門ではアジア初となりました。
地理
金沢市は、石川県のほぼ中央に位置しており、周囲を山々に囲まれた盆地となっています。
地形
- 南東部は山地となっており、金沢市の最高峰である奈良岳(1,644m)をはじめ、見越山 (1,621m)、大門山 (1,572m)、医王山(いおうぜん、939m)などがあります。
- 平野に近い部分は丘陵地となり、戸室山 (548m)、キゴ山 (546m)、野田山 (180m)、満願寺山 (177m)、卯辰山 (141m) などがあります。
- 北西部は金沢平野で、犀川(さいがわ)、浅野川(あさのかわ)などの川が流れています。
- 海岸部は砂丘となっており、河口部分は北向きに曲がっています。
気候
金沢は日本海側気候に属し、年間を通じて湿度が高く、曇りや雨、雪の日が多いです。冬には、特に雪が降ることが多く、積雪量も多いですが、近年は暖冬傾向がみられます。
| 金沢地方気象台(金沢市西念、標高6m)の気候 |
|—|—|
| 月 | 平均最高気温 (°C) |
| 1月 | 7.1 |
| 2月 | 7.8 |
| 3月 | 11.6 |
| 4月 | 17.3 |
| 5月 | 22.3 |
| 6月 | 25.6 |
| 7月 | 29.5 |
| 8月 | 31.3 |
| 9月 | 27.2 |
| 10月 | 21.8 |
| 11月 | 15.9 |
| 12月 | 10.2 |
隣接自治体
- 北:内灘町、津幡町
- 東:富山県小矢部市、南砺市
- 南:白山市、野々市市
- 西:河北郡津幡町、内灘町
歴史
太平洋戦争以前
「金沢」という地名は、昔、山科の地に芋掘り藤五郎が山芋を洗っていたところ砂金が出たため、「金洗いの沢」と呼ばれたという伝説が由来とされています。
- 古文書における「金沢」の初見は、『高野山正智院聖教目録』に文明13年10月8日(1481年10月30日)付で記載された「加州金沢惣持寺」が知られています。
- 中世には、本願寺関連の一向一揆(一向宗)が治めた領地でした。
- 天文15年(1546年)、本源寺を尾山御坊(金沢御坊)と定めて、戦国時代の一向一揆の本願寺の拠点としました。
- 天正8年(1580年)、織田信長配下の柴田勝家の甥佐久間盛政が尾山御坊を攻め落とし、金沢城を築城しました。
- 賤ヶ岳の戦い以降、前田利家が金沢城に入り、加賀藩が成立しました。
- 前田利家は金沢城を自身の出身地である尾張国にも通じる「尾山城」と改名しましたが、定着せず、後に再び「金沢城」となりました。
- 第3代藩主前田利常の時代には、十村制や改作法といった農政改革が進められ、藩体制が確立しました。
- 5代藩主前田綱紀は、兼六園の前身にあたる蓮池庭(れんちてい)を作庭し、学問を振興しました。
- 150年以上、加賀百万石の城下町として繁栄しました。
江戸時代から明治初期の金沢の人口
元号 | 西暦 | 家数 | 人口 | 備考 | 典拠 |
---|---|---|---|---|---|
寛文4年 | 1664年 | 9,868 | 55,106 | 本町2532戸1万9845人、地子町7336戸3万5261人 | 『越登賀三州志』 |
元禄10年 | 1697年 | 12,085 | 68,636 | 本町2285戸1万8949人、旧門前地大工地354戸2630人、地子町9446戸4万7057人 | 『加賀藩史料』 |
明治4年 | 1871年 | 24,146 | 123,453 | 第1区3253戸、第2区3635戸、第3区882戸、第4区1836戸、第5区4068戸、第6区3369戸、第7区4103戸 | 『石川県史料』 |
江戸時代の金沢の人口は17世紀後半には10万人を超え、江戸、大阪、京都に次ぐ、名古屋と並ぶ日本第4位から第5位の都市として発展し、美術工芸など現在に受け継がれる都市文化が花開きました。
明治維新以降
- 明治時代に入ると、産業・交通発達の基軸が太平洋側へと移り、金沢は人口で神戸や横浜にも抜かれます。
- 明治維新後に城下町の大消費者であった武士の失業と士族授産の失敗により、経済が落ち込み激しい人口流出が起きました。
- 明治10年代に士族の9割以上が転出しましたが、旧藩時代の軽輩の武士は、ある程度は残ったと考えられています。
- 金沢には旧制第四高等学校(金沢大学の前身)や陸軍第九師団が置かれ、学都・軍都として栄えました。
- 第二次世界大戦中は軍需を支える多数のモノづくり企業が金沢市を中心に県内に創立されました。
- 戦後には、金沢美術工芸専門学校(現:金沢美術工芸大学)や金沢大学が開校するなど、教育機関が発展しました。
年表(第二次世界大戦後)
- 1946年:金沢美術工芸専門学校(現:金沢美術工芸大学)開校
- 1947年:第2回国民体育大会が石川県で開催
- 1948年:石川県立病院(現:石川県立中央病院)が発足
- 1949年:金沢大学が開校
- 1952年:商工まつり(現:金沢百万石まつり)が初めて開催
- 1962年:金沢市観光会館(現:金沢歌劇座)が竣工
- 1963年:北陸本線福井・金沢間電化完成
- 1970年:金沢バイパス藤江町 – 三日市町間が開通
- 1972年:北陸自動車道金沢西IC – 小松IC間が開通
- 1985年:兼六園が国の特別名勝に指定される
- 1990年:金沢駅付近連続立体交差事業が完成
- 1991年:第46回国民体育大会が石川県で開催
- 1993年:金沢市立ふるさと偉人館(現:金沢ふるさと偉人館)が開館
- 1995年:金沢大学城内部局移転完了
- 1996年:中核市へ移行
- 1998年:キゴ山天体観察センター(現:銀河の里キゴ山 天文学習棟)が開館
- 1999年:泉鏡花記念館が開館
- 2001年:金沢城公園「菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓」が完成
- 2002年:加賀百万石博が金沢城公園で開催
- 2004年:金沢21世紀美術館がオープン
- 2005年:金沢駅東口(現:兼六園口)にもてなしドームと鼓門が完成
- 2006年:金沢能楽美術館が開館
- 2007年:石川四高記念文化交流館がリニューアルオープン
- 2009年:金沢市がユネスコ創造都市ネットワーク・クラフト部門に登録
- 2010年:石川県政記念しいのき迎賓館がオープン
- 2011年:金沢市立金沢海みらい図書館が開館
- 2015年:北陸新幹線長野・金沢間が開業
- 2020年:国立工芸館が開館
- 2024年:北陸新幹線金沢・敦賀間が延伸完了
人口
金沢市の人口は、2024年7月1日現在、推計で約456,000人です。
行政
金沢市は、市長をトップとする市役所組織によって運営されています。
- 市長:村山卓
- 副市長: 山田啓之、新保博之
- 議会: 金沢市議会(定数38人)
経済
金沢市の経済は、伝統産業、製造業、観光業などが重要な役割を担っています。
伝統産業
金沢は、江戸時代から続く伝統産業が盛んであり、その技術は現代でも受け継がれています。
- 金箔:全国シェアの98%を占め、金沢の伝統産業を代表する存在です。
- 加賀友禅:加賀藩が奨励した染織技術で、華麗な色使いが特徴です。
- 金沢漆器:金沢城下町で発展した漆器で、その精緻な技術は高く評価されています。
製造業
金沢市には、繊維、機械、コンピュータ関連など、多様な分野の製造業があります。
- 織機:ジェット・ルームなどの織機を生産する津田駒工業本社工場は、世界最大の織機製造工場です。
- パソコン周辺機器: アイ・オー・データ機器など、パソコン周辺機器の製造が盛んです。
卸売・小売業
金沢市には、市内最大の繁華街である香林坊・片町地区、武蔵地区、金沢駅前地区など、活気のある商業エリアがあります。
- 香林坊・片町地区: デパート、専門店、飲食店などが集まる、北陸地方最大の商業地です。
- 武蔵地区: 金沢エムザ、近江町市場などがあります。
- 金沢駅前地区: 北陸新幹線開業を機に、駅ビルや駅ナカの商業施設が整備され、発展しています。
教育
金沢市には、大学、短期大学、専門学校、高等学校、中学校、小学校などが数多くあり、教育機関が充実しています。
大学
- 国立: 金沢大学
- 公立: 金沢美術工芸大学
- 私立: 金沢工業大学、金沢学院大学、金沢星稜大学、北陸大学、北陸学院大学
高等学校
- 国立: 金沢大学附属高等学校
- 県立: 石川県立金沢錦丘高等学校、石川県立金沢泉丘高等学校など
- 市立: 金沢市立工業高等学校
- 私立: 星稜高等学校、北陸学院高等学校、金沢高等学校など
文化
金沢は、伝統文化、芸術、イベントなどが活発な、文化都市として知られています。
観光地
金沢には、多くの観光スポットがあります。
- 兼六園: 日本三名園の一つで、四季折々の美しい風景を楽しめます。
- 金沢城公園: 加賀藩の城下町の中心に位置し、歴史を感じることができます。
- 長町武家屋敷跡: 江戸時代の武家屋敷が保存されており、当時の暮らしを垣間見ることができます。
- 茶屋街: 東山ひがし茶屋街、主計町茶屋街など、江戸時代の町並みが残るエリアです。
- 金沢21世紀美術館: 現代美術をテーマにした美術館で、斬新な建築デザインも注目されています。
イベント
金沢では、一年を通してさまざまなイベントが開催されます。
- 金沢百万石まつり: 前田利家の金沢入城を祝う、華やかな祭りです。
- いしかわ風と緑の楽都音楽祭: クラシック音楽の祭典で、毎年5月初旬に開催されます。
- 金沢ゆめ街道: 夏に開催される、香林坊から武蔵が辻までの歩行者天国です。
伝統工芸
金沢には、金箔、加賀友禅、金沢漆器など、多くの伝統工芸があります。
- 金箔: 金沢の伝統産業を代表する工芸品で、繊細な技術が魅力です。
- 加賀友禅: 加賀藩が奨励した染織技術で、華麗な色使いが特徴です。
- 金沢漆器: 精緻な技術で製作された漆器で、その美しさは高く評価されています。
交通
金沢市は、鉄道、空港、バスなど、交通網が整備されています。
鉄道
- 北陸新幹線: 東京と金沢を結ぶ、高速鉄道です。
- JR線: 金沢駅は、北陸新幹線の停車駅であり、北陸地方の交通の拠点となっています。
- 北陸鉄道: 金沢市内を走る、路面電車とバスを運営しています。
空港
- 小松空港: 金沢市から車で約40分の場所に位置し、国内線と国際線があります。
バス
- 北鉄バスグループ: 金沢市内を網羅するバス路線を運行しています。
- 西日本JRバス: 金沢駅と富山県福光駅などを結ぶ路線バスを運行しています。
- 加越能バス: 金沢駅と富山県福光駅などを結ぶ路線バスを運行しています。
金沢市を舞台とした作品
金沢市を舞台にした作品は数多くあり、その魅力を物語っています。
- 小説: 泉鏡花の『義血侠血』、徳田秋声の『光を追うて』、室生犀星の『抒情小曲集』など
- 映画: 『瀧の白糸』(1933年)、『武士の献立』(2013年)、『いのちの停車場』(2021年)など
- テレビドラマ: 『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(2002年)、『まれ』(2015年)など
- アニメ: 『花咲くいろは』(2011年)、『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(2018年)など
金沢市出身の有名人
金沢市出身の有名人は、政財界、学界、芸術、芸能、スポーツなど、さまざまな分野で活躍しています。
- 政財界: 安宅弥吉、阿部信行、石黒武重、岡良一、山出保など
- 学界: 泉鏡花、徳田秋声、室生犀星、鈴木大拙、谷口吉郎など
- 芸能: 相川美保、こしじまとしこ、篠井英介、塩谷瞬、能登麻美子など
- スポーツ: 大島鎌吉、松本薫、炎鵬友哉、出島武春など
まとめ
金沢は、歴史と文化が息づく魅力的な都市です。加賀百万石の城下町として栄えた歴史を背景に、伝統工芸、日本三名園、文化イベントなどが数多く存在し、国内外から観光客を集めています。北陸新幹線が開業したことでアクセスも向上し、ますます発展が期待されています。
金沢市についてのクイズ
金沢市はどのような歴史的背景を持つ都市ですか?
金沢は江戸時代に加賀藩の城下町として栄え、当時の文化や伝統工芸が今も受け継がれています。この時期、金沢は近隣の江戸、大阪、京都と並ぶ大都市となりました。特に金沢藩は、豊富な資源を背景にして文化や産業を発展させ、多くの伝統技術と美術工芸が生まれました。現在も金沢には江戸時代の街並みや文化遺産が多数残っており、観光地として注目されています。こうした歴史的背景が金沢の魅力の一部となっており、訪れる人々に大きな感動を与えています。
金沢の気候はどのような特徴がありますか?
金沢は日本海側に位置し、年間を通じて湿度が高く、曇りや雨、雪の日が多い気候が特徴です。特に冬季には大量の雪が降り、冬の訪問者には独自の美しい景色を提供します。最近では暖冬傾向が見られているものの、依然として冬の降雪量は多く、金沢ならではの雪景色を楽しむことができます。夏は湿気があり蒸し暑くなることもありますが、四季折々の自然を楽しめる点でも魅力的です。
金沢市の伝統産業で、全国シェア98%を占めているものは何ですか?
金沢市の伝統産業の中でも、金箔は特に有名で、全国シェアの98%を誇ります。この金箔の技術は江戸時代から続いており、金沢は全国的に見ても金箔の生産地として知られています。金沢の金箔は、繊細な技術とデザインが施され、多くの伝統工芸品や現代のアート作品にも利用されています。金沢の職人たちは代々受け継がれてきた技能をもとに、こだわりを持って制作しています。
金沢ではどのようなイベントが開催されていますか?
金沢百万石まつりは、加賀藩の城下町としての歴史を祝う重要なイベントです。この祭りは、毎年開催され、前田利家の金沢入城を祝って行われ、多くの観光客や地元住民が参加しています。行列やパレード、伝統芸能や食品ブースなどが盛り込まれ、金沢の文化を感じることができる楽しい催しです。このように多彩なイベントが年間を通じて開催されており、金沢の暖かい地域社会を体験することができます。